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受験直前は「ロボットになれ」?『ドラゴン桜』脚本監修の西岡壱誠が語る、算数や数学を学ぶ利点と、勉強のモチベーション維持方法【インタビュー】

  • 2025.12.5

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計算問題を見ると身がまえてしまう――。数字への苦手意識を抱く人たちは、少なくないはずだ。しかし、学生や社会人にとって、数字と向き合う場面から避けては通れないのも事実である。

漫画『ドラゴン桜』の脚本監修や編集を担当し、自身も偏差値35からの東大合格を勝ち取った西岡壱誠さん、西岡さんらによる東大生集団「東大カルペ・ディエム」による書籍『数字に強くなる30のトレーニング』(TAC出版)は、算数や数学の思考法を基礎から分かりやすく学べる一冊。

著者である西岡さんに制作のきっかけや、算数や数学を学ぶ意義。そして、受験を控える受験生へのメッセージなどを聞いた。

■コンビニで聞いた「7の倍数になる」の一言が制作のきっかけに

――新著『数字に強くなる30のトレーニング』は、算数や数学の思考を日常へ落とし込むための本という印象を受けました。そもそもこの一冊は、どのようなきっかけで作られたのでしょうか?

西岡壱誠(以下、西岡):きっかけはささいな話で、僕も通う東大の学生がコンビニのレシートを見ながらクスクスと笑っていたんですよ。何かなと思ったら金額が「7の倍数になる」と言っていて、理屈を聞いたら「なるほど」と思いました。

それが、本書で書いた「133は7の倍数ですか?」の問題に繋がっていて、要するに「133に7を足すと140。140は7×2×10で7の倍数だから、7を引いた133も7の倍数」という理屈なんです。僕が見た学生はコンビニで提示される金額が「(消費税をかけると)1.1倍になるから、11の倍数にならないとおかしい」とも言っていて、そうした感覚は、勉強以外にも応用できそうと思ったのが制作の原点になりました。

――たしかに、理屈を聞くと「なるほど」と納得できます。

西岡:そうなんですよね。ビジネスでも打ち合わせで売上げの概算を出したりとか、すぐに頭に浮かぶ人と浮かばない人がいるじゃないですか。その違いをハッキリ、書籍として言語化したいのもありました。また、僕自身も制作にあたっては学ぶことがたくさんあったんです。例えば、本書にある「1/2」、「1/4」……と、いくつかの分数の足し算を計算する一見複雑な問題を「正方形」のイメージに置き換えて解く方法も紹介していますが、単純に計算問題を解くだけではなく、身の回りにある情報を置き換えて考えることにも応用が利くかと思いました。

――制作するにあたって、想定していた読者はどのような方々だったのでしょうか?

西岡:数字に弱い、センスがないと感じている人たちですね。でも、できないわけはないんですよ。数字を前にして先入観で「難しい」と思い込んでしまっているだけで、しっかり学んでみると、算数や数学の問題はそれほど複雑じゃないんです。

小数点や分数を見ると「うっ……」となってしまう人もいるとは思いますけど、本書で苦手意識がやわらぐなら僕らもうれしいですよね。過去に、偏差値35から2浪人して東大に合格した当時、僕は100マス計算のような基礎からもう一度学び直したんですが、みなさんにとっても算数や数学に対する「原点回帰」のような本をめざしました。

■難しく見える問題も視点をズラすとあっさり解ける

――実際、読者の方からはどのような反響をいただいたのでしょうか?

西岡:シンプルに「なるほど」と膝を叩いてくださる方が多かったですね。例えば「1/3と1/5の真ん中はいくつでしょう?」という問題では、驚きの声もありました。一見すると「1/4」と答えてしまいそうじゃないですか。でも、算数や数学の発想があれば分母を「15」に揃えるとひらめき、1/3は「5/15」で、1/5は「3/15」だから「4/15」だと分かる。そう考える面白さが伝わったのは、うれしかったですね。

