1. トップ
  2. 安蘭けい&瀬奈じゅん、待望の初共演 宝塚で1期違いの2人が明かすお互いの魅力とは

安蘭けい&瀬奈じゅん、待望の初共演 宝塚で1期違いの2人が明かすお互いの魅力とは

  • 2025.11.30
(左から)瀬奈じゅん、安蘭けい クランクイン! 写真:米玉利朋子(G.P. FLAG inc) width=
(左から)瀬奈じゅん、安蘭けい クランクイン! 写真:米玉利朋子(G.P. FLAG inc)

宝塚歌劇団元星組トップスターの安蘭けいと元月組トップスターの瀬奈じゅん。退団後もさまざまな舞台作品に引っ張りだこで、その輝きを増し続ける2人が、ミュージカル『ブラッド・ブラザーズ』で待望の初共演を果たす。運命に翻弄される双子の人生を描く本作で対照的な母親を演じる安蘭と瀬奈に話を聞くと、宝塚音楽学校で1期違いという関係性がたっぷりと伝わるインタビューとなった。

【写真】宝塚音楽学校で本科・予科の関係だけあり、仲良しトークが止まらない安蘭けい&瀬奈じゅん

◆再演を重ねる名作で対照的な母親役として対峙

階級社会を背景に親と子、兄弟の絆、人間の運命という、国境を越えた普遍的なテーマをもつ本作は、1983年のイギリスでの初演以来、さまざまな国で上演が重ねられてきた名作ミュージカル。生活の困窮から、裕福な家庭に里子に出され育った者と、母親の元に残され貧しい環境で育った者。数奇な運命をたどる双子の波乱に満ちた人生を描く。

小林亮太、渡邉蒼、山田健登、島太星とミュージカル界期待のキャストが顔をそろえる本作で、安蘭は主人公である双子のミッキーとエディの生みの親で、ミセス・ライオンズにエディを引き渡すミセス・ジョンストンを、瀬奈は子宝に恵まれずエディを引き取り育てるミセス・ライオンズを演じる。

――出演のお話を聞かれた時のお気持ちはいかがでしたか?

安蘭:以前上演された時に作品を拝見しまして、当時のミュージカルでは新しいジャンルというか、社会派な作品、大人な作品という印象を抱きました。何度も再演されるほどいろいろな人の心に刺さって記憶に残り、愛され続けている作品なので、それに出演させていただけるというのはとてもうれしく光栄に思いました。いつかお話が来るんじゃないかなと仄かな予感もあったので、すぐにやりたいとお返事しました(笑)。

瀬奈:私は作品を拝見したことはなかったのですが、若い俳優さんたちがすごく熱を持って演じているという印象がありました。ほかの作品で共演した方でも、『ブラッド・ブラザーズ』に出ていた方は、作品に対する熱や思いがすごく強いというイメージがあります。実際に台本を読んでみると、面白いと言っちゃいけないのかもしれないですけど、いろいろな人間模様が面白くてやりがいがありそうだなと感じて。「瞳子さん(安蘭の愛称)と共演できるんだ!」という喜びもありました。

――演じられる、ミセス・ジョンストン、ミセス・ライオンズはどんな人物だと感じましたか?

安蘭:そもそもの発端だって言われるのですが、窮地に立たされてそう選択せざるを得なかった母親なんだと思います。ある角度から見ると本当にひどいお母さんだし、ある角度から見ると生きることに必死だったからそういう選択をせざるを得ない気の毒な女性でもある。どんな風にも受け止められると思うのですが、私は彼女に寄り添って、この役を愛したいなと思っています。

瀬奈:ミセス・ライオンズは今まで育ってきて、叶えられなかったことがきっとなかったんだろうなと思うんです。お金や自分の立ち回りでなんとかして自分の夢や望みを叶えてきた。私自身もそうでしたけど、こればっかりはお金で解決できないし、頑張ればなんとかなるものでもなくて。「努力をすれば報われる」と根性論で生きてきた人間としては、頑張ってもどうしようもないことがあるんだというところにすごく共感します。ただその手段がよろしくなかったなとは思いますけども、心理的にはわからなくはないところがあります。

