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今から対応すれば「18万円超の得」…少しでも手取り収入を増やすための"年末駆け込み節税対策"

  • 2025.12.3

手取り年収を少しでも増やしたいならどうすればよいか。ファイナンシャル・プランナーの伊藤亮太氏は「今からでも間に合う所得税・住民税の節税対策がある。利用できそうな制度を年末までに活用してはどうか」という――。

確定申告書の医療費控除の欄
※写真はイメージです
知って使って得する「節税対策」

今年も残すところあとわずかとなってきました。この時期に考えたいのが「節税」です。節税とは、様々な制度を活用し合法的に税負担を軽くする行為が該当します。世の中には、知って使えると節税ができる多くの制度が設けられています。

個人の場合、1月1日から12月31日の1年間を一区切りとして所得税や住民税などの税金が課されるため、年末の今、駆け込みにより節税を行うことで、今年の税負担を軽減できる可能性があるのです。それではどのような節税対策があるのでしょうか。確認していきましょう。

医療費控除の適用

まず1つ目に、「医療費控除」が挙げられます。医療費控除とは、納税者本人または生計を一にする配偶者やその他の親族のために支出した医療費のうち、一定の金額を所得から差し引くことができるものです。

ただし、保険金などの支給を受けた場合にはその金額は自己負担額から差し引く必要があるほか、確定申告により申請を行う必要があります。


《医療費控除の計算式》

医療費控除額=(支払った医療費の総額-保険などで補てんされた金額)-10万円(※)

※その年の総所得金額が200万円未満の場合には、総所得金額の5%の額

今年1年間の間に、入院等により医療費を払っている方は、支払った金額によっては医療費控除の適用ができる可能性があります。この医療費には、病院での診療費用や入院費用、治療費用はもちろんのこと、医薬品の購入代金や歯科治療費も含まれます。さらに、ご家族の治療費の負担額も合算できますので、今のうちに年間でどれぐらいの医療費がかかったか計算してみましょう。医療費控除の計算例を以下に示します。


《医療費控除の計算例》

Aさんの1年間に支払った医療費の総額は、100万円である。入院や治療費として加入していた生命保険から20万円の給付金を受け取った。Aさんの年収は700万円(総所得金額200万円以上に該当)とすると、この場合の医療費控除は、

医療費控除額=(100万円-20万円)-10万円=70万円

と計算できます。

仮に、Aさんが会社員で給与収入700万円のみであるとした場合、70万円の医療費控除が適用されると70万円×20%=14万円の所得税が軽減されることになります。なお、軽減できる金額は年収や所得により異なります。

セルフメディケーション控除

1年間に多額の医療費は発生していないから医療費控除は使えない……。そんな方でも適用できる可能性があるのが「セルフメディケーション控除(スイッチOTC薬控除)」です。スイッチOTC薬とは、医師の処方でのみ提供が認められていた薬のうち、ドラッグストアなどでも販売が認可された一般医薬品が該当します。

薬局で薬を見比べる薬剤師
※写真はイメージです

自己、または自己と生計を一にする配偶者や他の親族が、スイッチOTC医薬品を購入した場合で、その費用(保険金等で補てんされた金額を除く)が1万2000円を超える場合、その超える部分の金額(ただし上限は8万8000円)を、総所得から所得控除することができます。ただし、この控除は通常の医療費控除と併用することはできません。いずれか一方を選択することとなります。

仮にドラッグストアで風邪薬や胃腸薬などのスイッチOTC医薬品を購入し、年間で5万円購入したとします。この場合、5万円-1万2000円=3万8000円をセルフメディケーション控除として適用できます。

仮に給与収入のみで年収700万円の会社員の場合では、3万8000円×20%=7600円の所得税軽減につながることになります。年間で10万円購入した場合には、8万8000円(上限)が適用となり、この場合には1万7600円の所得税軽減につながります。

年末までに必要なスイッチOTC医薬品を購入し領収書を保管、確定申告により適用できます。なお、保険者(健康保険組合等)が実施する健康診査などを受けている方が前提となります。

