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「熱がある?問題ない」出社を強要する上司。だが、出勤した社員のある一言で職場の空気が一変【短編小説】

  • 2025.12.11
「熱がある?問題ない」出社を強要する上司。だが、出勤した社員のある一言で職場の空気が一変【短編小説】

本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。

高熱の朝

「38度5分……」

朝、体温計の数字を見て、私は絶望しました。
頭はガンガンと痛み、関節はきしみ、立っているのもやっとの状態です。
しかし、今日はチームで進めている大きなプロジェクトの締め切り直前。
休むわけにはいかないという責任感と、休みたいという身体の悲鳴が戦っていました。

震える手でスマートフォンを握り、上司に電話をかけました。

「すみません、今朝から高熱が出てしまいまして……」

私がそう言いかけると、上司は私の言葉を遮るように不機嫌な声で言いました。

「熱がある?問題ないよ、今、どれだけ忙しいか分かってるよね。自己管理がなってない証拠だ。薬飲めば動けるだろ? 這ってでも来い」

「病院行ってからでも…」

「わかった、わかった、いいから何がなんでも早く来い」

ツーツーという無機質な切断音。
私は呆然としました。
「這ってでも来い」 その言葉が頭の中でぐるぐると回ります。

私はフラフラになりながら身支度を整え、満員電車に揺られました。
電車の中の匂いが鼻につき、何度も吐き気がこみ上げます。
それでも、「行かなければ怒られる」という一心で会社へ向かいました。

会社に到着すると

オフィスに到着したのは、始業時間を少し過ぎた頃でした。
ドアを開けると、ピリピリとした空気が漂っています。私が青白い顔で入っていくと、上司が鬼の形相で近づいてきました。

「遅い! みんな朝から必死で働いてるんだぞ。熱くらいで甘えるな」

フロア中に響き渡る怒鳴り声。
同僚たちは気まずそうに下を向いています。
私は限界でした。もう、どうにでもなれ。
私はマスク越しに、しかしはっきりとした声で、こう言い放ちました。

「病院でインフルエンザの陽性判定が出ましたが、課長が『問題ないから来い』とおっしゃったので、指示通り出社しました! 私、どこに座れば皆さんにうつさずに済みますか?」

病院での診察の結果、インフルエンザの陽性判定はすぐにでていました。
本来ならそのまま帰宅すべきだったのに、課長の「這ってでも来い」という言葉が、私の判断を曇らせていました。

その瞬間、オフィスの空気が一変しました。

カタカタと鳴っていたキーボードの音が、一斉に止まりました。
シーンと静まり返ったフロアで、全員の視線が私ではなく、上司に突き刺さります。

「えっ……インフル……?」

上司の顔からサーッと血の気が引いていくのが分かりました。
すぐさま、ベテランの先輩社員が立ち上がり、猛烈な勢いで上司に詰め寄ります。

「あなた、正気ですか!? インフルの人間を出社させるなんて…」

「いや、私はただ、気合いの問題かと……」

しどろもどろになる上司。
周りの同僚たちも、「さすがにありえない」「今すぐ帰らせてください!」と口々に抗議を始めました。
結局、私はその場ですぐに帰宅命令が出され(というか、同僚たちがタクシーを呼んでくれました)、上司はその後、別室で部長から長時間のお説教を受けたそうです。

無理な出社命令は、誰も幸せにしない。 布団の中で泥のように眠りながら、私は心からそう思いました。

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※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
※本コンテンツのテキストの一部は、生成AIを利用して制作しています。

 

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