――今回、大きな息子を持つ母親役となります。

安蘭:母親役は結構多いので、もう何の抵抗もなくなりましたね。

瀬奈:私もです。一時期、ヒロインでもなく母親でもない時期もありました(笑)。

安蘭:どっちつかずなね(笑)。息子役の中では、小林亮太くんとは、『キング・アーサー』で共演経験がありますが、その時はあまり絡みがなかったんです。素直で立ち回りも上手くてこれからが楽しみな俳優さんだなと思っていたので、今回またご一緒できることが楽しみです。

◆瀬奈じゅんが安蘭けいに恩を感じる音楽学校時代の忘れられない出来事


――意外にも今回が初共演のおふたりですが、宝塚では77期と78期と一期違いの間柄です。第一印象は覚えていますか?

瀬奈:私はすごく覚えています!

安蘭:私も覚えているよ。うちの同期に麻子(瀬奈の愛称)と同じ宝塚受験スクールの子がいて、音楽学校の入学試験のお手伝いをしていた時に、「絶対あの子受かるよ」ってみんなが知っていたんです。すごく有名で注目株でした。

瀬奈:私はスクールで、宝塚受験のクラスではなく、ずっとバレエを習っていたんですね。そのスクールでは受験生の人たちはみんな年上なのに、私のほうが先輩みたいな感じになってしまっていて。だからそういう印象だったんだと思います。

安蘭:ザワザワザワ……っていう感じで見ていました。

瀬奈:本当に普通の子、渋谷系女子だったので、受験するような感じの子じゃなかったから生意気に見られていたんだと思います。

そんな中、予科生を本科生が遊びに連れて行ってくれるイベントがあって。その時に、本科生10人と予科生10人みたいなグループの中に安蘭さんがいらっしゃったんです。すごく覚えているのが、「今日は無礼講なんだから、全然笑ったりしたっていいんだよ」って。

安蘭:規則が厳しくて、普段予科生は笑っちゃいけないんだよね。

瀬奈:忘れもしない神戸ポートピアランドへ遊びに行ったんですけど、その時は普通に笑って楽しく過ごしました。そうしたら、安蘭さんがみんなの前で「えー!麻子って全然普通のいい子じゃん!」って言ってくれたんです。瞳子さんのその一言で、本科生からそういう目で見られなくなり、みんな優しくなっていったんですよね。それが安蘭けいさんの第一印象。

安蘭:恩人じゃん!(笑) そんなことがあったんだ、初めて聞いた!

瀬奈:そういうご恩は忘れずに覚えていますね。よかったですね、恩を売っといて(笑)。

安蘭:これからずっと一緒なので、恩返ししてもらおう(笑)。

瀬奈:最後まで言わずにとっておけばよかった。大失敗(笑)。

――(笑)。入団されてからは、安蘭さんは雪組⇒星組。瀬奈さんは花組⇒月組と被らなかったんですよね。

安蘭:そうなんです。麻子の代の初舞台が雪組だったので、その時くらいですね。

――同じ時期にトップスターとして活躍されたおふたりですが、お互いのここがすごい!と思うところはどんなところでしょうか。

安蘭:麻子はね、なんでもできるし、とてもかっこいいんですよ。いろんなことをスマートにこなすし。かっこいいキザり方も自然で、“やってます感”がない。自然にいろんなことをこなしていて、下級生ながらカッコいいな、瀬奈じゅんみたいになれたらいいなって憧れていました。

瀬奈:よく言う…。ここ太字で書いてください(笑)。

安蘭:さぁ、次は麻子が太字で書いてもらうことを言ってくれる番(笑)。

瀬奈:私、瞳子さんの悪口を人から聞いたことがないんです。それくらい人間性が素晴らしいんですよね。それが舞台にも出るから、もちろん男役でもそうでしたけど退団されてからも本当に素敵だなって思います。人として尊敬しています。

◆宝塚退団から16年 関係性に変化は?