――ある意味、表面的にではなく本質を見抜く考え方を鍛えられるといいますか。

西岡:そうですね。一見、複雑に見えるものでも、冷静に考えると「何だ、そんなことか」と思うものもありますよね。

例えば、左側にはカッコでくくられた5桁の分数の足し算が並び、乗算記号(×)の先にはカッコでくくられた1桁や2桁の分数の足し算や引き算が並ぶ問題があって。簡単な右側のカッコ内を先に計算すると答えが「0」になるように作ったんです。順番通りに5桁の分数から計算しようとすると難しく見えますが、簡単な問題から解けば、答えは意外とあっさり導ける。算数や数学は結局「思考法」ですし、そうした経験を積み重ねれば、必ず感覚も身につけられると知ってほしいです。

――数字への苦手意識を抱く方々に向けて、分かりやすく伝えるための工夫もあったんでしょうか?

西岡:問題を面白くしたかったですね。僕もですし、執筆に関わった東大カルペ・ディエムのメンバーも含めて、制作チームで構成についてはかなり議論しました。タイトルにもある「30のトレーニング」の内容はだいぶ吟味しましたし、サブスクリプションのコスパを考える問題、メジャーリーグで活躍する大谷翔平選手の秒給や時給などを考える問題も織り交ぜながら、話題性も含めて楽しく学べるように工夫しました。

■数字の違和感に敏感になれるのも算数や数学の利点

――西岡さん自身も、日常生活で算数や数学の考え方が役立つと思う場面はありますか?

西岡:会社を経営しているので、自社の利益率や成長率を考えるときなどには役立っていますね。でも、財務の感覚は社会で働いているなら、誰にとっても無関係ではないと思うんです。

例えば、ある年に副業で50万円稼いで、翌年に55万円を稼いだとしたら「5万円増えた」と考えるか「1.1倍増えた」と考えるかで、その後の判断は変わってくるはずなんですよ。目の前で5万円増えたとなると大金に見えますけど、1.1倍では「利回りがよくない」とも捉えられますし、NISAのような投資も注目される時代では、資産を蓄える上でも大事な視点ですよね。

また、数字の違和感に敏感になれるのも、算数や数学を学ぶ利点です。僕も税理士さんから報告された帳簿上で「この月の売上げ、数字が足りなくないですか?」と指摘したときがあって、数字に強い人は自然とそうした感覚も持っていると思います。

――人生で損をしないためにも、大事な視点かと思います。本書は「暗算する力」「式を立てる力」「置き換える力」「俯瞰する力」「試行錯誤する力」の流れで「30のトレーニング」に挑めますが、おすすめの学び方はありますか?

西岡:シンプルに最初の「暗算」から取り組んでほしいですね。数字に強くなるためには避けられませんし、避けて通れない小数と分数の違いも「なぜ、0.125を1/8でも表すのか」と分かりやすく伝えましたので、基礎を学び直すだけでも数字への抵抗感は薄れると思います。算数や数学が得意という意識がある人も、クイズやパズルを解くような感覚で読んでほしいです。

■勉強が合格への近道。受験直前は「ロボットになれ」

――本書も制作された西岡さんは、高校生向けの教育事業にも力をそそいでいらっしゃいます。まもなく受験を控える生徒に向けて、アドバイスをいただければと思います。

西岡:基本が大事です。受験直前だからといって応用を頑張ろうとしても難しいですし、粘り強く勉強と向き合ってほしいですね。例えば、本書のテーマにある数学では、分からないと思っていても手を動かして計算してみると「なるほど」と何かしらひらめくんですよ。適当でも動いていれば何かが見えてきますし、手を動かすのがイコール「考えること」だと伝えたいです。

――いわゆる受験直前の時期に、満足に問題を解けないと焦りも生まれそうですが。勉強のモチベーションを維持する秘けつもありますか?

西岡:生徒には「ロボットになれ」と伝えているんですよ。過去問を解いていても「上手くいかない」とか、色々と悩みは聞くんですが、解決策を突き詰めると結局「勉強すること」に行き着くんです。受験に限っては、悩みがいくつあっても答えは「勉強する」に尽きますし、今がしんどくても何よりもの近道なので、ロボットのように勉強へ没頭するのが一番だと思います。その合間で、息抜きとして『数字に強くなる30のトレーニング』もパラパラとめくってもらえるなら、うれしいですね。

取材・文=カネコシュウヘイ 写真=川口宗道

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