1. トップ
  2. おでかけ
  3. 高橋盾が油彩で描く、もう一つのUNDERCOVERの物語 「MY CHILDREN BORN ON THE OTHER PLANET」

高橋盾が油彩で描く、もう一つのUNDERCOVERの物語 「MY CHILDREN BORN ON THE OTHER PLANET」

  • 2025.12.8
Hearst Owned

本展では、UNDERCOVERの2006年秋冬コレクション「But Beautiful 5 “GURU GURU”」で発表された“ぐるぐるに巻きつけられた衣服”を描いた初期作から、スタンリー・キューブリックの名作『時計じかけのオレンジ』にインスパイアされた2019年秋冬コレクション、さらに2025年秋冬コレクション「Interface」で発表したセットアップを描いた最新作まで、全16点の油彩作品を展示。

104GALERIEで開催されている高橋盾の個展「MY CHILDREN BORN ON THE OTHER PLANET」展示風景より。 Hearst Owned

高橋は2013年から独学で油絵に取り組んでいるが、幼少期から絵を描き続けており、いつか油絵に挑戦したいという思いを抱いていたという。ルックをまとい、ヘッドピースやマスクを装着した肖像画は、緻密でリアルな描写に加え、鮮やかで深みのある独自の色使いがミステリアスな美しさを放つ。また、ファッションブランドとして確立したUNDERCOVERのもう一つの世界を、絵画という表現を通して垣間見ることができる希少な展示でもある。

高橋盾 Photo: Yoshie Tominaga

高橋は今回の個展に寄せ、アーティストステイトメントとして以下の言葉を残している。

「今回の個展のコンセプトは、私がUNDERCOVERでデザインし創り上げてきた過去のショーのイメージから着想を得ています。毎シーズン異なるテーマとデザインで表現してきたショーの中の人物たちは、いわば違う星で産まれた自分の子供のような存在です。ショーが終わり私の元を離れた彼らにもその後の人生があり、その物語を想像する自分がいます。そんな私の子供たちの物語を絵の中から感じ取っていただけたら嬉しいです」

赤く染まり、血が流れ落ちそうな眼と王冠、手に抱えたりんごが印象的な作品では、よく見ると画面下部に小さなモンスターが家を破壊している様子が描かれている。本作《Don’t Sit Under The Tree II》のタイトルは、1940年のアンドリュー・シスターズの代表曲に由来し、戦争で離れ離れになる恋人に向けた歌として知られる。りんごはしばしば平和の象徴として描かれるが、この作品では、1枚の絵の中に破壊による絶望感と平和への願いが共存しており、現代の不安定な状況とも重なる。

高橋盾「MY CHILDREN BORN ON THE OTHER PLANET」の展示風景より。 Hearst Owned

高橋は2023年、表参道のGALLERY TARGETにて初の個展「THEY CAN SEE MORE THAN YOU CAN SEE」を開催し、“目のない肖像画シリーズ”が話題を呼んだ。翌年には香港のWKM Galleryでも個展「Peaceable Kingdom」を行い、今回が3度目の個展となる。デザイナーとして築いてきた世界観を、より個人的で完結性の高い油絵へと発展させるため、日常的に制作を続けてきたという。各作品それぞれにコンセプトが設定されている一方で、鑑賞者が自由に想像を広げ、どのような世界を受け取り、解釈するのかを委ねる余白も多く設けられている。

高橋盾の個展「MY CHILDREN BORN ON THE OTHER PLANET」展示風景より。 Hearst Owned

会場となった104GALERIEは2013年に開廊し、日本をはじめ、ドイツ、イタリア、アメリカ、ルーマニアなど世界各国のアーティストによる個展やグループ展を開催。独自の審美眼で国内外のアーティストを発掘し、現代アートの可能性を探求し続けている。剥き出しのコンクリートとデザイン家具が調和するミニマルな空間は、静寂と心地よさを兼ね備え、作品世界への没入をうながしてくれる。

〜12/10、104GALERIE(東京都目黒区青葉台1-20-4 FORCE ビルB1F)

元記事で読む
の記事をもっとみる