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『シビル・ウォー』を超える没入感!A24最新作『ウォーフェア 戦地最前線』をはじめ、呼吸を忘れるほどの緊張体験を生む映画4選

  • 2025.12.7

『シビル・ウォー アメリカ最後の日』(24)の鬼才アレックス・ガーランド監督が、同作で軍事アドバイザーを務め、米軍特殊部隊の経歴を持つレイ・メンドーサを共同監督に迎えた『ウォーフェア 戦地最前線』(1月16日公開)。本作のように、呼吸を忘れるほどの没入感と緊迫感で、観る者の心を鷲づかみにする話題の映画4作品を、一挙ご紹介する。

【写真を見る】本物の爆薬を使用した撮影を敢行した戦闘シーンに息を呑む『ウォーフェア 戦地最前線』

メンドーサ監督のイラク戦争での実体験を、極限まで再現した『ウォーフェア 戦地最前線』

2006年、イラクの危険地帯ラマディを舞台とした『ウォーフェア 戦地最前線』 [c]2025 Real Time Situation LLC. All Rights Reserved.
2006年、イラクの危険地帯ラマディを舞台とした『ウォーフェア 戦地最前線』 [c]2025 Real Time Situation LLC. All Rights Reserved.

世界を席巻するスタジオA24製作のもと、『シビル・ウォー アメリカ最後の日』を超える、圧倒的没入感に挑む本作。舞台は2006年、アメリカ軍特殊部隊8名の小隊は、イラクの危険地帯ラマディで、アルカイダ幹部の監視と狙撃の任務に就いていた。だが想定よりも早く事態を察知した敵兵が先制攻撃を仕掛け、市街で突如、全面衝突が始まる。

 【写真を見る】本物の爆薬を使用した撮影を敢行した戦闘シーンに息を呑む『ウォーフェア 戦地最前線』 [c]2025 Real Time Situation LLC. All Rights Reserved.
【写真を見る】本物の爆薬を使用した撮影を敢行した戦闘シーンに息を呑む『ウォーフェア 戦地最前線』 [c]2025 Real Time Situation LLC. All Rights Reserved.

退路もなく敵兵に完全包囲されるなか、重傷者が続出。部隊の指揮をとることを諦める者、本部との通信を断つ者、悲鳴を上げる者なども。負傷した仲間をひきずり、放心状態の隊員たちに、さらなる銃弾が降り注ぐ。小隊は逃げ場のないウォーフェア(=戦闘)からいかにして脱出するのか。

『ウォーフェア 戦地最前線』は1月16日(金)より公開 [c]2025 Real Time Situation LLC. All Rights Reserved.
『ウォーフェア 戦地最前線』は1月16日(金)より公開 [c]2025 Real Time Situation LLC. All Rights Reserved.

通常の映画撮影では、セットを実際には破壊せずに「爆発したように見せる」手法が一般的だが、本作では可能な限り本物の爆薬を使用した撮影を敢行。脚本どおりにセットへ爆薬を仕込み、破壊された箇所はそのまま次のシーンに持ち込む徹底ぶりが、画面に圧倒的な臨場感を宿らせる。メンドーサ監督も「この映画の体験は決して穏やかになる瞬間はないし、観客が楽な状態になることはない」「なぜなら、これこそが我々が作戦中に感じていたことだからだ。長いこと砲火が続き、大きな音で、みんな爆発を肌で感じた。この映画を観ているとき、観客は現役兵士が感じたのと同じことを感じる」と言及。

すでに本作を観た観客からは「こんな映画、観たことがない」「まったく新しい映画体験」と話題を呼んでおり、実際に戦場に放り込まれたかのような極限の緊張感に包まれる1作となっている。

音を立てたら、即死!ホラーの常識を覆した『クワイエット・プレイス』

音を立ててはいけない世界が舞台のサスペンスホラー『クワイエット・プレイス』 [c]Everett Collection/AFLO
音を立ててはいけない世界が舞台のサスペンスホラー『クワイエット・プレイス』 [c]Everett Collection/AFLO

