1. トップ
  2. 恋愛
  3. 可愛がった人が死ぬ。呪い人形との出会いが導いた呪物との奇妙な生活【書評】

可愛がった人が死ぬ。呪い人形との出会いが導いた呪物との奇妙な生活【書評】

  • 2025.12.8

【漫画】本編を読む

【怖い場面あり、苦手な人は閲覧注意!】

『ぼくと呪物の奇妙な生活』(田中俊行:原作、オオイシヒロト:漫画/竹書房)は、“呪物コレクター”という一見おそろしい肩書きを持つ怪談師・田中俊行の、奇妙でありながらどこか楽しげな日常を描いたエッセイホラー漫画だ。

怪談師としてライブなどを中心に活動していた田中は、ある日イベントの終わりにファンから一体の人形を贈られる。その手紙には、「この人形を可愛がった介護施設の利用者たちが次々に亡くなっていった」という恐ろしい“いわく”が記されていた。誰かが不用意にこの人形を手にしたら、災いが降りかかるかもしれない。そう考えた田中は、その人形を“チャーミー”と名付け、自ら引き取ることを決めた。これをきっかけに、彼は世の中に行き場のない呪物たちを収集し始めるのだ。

本作の面白さは、本来なら恐怖の象徴であるはずの呪物が、田中の手にかかると“生活の一部”として溶け込んでいく点にある。部屋の片隅には、異国の人形や儀式具、呪われた骨董品が所狭しと並ぶ。禍々しさと生活感が共存するその光景は、不気味でありながらどこかユーモラスで、思わず笑ってしまう。怖いのに笑えるという、この絶妙なバランスこそ本作の最大の魅力だ。

また、作者自身が筋金入りの呪物マニアであるため、登場する品々の“ディープさ”も見どころのひとつ。マンダウ(儀式用の刀)や見たことのない護符、海外の呪いのアイテムなど、どれもリアルでマニアックだ。呪物の扱い方や日々の儀式が丁寧に描かれ、「呪物と共に生きる」という未知の世界が垣間見える。

本来、恐怖を感じさせる呪物たちを丁寧に世話し、呪いの人形チャーミーと一緒に寝る田中の姿には、思わずクスッとしてしまう。呪いをポジティブに受け入れ、楽しみながら生きる男の物語として、好きなことを突き詰めて生きる楽しさと強さを、彼は誰よりも体現している。

文=ネゴト / すずかん

『怪談・ホラー特集』を読む!
『怪談・ホラー特集』を読む!
元記事で読む
の記事をもっとみる