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大人の発達障害「ASD(自閉スペクトラム症)」によく見られる“話し方の特徴”5つ

  • 2025.12.5

「話が長い」「要点がわかりにくい」「ストレートすぎて冷たく感じる」など。職場や日常生活で、ASD(自閉スペクトラム症)の特性をもつ人の“話し方”について、そのような印象を持った人へ。

ASDの話し方には、特有の傾向があります。それは決して“わざと”でも“性格”でもなく、脳の特性によるものです。しかし、周囲に誤解されてしまい、本人も生きづらさを感じることが少なくありません。

ASD(自閉スペクトラム症)の人は、話し方にこんな特徴が見られやすい

ASDの人は、コミュニケーションの仕方に独特の特徴が見られることがあります。会話の双方向性が取りにくい傾向にあります。ここでは話し方の特徴とともに、ASDの人が自分でできる対処法について解説します。

1.言葉を文字通りに受け取りやすい

冗談や比喩、あいまいな表現を理解しにくいことがあります。たとえば「手が離せない」という表現を、実際に“手がふさがっている”と受け取ってしまうなど。

自分でできる対処法は?
・わからない表現が出たら、「それはどういう意味ですか?」と確認する
・「相手は例えで言っていることもある」と覚えておく

なぜ会話が嚙み合わない? ASD(自閉スペクトラム症)に見られる話し方の特徴

2.話が長く、一方的に話し続けることがある

自分の興味のある話題になると、相手の反応を気にせず詳しく説明を続けてしまう傾向があります。頭に浮かんだ情報をそのまま順番に話すため、話も長くなりやすいです。

相手の表情や空気を読むのが苦手で「どこで切り上げればいいか」に気づきにくいことも要因です。要点だけに圧縮するより、すべて説明するほうが安心できるという情報処理の特性もあります。

自分でできる対処法は?
・話す前に“結論→理由→例”の順番を意識する
・2〜3文話したら、「○○さんはどう思う?」など質問で区切る
・息をゆっくり吸う、話す速度を意識する

3.声のトーンや話すリズムが一定

感情の抑揚が少なく、棒読みのように淡々とした口調になりやすい場合があります。逆に、緊張や興奮で声が大きくなりすぎることも。

自分でできる対処法は?
・録音して自分の声を聞き、トーンを確認する
・感情を“言葉”で補う(例:「嬉しいです」「びっくりしました」など)
・感情をこめるのが難しい場合は、話すスピードを少しゆっくりに落とすだけでも伝わりやすくなる

4.会話の「間」や順番をつかみにくい

相手が話し終える前に話し始める、沈黙を不安に感じて話し続けてしまうことがあります。

自分でできる対処法は?
・相手が話している間は「うなずく」「目を合わせる」など、待つ合図を意識する
・相手の声が止まって1〜2秒数えてから話し始めるとちょうどよい

5.視線や表情の使い方に特徴がある

話している相手の目をあまり見なかったり、逆にじっと見すぎたりするなど、非言語的なコミュニケーションのバランスが異なることもあります。

自分でできる対処法は?
・ずっと見続ける必要はなく、「2〜3秒見る → 少し外す → 戻す」などリズムを覚える

なお、こうした特徴は個人差が大きく、必ずしもすべてのASDの人に当てはまるわけではありません。話し方の違いを「性格」や「態度」と決めつけず、相手の特性として理解することが大切です。

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ASDの特性を持つ人と、会話が噛み合わないときの対処法

ASDの方との会話が噛み合わないと感じたとき、大切なのは「正す」より「歩み寄る」姿勢です。周囲の人は、以下のような対策を試してみてください。

具体的でわかりやすい言葉を使う

あいまいな言葉や遠回しな表現は避け、明確で具体的な指示・依頼にしましょう。

NG例:「これお願いしていい?」
OK例:「明日までに、Aさんにこの資料を渡してほしい」

口頭でのやりとりが難しい場合は、メモやチャットなどで「見える化」するのも効果的です。視覚的な情報のほうが理解しやすい人も多いため、文章で伝える方がスムーズになるケースもあります。

相手のペースを尊重する

ASDの人は、相手の言葉を「一度分解してから理解する」ような処理をしているため、反応までのラグが生まれやすい 特性があります。

間が空いても「無視されている」「考えていない」と解釈しないことが大事。数秒の沈黙を許容すると、むしろスムーズに進むことが多いです。

感情ではなく事実や数字を伝える

感情的な言葉はニュアンスや空気を読む必要があり、ASDの人には負荷が大きい場合があります。

例:「なんでわからないの!?」
→ “怒っている事実”は伝わるが、“何をどう改善すればいいか”が伝わらない。

「うまく伝わってなかったみたい、ごめんね。こういう意味だったんだ」と、事実と目的を丁寧に説明すると、誤解が減ります。

「通じない前提」で関わるとイライラしない

“普通に話せば伝わるはず”という期待があると、ズレが出た瞬間にストレスになります。

「相手は“言葉をそのまま受け取る”傾向がある」と前提を変えるだけで、ストレスが減ることがあります。「なぜ伝わらないんだろう」ではなく、「どう伝えれば伝わるかな」に意識が切り替わりやすくなります。

会話が伝わりにくいのは、性格や意志ではなく「脳の特性」

ASDの方とのコミュニケーションが難しく感じられる背景には、「相手が悪い」「努力が足りない」ではなく、脳の情報処理の違いがあります。

ASDの人は、言葉の裏にある“意図”や“空気”よりも、言葉そのものの意味を優先して受け取る傾向があります。そのため、あいまいな表現や比喩、感情的なニュアンスを読み取るのに負荷がかかるのです。

一方で、こちらが伝え方を少し変えるだけで、驚くほどやり取りがスムーズになることも多く、“相性の問題”ではなく“コミュニケーションの設計”で改善が可能です。

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監修者プロフィール

神谷町カリスメンタルクリニック院長 松澤 美愛先生

東京都出身。慶應義塾大学病院初期研修後、同病院精神・神経科に入局。精神科専門病院での外来・入院や救急、総合病院での外来やリエゾンなどを担当。国立病院、クリニック、障害者施設、企業なども含め形態も地域も様々なところで幅広く研修を積む。2024年東京都港区虎ノ門に「神谷町カリスメンタルクリニック」を開業、院長。精神保健指定医/日本精神神経学会/日本ポジティブサイコロジー医学会
URL https://charis-mental.com/
InstagramURL https://www.instagram.com/charismentalclinic

<Edit:編集部>

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