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まさかのおまえが恋愛展開なのかい!と思わずツッコミながら笑った【ばけばけ】9週[写真多数]

  • 2025.12.1

まさかのおまえが恋愛展開なのかい!と思わずツッコミながら笑った【ばけばけ】9週[写真多数]

1日の楽しみは、朝ドラから! 数々のドラマコラム執筆を手がけている、エンタメライター田幸和歌子さんに、NHK連続テレビ小説、通称朝ドラの楽しみ方を毎週、語っていただきます。『怪談』でおなじみ小泉八雲と、その妻 小泉節セツをモデルとする物語。「ばけばけ」のレビューで、より深く、朝ドラの世界へ! ※ネタバレにご注意ください

強キャラ登場!協力を依頼されるトキ

日本に伝承される怪談をもとにした作品を発表したラフカディオ・ハーン(小泉八雲)と、その妻・セツをヒロインとした髙石あかり主演のNHK連続テレビ小説『ばけばけ』の第9週「スキップ、ト、ウグイス。」が放送された。

サブタイトルにある〝スキップ〟は、前週のスキップ大会からの流れであり、引っ張るなぁと思わず笑ってしまうが、〝ウグイス〟とは何を指すのか。

「ウグイスです!」
そう言ってヘブン(トミー・バストウ)宅の玄関に現れたのは、江頭県知事(佐野史郎)の娘、リヨ(北香那)だ。もともと西洋に憧れがあるリヨは、それこそミーハーな雰囲気でヘブンに近づいてくる。日本的なイメージの鳥だからというだけの浅い理由で、ウグイスと思われる小鳥を届けた。

「あなたは私のライバルなのかしら?」
ヒロイン・トキにストレートに聞いてくるあたり、強キャラ感満載だ。そもそもなかなか返せない借金に追われる旧武家の娘のトキと、立場の違いも対照的であり、いろいろ気が利き理解度も高いリヨに、ヘブンも好意的な雰囲気だ。

いってみれば三角関係である。とはいえほぼすべての視聴者は、この作品の恋愛要素の行き着く先は知っている。オープニングの映像でもそれは毎回流れている。いつかそこにたどり着く。出会って、誤解を解き理解を深めつつ、少しずつ距離を縮めていく。作品内でもコメディタッチな要素をちりばめながらそれは感じられていた。高額の給料でヘブン宅の女中をつとめることになったことで、ここからどんどん二人が親密になっていくのかと思うところ、すんなりとはいかないところが飽きさせないつくりだ。

リヨはヘブンとの関係がうまくいくようトキに協力をお願いし、トキもそれを受け入れる。そのいっぽうで、リヨの父の知事は、1年で帰ってしまう西洋人のヘブンとの恋愛には反対で、錦織(吉沢亮)に阻止を依頼する。その錦織はトキに協力を頼む。両者からの協力依頼に板挟みになるトキは、この展開においては完全なる部外者だ。そのようなわけで、三角関係の恋愛展開になりつつもハラハラするというよりもどこかニヤニヤしながら見てしまう。恋愛展開においてもこのドラマらしい、力を抜いた笑いが貫かれている印象だ。

まさかのおまえが恋愛展開なのかい!

ある日、トキはリヨに誘われ八重垣神社を訪れる。リヨの目的は、水占いでヘブンとの恋愛の行方をはかることだ。リヨの恋愛は成就するのか。リヨのためには異人であるヘブンと結ばれるためにできるだけ遠くで沈め、いっぽう錦織の願いのためには近くで沈め。「沈んで!」と叫ぶリヨの隣で(沈むな!)と心の中で叫ぶトキ。板挟みのトキの心中はここでも騒がしく忙しく、思わず笑ってしまう。

そこにさらに笑いを足してきたのが、トキの祖父、まさかの〝ラストサムライ〟勘右衛門(小日向文世)である。トキが板挟みの中で沈め、沈むなと心の中で葛藤しているところに、
「沈め! 沈んじょくれ!」
という聞き覚えある声。まさかのおまえが恋愛展開なのかい!と思わずツッコミながら笑ってしまう。勘右衛門は現在「スキップ指導」をしている子供たちのひとりの祖母に恋心を抱いているらしい。しかしそのように次から次へと笑いをちりばめてきながらもストーリーに破綻をきたさないところには緻密さを感じられる。

さまざまな〝外野〟の思いがありながらもリヨとヘブンの関係は少し進展(?)、二人で神社を含めた松江の名所を「ランデブー」する展開となる。ヘブンのためにお弁当を作ってあげたいからとヘブンの好物をトキに聞きにきたところで、錦織が割って入り「糸こんにゃくです!」と言う。これまで何度か食卓にのぼっては、「ムシ! ジゴク!」と悪態をつかれ、前週のヘブンをもっと知るためのクイズの問題にもなっていた食材だ。トキはといえば、「明日は天気もええですし、うってつけだと思います」と、棒読みのようにただ繰り返すばかりだった……。

当日、板挟みのトキは、『ベントウアケルナ イトコンニヤク』の紙を渡して〝悲劇〟を食い止めようと、トキなりの抵抗をこころみる。錦織と知事はふたりを尾行するが、それはヘブンにバレており、4人での〝ランデブー〟となってしまう。そんなヘブンは、神社での石狐に心を奪われ夢中になりリヨのことはそっちのけ、4人でのランデブーに加えてこの仕打ち、今のところヘブンの気持ちはその程度であることがわかる。そもそもヘブンが大切に思っているのは、写真を大切に飾っているかつての同僚イライザ(シャーロット・ケイト・フォックス)だろう。結局リヨはむくれて帰ってしまうのだった。

トキがいなくなったかと取り乱したあとで勘違いとわかると安堵の表情をうかべるヘブンに、まだ恋愛感情ではないが少しずつ距離が縮まっていることがわかる。

さて、リヨがウグイスだといってヘブンにプレゼントした鳥は、なかなか「ホーホケキョ」と鳴かない。なぜなのか。花田旅館では主人の平太(生瀬勝久)とツル(池谷のぶえ)の間で論争がヘブンも巻き込んで勃発、そこに現れた新聞記者の梶谷(岩崎う大)によって、これはウグイスでなくメジロ、「ホーホケキョ」と鳴かないのは当たり前とあっさり解決してしまう。

このどこか落語の小咄のようなウグイスとメジロの勘違い論争も、ある意味リヨの気持ちの届かない感じを表していたようにも感じられ、もしそうであるならやはり笑いで包んでいくことの上手い演出だ。

そして、悩まされた板挟みから解放されたトキは、思わず自然とスキップし、うまくできてしまう。

タッタタッタ……スキップのリズムも心地よく、スキップとウグイスの週の混乱は幕を閉じていく。

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