全米No.1を獲得したサスペンスホラー『クワイエット・プレイス』(18)の舞台は、音に反応して人間を狩る「未知の存在」が現れたことで、人類が滅亡寸前まで追い込まれた世界。そんななか、あるルールを守りながら生存している家族がいた。「絶対に音を立ててはならない」。その存在は微かな息づかいさえ察知し、感づかれた瞬間に命は終わる。果たして彼らは、この沈黙の地獄を生き延びることができるのか。

本作では、言葉を発しないため家族が手話で会話をし、靴音を消すため裸足で歩き、さらには道に砂を敷き詰めて音を吸収させるなど、徹底した静寂と緊張感が物語を支配する。そんななか、母親がまもなく出産を迎える事実が判明し、極限状態はさらに加速。音で観客を驚かすホラーの常識を覆し、新たな地平を切り開いた秀作である。

電話の声と音だけで誘拐事件を追う『THE GUILTY/ギルティ』

わずかな音の手掛かりを頼りに誘拐事件を捜査していく『THE GUILTY ギルティ』 [c]Everett Collection/AFLO
わずかな音の手掛かりを頼りに誘拐事件を捜査していく『THE GUILTY ギルティ』 [c]Everett Collection/AFLO

続いては、「電話から聞こえる“声と音”だけで誘拐事件を追う」という極めてミニマルな設定ながら、張り詰めた緊張感と予測不能な展開で世界を圧倒した『THE GUILTY/ギルティ』(18)。緊急通報指令室のオペレーターの男性は、ある事件を機に警察官としての最前線から退き、日々ささいな通報に応対していた。そんななか、彼のもとに「いま、まさに誘拐されている」という本人からの1本の電話が入る。事件解決のために残された手だては「電話」だけ。車の発車音、女性の震える声、犯人の荒い息遣いと、わずかな音の手掛かりを頼りに、見えない現場の真相へと迫っていく。

サンダンス映画祭で観客賞を受賞したのを皮切りに、ロッテルダム、シアトルほか各国の映画祭で観客賞、監督賞を次々と獲得し、アカデミー外国語映画賞のデンマーク代表にも選ばれた本作。監督は「音声というのは誰1人として同じイメージを思い浮かべることがない」と語るように、その「想像の余白」を緊張のドラマへと昇華。視覚情報がないなか、劇中のわずかな「音」から真相を読み解こうとする時間は、観る者の神経を研ぎ澄ませ、圧倒的な映画体験を生み出し、日本公開時にもスマッシュヒットを記録した話題作だ。

デジタルモニター越しの捜査という斬新なアプローチの『search/サーチ』

 物語のすべてがPC画面上で展開していく『search/サーチ』 [c]Everett Collection/AFLO
物語のすべてがPC画面上で展開していく『search/サーチ』 [c]Everett Collection/AFLO

最後に紹介するのは、公開当時27歳という若さだった俊英アニーシュ・チャガンティ監督作『search/サーチ』(18)。忽然と姿を消した16歳の女子高校生マーゴット。家出か誘拐かも判然としないまま時間だけが過ぎ、焦燥に駆られた父デビッドは、娘のPCとSNSへアクセスし真相を追い始める。インスタグラム、フェイスブック、ツイッター、そこに現れたのは、明るく活発だったはずの娘とは別人「マーゴット」の姿であった。

物語のすべてがPC画面上でのみ展開する映像は「斬新な映像手法!」(ローリングストーン)、「ヒッチコック級のサスペンス!」(CNET)と絶賛され、2018年サンダンス映画祭NEXT部門観客賞を受賞した。チャガンティ監督は、Google Glassのみで撮影した短編「Seeds」で注目を集め、一気に映画界へ躍り出た逸材だ。「デジタルモニター越しの捜査」という斬新な方法で、観客もともに捜査に参加するような緊張感を生み出した、新時代のサスペンスである。

以上、極度の緊張感や没入感を生む映画4作をラインナップ。ご紹介した過去作3作とはまた違った“体験”を味わうことのできる『ウォーフェア 戦地最前線』をぜひ映画館でチェックしていただきたい。

文/山崎伸子

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