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細菌版たまごっち!?『SquidKid』を開発、リアル生命を育てる

  • 2025.12.5
細菌版のたまごっち!?を開発 / Credit:Canva

たまごっちといえば、1990年代に大ブームを巻き起こした電子ゲームです。

小さな画面に表示されるキャラクターに餌を与えたり、掃除をしたり、ボタン操作で育てる仕組みは当時の子どもたちを熱狂させました。

そんな「命を育てるゲーム」を、アメリカ・ノースイースタン大学(Northeastern University)の学生チームがまさかの“本物の生命”で再解釈しました。

彼らが開発したのは、生きた発光細菌を世話して光らせるという、細菌版たまごっち SquidKid です。

本物の細菌に餌を与え、酸素を送り、適切に扱わないと死んでしまうという、電子玩具にはない“現実の重み”がある点で大きな注目を集めています。

この新しいバイオ玩具は、バイオデザインのコンテスト、「Biodesign Challenge 2025」 のファイナリストに選ばれました。

詳細は、2025年11月6日、ノースイースタン大学のニュースで報告されました。

目次

  • 細菌版たまごっち!?発光細菌を育てる小型バイオリアクター
  • 「細菌との共生」「命を育てる」を学ぶ新しい教育玩具

細菌版たまごっち!?発光細菌を育てる小型バイオリアクター

1990年代に登場したたまごっちは、ミニサイズの画面といくつかのボタンを使って“デジタルの命”を育てるゲームでした。

餌を与える、掃除する、機嫌をとるといった行動はすべてボタン操作で行われ、世話を怠ると画面上でキャラクターが死んでしまうという仕組みは、多くの子どもに「責任」を教えました。

大人たちだって熱中したはずです。

しかし SquidKid は、そのルールを バーチャルではなく本物の生命へと適用した 点でまったく新しい概念を提示しています。

この SquidKid は、見た目にも特徴があります。(画像はこちら)

玩具は 小さなイカの姿を模した愛らしいデザインで、頭部の内部には細菌の入った液体が満たされています。

短い触手がいくつか付いており、そのうち1本は押すと空気を送り込める “酸素ポンプ” として機能します。

このように見た目は可愛いキャラクター玩具ですが、内部は本格的な 小型バイオリアクター になっているのです。

この SquidKid の中で暮らすのが、海洋細菌 Allivibrio fischeriです。

この細菌は特定の条件がそろうと青緑色に光る性質を持っていますが、重要なのは 「1匹だけでは光らない」 という点です。

細菌たちは互いに“化学信号”を出し合い、その濃度が一定以上に達したときに、ある酵素を作り、生物発光を始めます。

この現象を クオラムセンシング と呼び、細菌が「仲間の数」を判断して行動を変える仕組みとして知られています。

そして細菌が光り続けるには、いくつかのケアが不可欠であり、子どもがSquidKidで行うべきことは次の三つです。

  1. 栄養(ブロス)を補充すること
  2. おもちゃを優しく揺らして撹拌すること
  3. 触手ポンプを押して酸素を送ること

どれか一つでも欠けると細菌の状態が悪化し、光が弱くなってしまいます。

つまり SquidKid は、ボタン操作で行っていたたまごっちの「世話」を、現実の生命維持活動に置き換えた玩具なのです。

ちなみに、 SquidKid のデザインモチーフとなったイカ「Euprymna scolopes」 は、自然界で Allivibrio fischeri と共生しています。

このイカは腹部に発光細菌を住まわせ、夜間に海底へ映る自身の影を消すために利用しているのです。

SquidKid は、この共生関係の仕組みを家庭に持ち込む“教育装置”でもあります。

では、SquidKid を遊ぶ子供たちには、どんな影響があるでしょうか?

「細菌との共生」「命を育てる」を学ぶ新しい教育玩具

SquidKid の最大の目的は、子どもたちに「細菌を見る視点」を変えてもらうことです。

細菌はしばしば“病気の原因”として恐れられますが、実際には私たちの体や環境には、無数の“有益な細菌”が存在しています。

SquidKid は、その事実を肌で実感させるために設計されています。

開発チームは、細菌を「脅威」ではなく「協力者」として見る世代を育てたいという思いを込めています。

実際に細菌を生かすために必要な行動を自分の手で行い、その結果として光が生まれるという体験は、細菌が環境の中で果たす役割を直感的に理解させます。

また、SquidKid の内部で細菌が光る現象は、単なる視覚効果ではありません。

それは「細菌のコミュニティが健康に機能している証」であり、同時に「子どもが適切に世話をしている証」でもあります。

この小さな光は、生命と技術、環境と人間がつながる未来を象徴するものといえます。

このように、SquidKid はまだ市販されていない試作品ですが、子どもが“生命そのもの”と向き合う新しい玩具の可能性を示しています。

生命に対する理解や共生の感覚を育てる1つの手段として、今後の教育分野に大きな影響を与えるかもしれません。

参考文献

What If You Could Have a Real-Life Tamagotchi but with Bacteria?
https://www.zmescience.com/science/what-if-you-could-have-a-real-life-tamagotchi-but-with-bacteria/

What if your Tamagotchi was alive and glowing? This toy prototype is full of bacteria
https://news.northeastern.edu/2025/11/06/organic-tamagotchi-design-bioluminescent-bacteria/

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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