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いじめ加害者の自覚がない元同級生と高校で再会…!動揺する彼女を見て、私は復讐ではなく「利用」を決めた【作者に聞く】

  • 2025.12.7
三ノ輪ブン子(@minowabunko)
三ノ輪ブン子(@minowabunko)

『貧女ハウスへようこそ』(小学館)や『実録怪談 本当にあった怪奇村/新犬鳴トンネル』(竹書房)など、ホラーや不条理劇の名手として知られる漫画家・三ノ輪ブン子さん。読者の予想を裏切る展開を得意とする三ノ輪さんが今回新たに挑んだテーマは、なんと“いじめ”だ。

タイトルは「メッ子とラレッ子」。市場に溢れる単純な「仕返し」物語とは一線を画し、復讐という安易なカタルシスに逃げない意欲作となっている。

三ノ輪ブン子(@minowabunko)
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加害の自覚なき“再会”が、新たな地獄の扉を開く

物語の軸となるのは、中学時代に深い因縁を持った2人の少女、綿貫すみれと四方山瑞樹だ。当時、瑞樹を中心としたグループから標的にされていたすみれ。しかし、それは直接的な暴言や暴力を伴わない陰湿なもので、加害者側には「いじめている」という認識すら欠落していた。だが、受けた心の傷は深く、追い詰められたすみれはある日、電車のホームから身を投げようとする。

その現場を目撃し、間一髪で踏みとどまるきっかけとなったのが瑞樹だった。そのとき、すみれが向けたのは感謝ではなく「殺したいほど憎い」という純粋な殺意。翌日からすみれは不登校となり、2人の時間は断絶したはずだった。

ところが運命は残酷にも、高校の入学式で2人を引き合わせる。祖母の家へ避難するように引っ越していたすみれと、両親の離婚によって転居してきた瑞樹。偶然にも同じクラスで再会を果たしたのだ。皮肉なことに、この再会で激しく動揺したのは、被害者であるすみれではなく、かつての加害者・瑞樹のほうだった。

「復讐なんてやめて利用おし」祖母が授けた驚愕の処世術

予期せぬ再会に震えるすみれに対し、最強の助言者が現れる。すみれの祖母だ。事情を聞いた祖母が放ったのは、「復讐のチャンスじゃないかい?」という強烈な一言だった。

「やり返されるだけ」と怯える孫娘に、祖母は不敵に笑ってこう説く。「いじめなんてする連中は、ひとりじゃ何もできやしないよ」。

この言葉が、すみれの呪縛を解いた。彼女は瑞樹を許すことも、感情的に復讐することもしない。ただ冷徹に“利用する”ことを決意するのだ。逃げ場を塞ぎ、相手の感情が麻痺してボロボロになるまで使い潰す――。こうして、歪んだ形での“関係の再構築”が始まった。距離が近づいているようでいて、決定的に壊れている2人のやり取りは、読む者に得体の知れない緊張感を与える。

安易な解決を拒む、リアリティのある人間ドラマ

三ノ輪さんが本作に込めたのは、「復讐以外のルートで過去の傷と対峙する姿を描きたい」という思いだ。現実にはきれいごとで済まない難しいテーマだが、だからこそ嘘のない心理描写にこだわったという。

過去を悔いて謝罪し、償いたいと願う瑞樹。しかし、その自己満足な贖罪を頑として受け入れないすみれ。2人の関係性は平行線のまま、奇妙な形へと変容していく。三ノ輪さんは、そのじりじりと変化する距離感や空気感から、読者がそれぞれの答えを感じ取ってくれればと語っている。

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