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10年前の幼女失踪事件――目を離した“たった数分”で家族を壊れた!犯人予想が止まらない話題のミステリー【作者に聞く】

  • 2025.12.10
犯人を予想する漫画「仮門」P001 鳩ヶ森(@hatogamori)
犯人を予想する漫画「仮門」P001 鳩ヶ森(@hatogamori)

洗濯物をたたく穏やかな日常の中で、母親が携帯の着信音に気を取られたのはほんの数分。だがそのわずかな隙に、4歳の常見七海は庭先から跡形もなく消えた。温かかった家はその瞬間から凍りつき、家族は戻らない10年を抱えたまま止まり続けてしまう。

そんな“消えた娘”の記憶を呼び起こすように、七海の幼なじみである徳原砂羽と白井圭樹が常見家を訪れたところから物語が再び動き始める。2人の手には、七海が幼稚園時代に埋めたというタイムカプセル。封印された記憶が開かれ、過去と現在が静かに接続していく気配が漂う。

この緊張感に満ちたミステリー「仮門」を描くのは、鳩ヶ森( @hatogamori )さん。2023年「第2回朝日ホラーコミック大賞」で大賞を受賞した新鋭が挑む、初の本格ミステリーだ。

犯人を予想する漫画「仮門」P002 鳩ヶ森(@hatogamori)
犯人を予想する漫画「仮門」P002 鳩ヶ森(@hatogamori)
犯人を予想する漫画「仮門」P003 鳩ヶ森(@hatogamori)
犯人を予想する漫画「仮門」P003 鳩ヶ森(@hatogamori)
手元のテントウムシを見つめていた七海が、ふと顔をあげ、何かを見つめている…? 鳩ヶ森(@hatogamori)
手元のテントウムシを見つめていた七海が、ふと顔をあげ、何かを見つめている…? 鳩ヶ森(@hatogamori)

“キャラすら騙す”ストーリー作り──予想を裏切る快感を求めて

鳩ヶ森さんの作品には、読者が予想していた流れが突然裏返るような「裏切り」の快感がある。本人は、ストーリーを構築する際には「登場人物ですら想定しない展開」を仕掛けることを意識しているという。物語を動かしながらキャラクター自身が驚き、読者同様に混乱する。その予測不能な展開こそが、作品の緊張感を支えている。

大賞受賞作「呪いは効くのでしょうか」でも同様に、日常の裏側に潜む不安や狂気を丁寧に積み上げて読者を落とし込む手法が強く反映されていた。本作でも、視線を向けた先に突然“違和感”が立ち上がるような、一筋縄ではいかない構造が息づいている。

ホラー作家が踏み込んだ“初”の本格ミステリー

意外にも、鳩ヶ森さんがミステリーを描くのは今回が初めて。幼い頃から推理小説を愛読し、自身でも挑戦したいという思いは長く持っていた。しかしミステリーは精密な組み立てが要求されるジャンルであり、難しさを理由に諦めかけていたという。

転機となったのは、大賞受賞後に受けた編集からの指導だった。漫画表現の基礎を徹底的に叩き込まれたことで、新しい表現に挑む自信が生まれた。さらに、pixivという自由度の高い媒体で描ける環境も後押しとなり、本格ミステリーへの踏み込みを決めた。

“日常に潜む狂気”が、静かに物語を蝕んでいく

「仮門」では、序章の段階からすでに複数の人物が疑念を帯びた表情を見せ、誰もが何かを抱えているように見えてくる。その“腹の内”が事件に関係しているのか——。読者はそう探りながらページをめくることになる。

鳩ヶ森さんの作品に共通するテーマは「日常に潜む狂気」。忙しなく過ぎていくはずの生活の隣に、静かに息を潜める恐怖がある。派手な恐怖描写ではなく、ふとした瞬間に背筋がひやりとするような冷気を残すのが彼の作風であり、本作にもその空気が滲んでいる。

10年前の幼女失踪事件。あの日、七海に何が起きたのか。犯人がいるのか。そして七海は生きているのか——。

読者自身が“探偵”となりながら読み進められる、新たな本格ミステリーの幕が上がる。鳩ヶ森さん自身初のミステリー漫画『仮門(かりもん) 消えた少女―10年目の真実』は電子書籍として現在好評発売中である。前半に散りばめられた数々の伏線を後半で見事に回収していく全192ページの本格派作品。真実が明らかとなる最後の最後まで気を抜けない読み応えある一作となっているので、気になる人はぜひ読んでみて!

取材協力:鳩ヶ森( @hatogamori )

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