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服装も進路も母が決めるのが「普通」だと思っていた。「あなたのため」毒母の洗脳が解けたきっかけは20代の大怪我だった【作者に聞く】

  • 2025.12.7
整形をさせたうえに進路にまで口出ししてくる母 (C)グラハム子/KADOKAWA
整形をさせたうえに進路にまで口出ししてくる母 (C)グラハム子/KADOKAWA

親であれば誰しも、我が子の成長に期待を寄せるものだ。しかし、その想いが暴走し、子どもの人生すべてを塗りつぶしてしまったとしたら——。「あなたのため」という言葉を隠れ蓑に、容姿や進学先、果ては感情の動きまでをも支配しようとする母親。そのコントロール下で翻弄され、摂食障害の淵へと追いやられていく娘。

自伝的エッセイ漫画『親に整形させられた私が母になる エリカの場合』は、作者であるグラハム子さんの実体験をベースに、過干渉がいかに子どもの人格を歪めるかを克明に描き出した衝撃作だ。

『親に整形させられた私が母になる エリカの場合』1 (C)グラハム子/KADOKAWA
『親に整形させられた私が母になる エリカの場合』1 (C)グラハム子/KADOKAWA
『親に整形させられた私が母になる エリカの場合』2 (C)グラハム子/KADOKAWA
『親に整形させられた私が母になる エリカの場合』2 (C)グラハム子/KADOKAWA
『親に整形させられた私が母になる エリカの場合』3 (C)グラハム子/KADOKAWA
『親に整形させられた私が母になる エリカの場合』3 (C)グラハム子/KADOKAWA

「理想の娘」という役割を演じさせられた日々

創作の原点は、出産後に自宅で楽しめる趣味として手を付けた育児漫画にあった。描き続けるうちに、漫画こそが長年胸につかえていた“正体不明のモヤモヤ”を言語化する最適なツールだと気づく。そうして、母とのいびつな関係性を作品として昇華させる作業が始まった。

グラハム子さんの母親が求めたのは、完璧な「理想の娘」だった。着る服から付き合う友人、学校選びに至るまで、すべて母のシナリオ通り。当時の彼女は、それが「普通の家庭」であると疑うことすら知らず、違和感を封じ込めていたという。

高校生になり体型が変わると、母からの干渉はさらにエスカレートする。容姿に対する容赦ない言葉の刃は、彼女を摂食障害へと追い込んでいった。両親の別居により父という逃げ場もなく、さらには整形手術の事実さえも「口外禁止」と釘を刺される。彼女は孤独な檻の中に閉じ込められていた。

20代の怪我がもたらした「精神的自立」

転機は突然訪れた。20代で負った大怪我により、スポーツができなくなったのだ。強制的に「母の敷いたレール」から外れ、自分の足で人生を歩まざるを得なくなったことが、皮肉にも彼女を外の世界へと導いた。

そこから彼女は心理学や親子関係に関する書籍を読み漁り、自分の中に植え付けられた「母の声」を客観的に分析し始める。一つひとつ呪いを解くように思考を整理し、ようやく自分自身の感情を取り戻していった。

現在、母との関係についてグラハム子さんは「絶縁か、仲良しか。その極端な二択である必要はない」という境地に達している。物理的・精神的に安全な距離を保ち、自分が耐えられる範囲でのみ接点を持つ「ベストなグレーゾーン」を選び取ったのだ。「今すぐに決断できなくても、未来のあなたならきっと答えを出せる」と、過去の自分と同じ苦しみを持つ人々に温かいメッセージを送る。

我が子からの愛が「自己否定」を溶かした

長年自分を肯定できなかった彼女を変えたのは、自身が生んだ子どもの存在だった。「どんな私であっても、子どもは無条件に好きでいてくれる」。その真っ直ぐな愛に触れたとき、凍り付いていた自己否定の感情が溶け出したという。

読者からの共感の声に対し、「みんな懸命に生きている」と感謝を口にするグラハム子さん。今後は同世代の女性たちの日常や希望に光を当てた作品にも挑みたいと意欲を見せる。

現在は日々の小さな目標としてバク転の練習に励んでいるそうだ。過去の痛みを受け止めながらも、軽やかに未来へ跳躍しようとするその姿は、多くの読者の背中を押し続けるに違いない。

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