レジで「早くしろ！遅い！」と怒鳴り散らす老人。だが、店員のある一言で態度が一変。実は【短編小説】

本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。

これは、私が仕事帰りのコンビニで遭遇した、あるスカッとした出来事です。

金曜日の夜、店内は混雑していました。疲れていた私は早く帰りたい一心でレジに並んでいましたが、列は一向に進みません。

「おい！早くしろ！遅い！」

突然、怒鳴り声が響き渡りました。声の主は、私の数人前に並ぶ初老の男性。

レジ操作に手間取る「研修中」の若い男性店員に対し、激しい口調で詰め寄っていたのです。新人の店員さんは萎縮し、手の震えで余計に作業が遅れる悪循環に陥っていました。

「これだから最近の若いのは……。もっとテキパキ動けんのか！」

老人はレジ台を指で叩きながら暴言を続けます。周囲の客も嫌な顔をしていましたが、トラブルを避けて皆うつむいています。私も怖くて何も言えず、ただ嵐が過ぎるのを待つしかありませんでした。

その時、「申し訳ございません！」と凛とした声が響きました。

奥から現れたのは、社員らしき女性店員。彼女は新人を下がらせると、素早くレジ打ちを引き継ぎました。老人は相手が変わっても「教育がなってない！」と鼻息を荒くしたままです。

しかし、女性店員は老人の顔をじっと見つめると、ふいに満面の笑みを浮かべました。

「あれっ？もしかして……校長先生じゃありませんか？」

老人の動きがピタリと止まります。「え……？」

「〇〇中学で生徒会長をしていた〇〇です！先生、朝礼でいつも仰っていましたよね。『常に心に余裕を持ち、他者に優しくあれ』って。その教えを胸に、今も接客を頑張っているんです！」

店内が一瞬の静寂に包まれました。

老人の顔は怒りの赤から、みるみる羞恥の赤へ。かつての教え子の前で、自らの教えと正反対の振る舞いを晒してしまったのです。

「あ、ああ……そうか。うん……熱心でよろしい」

老人は急に背筋を伸ばして小声でそう言うと、逃げるように会計を済ませて店を出て行きました。

「ありがとうございましたー！」と明るく見送る店員さん。

嵐が去った店内には安堵の空気が流れ、私は心の中で盛大な拍手を送りました。

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