ふるさと納税

会社員の場合、条件に合えば郵送やオンラインでの申請や年末調整により行うことができるものもあります。その一つ目が「ふるさと納税」です。

ふるさと納税のメリットはなんといっても「返礼品」にあります。ご自身が支払う税金の一部を寄付金という形で寄付します。そして、寄付した自治体から返礼品を受け取る仕組みです。ただし、ご自身の住んでいる自治体への寄付は適用されません。

実質的に2000円だけ負担することにはなりますが、あとは収入や家族の状況等に応じて寄付できる上限額が決まっていますので、その額の範囲内で寄付していきます。寄付した額の最大30%分が返礼品として受け取ることができます。例えば1万円寄付すれば最大3000円分の返礼品を受け取ることができます。

このふるさと納税は、所得が多い人ほど寄付できる金額が多くなります。高所得者ほどメリットのある仕組みとなっています。仮に上述した年収700万円のAさん(単身者とします)の場合、最大で10万8000円の寄付が可能です。30%分の返礼品が受け取れるとすると、3万400円分得することになります(実質負担2000円控除後)。

ふるさと納税は、5つの自治体までの寄付であればワンストップ特例制度により申請書類等の書類を自治体に郵送するかオンラインによる申請で対応できますので、確定申告を行わなくても簡単に寄付金控除の適用ができます。

生命保険料控除

生命保険料控除は、納税者本人が、納税者本人や配偶者、その他の親族のための生命保険料や共済の掛金、個人年金保険料等の保険料を支払った場合に、年間の支払額に応じて一定の金額が差し引けるものです。

2012年1月1日以降に締結した生命保険契約の場合、生命保険料控除、個人年金保険料控除、介護医療保険料控除の3つが設けられており、要件を満たせば3つの保険料控除をそれぞれ適用することが可能です。

仮に1年間の支払保険料が8万円超の場合には、所得税で4万円、住民税で2万8000円の控除が適用となります。3つそれぞれ該当する場合には、所得税で最高12万円、住民税で最高7万円が適用されます。

もし生命保険に加入したい希望がある場合には、年末までに加入・保険料支払いを行えば、今年の保険料控除も適用できることになります。例えば、1年分をまとめて12月に支払うことでその年の保険料控除を最大限適用するといったことも可能です。ただし、この場合には年末調整に間に合わない可能性があるため、確定申告を行う必要が出てくるかもしれません。

仮に上述のAさんが、個人年金保険に加入し、年払いで8万円超の保険料を支払ったとします。この場合には、所得税で4万円、住民税で2万8000円の控除が適用となり、給与収入700万円であれば、所得税で8000円、住民税で2800円、合計1万800円の節税へとつなげることができます。

年末に向けて今から計画的に行動を

以上、年末の今からでも間に合う節税対策について解説してきました。事例で示したAさんの場合、通常の医療費控除、ふるさと納税、個人年金保険料控除を利用したとすると、合計で18万1200円分の節税につながりました。

こうした節税対策は他にも数多くあります。例えば確定拠出年金(iDeCo)、住宅ローン控除といったものは、これからの駆け込みでは間に合わないと思われるため、利用できる方は来年チャレンジされると良いでしょう。非課税メリットのあるNISAも検討されると、資産運用による利益が非課税で受け取れます。

なお、いずれにおいても、節税につながる行動をとる際にある程度お金がかかります。そのため、節税のために行うという発想だけではなく、実際に必要なのかどうか、また家計の資金面から見て問題ないかどうかなどもよくよく検討したうえで、節税対策は行うべきといえます。

領収書の金額を計算する人
※写真はイメージです

伊藤 亮太(いとう・りょうた)
ファイナンシャル・プランナー
慶應義塾大学大学院修了。CFP資格、DCアドバイザー資格取得。証券会社勤務、投資顧問会社設立を経て、2007年スキラージャパン設立、取締役。約100銘柄の株を保持、50人以上の投資家に取材。

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