――おふたりとも2010年に宝塚を退団されましたが、その後、関係性に変化はありましたか?

安蘭:退団してから共演もしてなくって、それぞれが出演している舞台を観に行くくらいだったんです。麻子とは、同じ時期に二番手で、自由にのびのび過ごしていた時期も共有していたので、本当に今こうして退団から16年くらい経って初めて共演しますが、そんなに時間が空いていたのが信じられないくらいですね。

瀬奈:変わらないですよね。

安蘭:宝塚の人って大抵そうなんです。時間が空いても、会ってなかった時間をなしにできるくらいすぐに戻れる。

麻子はもちろん頑張っているんだけど、頑張っている感がない、余裕が見える人。こっちが気張ることがなくて楽なんです。同じ血液型なんですけど、そういう部分もあるのかな。

瀬奈:面白く生きたいじゃないですか。見栄っ張りなのかな。必死なところを見せたくないというのはありますけどね。

安蘭:必死なんだけどね。その面白さが似ているのかもね。

――作品では、同じ日に双子として生まれながらも、片方は裕福な家に、もう片方はそのまま貧しい境遇のままでと運命を分けるポイントがあります。おふたりにとって、あの時に運命が変わったなというターニングポイントを挙げるとすると、どんなことでしょうか。

安蘭:やっぱり宝塚に入ったことが一番かも。

瀬奈:私もです。

安蘭:宝塚に入ってなかったら今がないし、あの選択をして本当によかったなって思います。

瀬奈:こう言ってしまうと語弊があるかもしれないですけど、トップになったか、ならないかも大きくないですか? その後の人生において。そこにはいろんな思いもありますけど…。

安蘭:華やかだけじゃないところでね。トップになったからわかることもあるし。

――退団後もさまざまな作品で活躍されているおふたりですが、今後はどんなことに挑戦していきたいですか? 安蘭さんは来年デビュー35周年を迎えられます。

安蘭:まだ計画しているところですが、何かやりたいなと思っています。

あとは、コメディーをあまりやったことがないから、コメディーをやりたいってずっと思ってるんです。いつも深刻な役ばっかりなんですよね。ほら、私けっこうコメディエンヌじゃん?

瀬奈:(笑)。

逆に私はコメディーばっかりなんですよね。来年は『ブラッド・ブラザーズ』のような社会派の作品に出させていただけるので頑張りたいと思います。

安蘭:麻子はコメディーが上手いから。

瀬奈:生き生きしちゃうんです(笑)。でも、『ブラッド・ブラザーズ』はコメディーにしないので大丈夫です。

安蘭:お願いね(笑)。

瀬奈:アフタートークにも私たちを出さないほうがいいと思います(笑)。

――最後に、本作を楽しみにされている皆さんにメッセージをお願いします。

瀬奈:憧れの安蘭けいさんとご一緒できるこの機会、この年になってご一緒できることがすごくうれしいです。どの作品に出ても年長になってきていますが、今回は先輩とご一緒できるのでしっかりしなくてもいいかなって思っています(笑)。舞台では母親としてしっかり戦えるように頑張りたいと思いますので、ぜひ楽しみにしていただきたいです。

安蘭:麻子と芝居するのは初めてでとても楽しみです。「麻子はどんな芝居をするんだろう」「笑わずにできるかな?」そんな緊張感もありつつ(笑)、誰からも愛されているから何度も再演されている作品ですし、皆さんの期待に応えられるよう、そして良い意味で期待を裏切れたらと思っています。演出の日澤雄介さんとご一緒するのは3回目ですが、どんなふうにこの作品を調理されるんだろうとすごく楽しみなので、そこにも期待していただけたらうれしいです。

(取材・文:田中ハルマ 写真:米玉利朋子[G.P.FLAG inc])

ミュージカル『ブラッド・ブラザーズ』は、2026年3月9日~4月2日東京・シアタークリエ、2026年4月大阪・サンケイホールブリーゼにて上演。

元記事で読む
の記事をもっとみる