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保護犬猫を『推し活』で支援 画期的な新サービスの背景に迫る

  • 2025.12.11

飼い主や住処を失い、行き場をなくした保護犬や保護猫たち。

経済的な理由などで「飼うことは難しいけれど、何か力になりたい」と考える人は多いでしょう。

そんな温かい思いを、支援の形に変えられる新たな仕組みがあることをご存じでしょうか。

それは、ウェブサイト上で気になった保護犬や保護猫を『推し』として、投げ銭形式でシェルターを支援できるサービスです!

筆者は2025年12月、サービスを手がける会社を取材。立ち上げの背景やサービスに込めた思いなどを聞きました。

保護犬・保護猫の『推し活サービス』 楽しみながら支援できるシステム

ユニークなサービス名は『しっぽの輪』。早速、ウェブサイトを覗いてみましょう。

『推しの子をさがす』という項目を開くと…。

提供:しっぽの輪

かわいい保護犬や保護猫の姿がたくさん!

それぞれの名前の下には、これまでに寄せられた支援ポイントが表示されています。

サイトに掲載された写真や動画を見て、気になる子や応援したい子を『推し』として選択。

『推しの子』にポイントを送ると、全額がシェルターへ寄付され、医療費やエサ代などとして役立てられるのです。

提供:しっぽの輪

毎月の継続支援としてポイントを購入すると『オンライン里親』になることも可能。

寝顔や散歩風景、遊ぶ姿といった日常の様子が、写真や動画で届きます。

提供:しっぽの輪

自宅で犬や猫を迎えられない人でも、まるで一緒に暮らしているような気持ちで、『推しの子』を応援できます。

もちろん、気に入った犬や猫がいれば、家族として迎え入れることもできますよ。

保護犬・保護猫で『推し活』 斬新なサービスを始めたワケ

『しっぽの輪』を考案したのは、濱友株式会社代表取締役社長の和田竜男さんです。

和田さんが、保護動物を支援する斬新なサービスを立ち上げた背景には、特別なきっかけがあったと言います。

――『しっぽの輪』のサービスを立ち上げたきっかけを教えてください。

がんで亡くなった先輩から、「保護犬・保護猫のシェルター支援を引き継いでほしい」と託されたことがきっかけでした。

当時、自分の会社では動物関連事業をしていませんでしたが、私は愛犬であるコーギーの海くんと暮らしていて…。

海くんは2025年に16歳で天国へ旅立ちましたが、息子のような存在でした。悩みがあった時に話しかけると、そっと手をなめて寄り添ってくれることもありましたね。

『しっぽの輪』には、私を支えてくれた海くんへの感謝の気持ちも込められています。

和田さんに抱きかかえられる海くん(和田さん提供)

天国へ旅立った旧知の先輩と、大好きだった愛犬への感謝を形にしようと、事業化を決心。

友人からの「今は若者たちの間でアイドルなどの『推し活』が流行っている。取り入れてみては」というアドバイスを参考に、IT技術のノウハウを生かしてウェブサイトを立ち上げました。

ですが和田さんは、準備の中でシェルターを訪ねた際、運営の厳しい現実を目の当たりにしたと言います。

筆者も、和田さんの案内のもと、『しっぽの輪』に登録している千葉県のシェルターを訪ねました。

そこでは、運営の苦しさと向き合いながらも、動物の命を懸命に守り続ける人の姿があったのです…。

シェルターで元気に過ごす動物たち 運営の裏側を覗くと…

筆者を迎え入れてくれたのは、同県君津市などでシェルターを運営するNPO法人・Anismaの代表を務める萩原敏江さんです。

シェルターの中には、かわいらしい犬や猫たちの姿があり、元気な鳴き声も響いていました。

撮影:grape編集部

思わず癒やされてしまった筆者ですが、その後に萩原さんから聞かされた運営面の現実に、言葉を失うことになります。萩原さんは、次のように明かしました。

運営面で一番大変なのは、資金の問題です。

ワクチンやウイルスの検査、去勢手術などで、1匹の保護に数万円はかかります。

さらにエサや施設備品代も必要で、活動の利益はほとんどありません。

正直、続けるのが苦しいと思う時もあります。

撮影:grape編集部

撮影:grape編集部

中には、事故で脚を失った子、ブリーダーに放棄された子、生まれつき障がいを持つ子などもいて、背景はさまざまです。

左脚がない猫(撮影:grape編集部)

撮影:grape編集部

学生時代から、道端に捨てられている動物を見つけては、自宅で保護していたと言う、心優しい萩原さん。

シェルターの運営費に苦心しながらも、萩原さんが動物の保護活動を続けるのは、「助ける人が少ないから」という、ただ1つの理由だと言います。

その言葉には、動物の命を守るための揺るぎない使命感が込められているように感じました。

撮影:grape編集部

萩原さんは、『しっぽの輪』への思いと期待を、こう語ってくれました。

人が好きな子もいれば、ケンカが好きな子もいます。

みんな性格が違っていて、私たちと同じ命を持つ生き物です。

保護している動物の日常を見てもらいながら、命を守るために、一人ひとりに何ができるかを考えるきっかけを作ってほしいですね。

サービス開始から半年 『推し活』を通じて、広がる支援の輪

サービス開始から半年間で、提携したシェルターは宮城から沖縄まで拡大。

新聞やテレビでも紹介されて話題となり、ウェブサイト上で見られる動物は、約200匹にまで増えました。

利用者からは「いろんな犬や猫がいて、見るのが楽しい」「少額で支援しやすい」といった声も寄せられています。

撮影:grape編集部

すでに『推し活』がきっかけで、里親が見つかった事例もあるそうです。

和田さんは今後の展望について、次のように語ります。

一番の目標は、動物の殺処分をゼロにすることです。そのためには、まだまだ支援の手が足りません。

まずは、2万人ほどのサービス利用者数を目指したいですね。

動物だけでなく、人もいつその命が尽きるかは分かりません。動物を保護するシェルターの運営者やブリーダーたちも例外ではないでしょう。

そんな時に、『推し活』で動物を支援する人たちの『目』があれば、自然と救いの手につながるはずです。

撮影:grape編集部

たとえ、自宅で飼えなくても、保護犬や保護猫を応援できる『推し活型』の支援システム。

人間の暮らしに癒やしをくれる動物たちの未来を守る、画期的な取り組みと言えるでしょう。

IT技術を生かした優しい支援の『輪』が、今後さらに広がっていくことを願わずにはいられません…!

『しっぽの輪』の最新情報は、Instagramなどで見られます。

[文・構成・取材/grape編集部 しぶちゃん]

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