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芦田愛菜、『果てしなきスカーレット』復讐に囚われるヒロインに体当たり「魂を吹き込むような強い気持ちで演じた」

  • 2025.11.29
芦田愛菜 クランクイン! 写真:高野広美 width=
芦田愛菜 クランクイン! 写真:高野広美

日本のみならず、世界中の観客を魅了し続けているアニメーション監督・細田守による最新作『果てしなきスカーレット』で、主人公のスカーレット役に抜てきされた芦田愛菜。“復讐者”という、細田作品の中でもかつてないほど過酷な運命を背負った主人公に命を吹き込み、圧巻の熱演を見せている。悲しみや憎しみ、葛藤を経て、未来へと向かっていくスカーレットは、「体当たりじゃないとできないようなシーンばかり」と明かした芦田。「負の感情は、暗く輝くもの。原動力になることもある」とスカーレットに心を寄せながら、壮絶シーンに向き合った収録秘話や、本作の魅力を語った。

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◆喜びと不安… “復讐者”として細田作品に初参加

「人は何のために生きるのかを問う、骨太な力強い映画を目指したい。今、この大きなテーマを、観客と一緒に考えたい」という細田監督の想いから始まった本作は、中世の王女・スカーレットが、宿敵に復讐を果たそうとする物語。『時をかける少女』、『サマーウォーズ』、『おおかみこどもの雨と雪』、『バケモノの子』、『未来のミライ』、『竜とそばかすの姫』などさまざまなテーマで観客の心を掴んできた細田監督の最新作だ。芦田も「幼い頃から細田監督の作品を拝見させていただいていた」そうで、「本当にうれしかったです」と細田作品への初参戦への思いを語る。

喜びもあったが、同時に不安もあったと告白する。「『生きる』というテーマも壮大ですし、細田監督が込められているメッセージをうまく表現できるだろうかという不安もありました。スカーレットは生きることや死ぬこと、そして愛など、心の中にいろいろなものを抱えて突き進んでいくキャラクター。どう演じたらいいかと悩んだり、スカーレットについて思いを馳せる時間もかなり長いものになりました」とじっくりとキャラクターに向き合った。

アフレコ当時、芦田はスカーレットと同じ19歳。細田監督からは「現代の19歳と、中世を生きる王女としての19歳には違いがあると思う」という話があったとのこと。芦田は、「スカーレットの王女としての自覚や覚悟、背負っているものを考えるために、ジャンヌ・ダルクやエリザベス1世について書かれた書籍を読んだりしました。そしてスカーレットの根底には、19歳としての弱さや脆さ、女性らしさもあります。そのバランスをどのように見せていくかという部分もとても難しかったです」とスカーレットを多角的に捉えながら、役作りを深めたという。

◆岡田将生に感謝「優しさに包まれた」


父を殺して王位を奪った叔父・クローディアスへの復讐を誓いながらも、それに失敗したスカーレットは死者の国を彷徨いつつ、改めて復讐を決意。狂気の世界とも言える場所で旅を続けながら、自らの心と対峙していく彼女の辿る道のりは、極めて壮絶なものだ。絶叫や号泣など激しい感情表現を要する役どころとなったが、アフレコではどのような取り組みがあったのだろうか。

芦田は、「映画の冒頭で、スカーレットが水を飲んでもどしてしまうシーンがあります。その場面ではスカーレットが生きている世界の厳しさを実感しながら、普段はとても出さないような声を発して。『スカーレットはこういうところで生きているんだ』と彼女に近づけたような瞬間がありました」と回顧。「どこか吹っ切れたというか、そこからは、魂を吹き込むような強い気持ちで演じさせていただきました」と清々しい表情を見せる。

「例えば“叫び”という表現においても、悔しい叫び、悲しい叫び、自分を奮い立たせるような叫びもあって。そういった苦しみの中で心がほぐれていく変化を表現することも、私の中で挑戦でした」とあらゆる作品に身を投じてきた芦田にとってもたくさんの新たな経験を果たす役となり、「彼女の苦しみや悩みというのは、家で思いを馳せているだけでは辿り着けないような部分もありましたが、思えばスカーレットも体当たりで自分を切り拓いていこうとしていて。私も体当たりでお芝居をすることで、スカーレットに近づけたような気がしています。そういった感覚もとても新鮮でした」と混ざり合うようにして、スカーレットを演じ切った。

アフレコに臨む中で心強い存在となったのが、スカーレットと共に旅をする現代の日本人看護師である聖を演じた、岡田将生だ。

「岡田さん自身、ものすごく物腰が柔らかくて、優しく、本当に聖のような方」と印象を吐露した芦田は、「傷ついたスカーレットを、聖が手当てするシーンがあります。その聖の声には、スカーレットのことを心から心配している優しさがにじんでいて。スカーレットはそれを最初は突っぱねてしまうんですが、岡田さんと一緒にお芝居をさせていただいたことで、少しずつその優しさに包まれていくスカーレットの気持ちがよくわかりました」と感謝。「スカーレットと聖は両極にいるような存在ですが、聖がいたことで、その真逆にいるスカーレットはどのような感じなのだろう?と想像することもできました」と劇中同様、影響し合いながら歩むことができたと話す。

◆『果てしなきスカーレット』は愛と努力の結晶


細田監督とも、たくさんのコミュニケーションを重ねた。芦田は「アフレコブースって防音の部屋で、何となく寂しい気持ちになったりするんですが、細田監督はいつもブースの中に足を運んでくださって。対面でお話しながら進めていけたので、すごく安心しました」とにっこり。

本作で細田監督は、先に音声を収録し、それに合わせて後から映像を制作・撮影する“プレスコ”を初めて採用。そののちにアフレコも行う、ハイブリッド形式で収録が行われた。プレスコによって「自由にお芝居させていただけた部分もあって、のびのびとスカーレットを演じさせていただきました」と語る芦田だが、一方でアニメーターたちも「この芝居ならば、もっとこうしたい」と役者陣の芝居に刺激を受けながら、映像制作に取り組んだという。

芦田は「二人三脚でやらせていただいた感覚がある」と力を込めながら、「本作の映像や音楽が、どのように作られているのかという様子を見させていただく機会があって。ワンカット、ワンカットにものすごくたくさんの方のこだわりや思い入れが詰まっているんだと、改めて実感しました。皆さんの努力の結晶としてすばらしい映像や音楽ができあがっているんだと思うと、また特別な感動がありました。皆さんの愛が詰まって、出来上がった作品。私も愛や魂を吹き込んだつもりですので、その一部になれていたらうれしいです」と製作陣に最敬礼。

細田監督は本作で新たなアニメーション表現を追求したと明言しているが、芦田がとりわけ驚いたシーンは? あらゆる場面で映像美に感動を覚えたと語りつつ、「死者の国における、海の表現もとても印象的です。穏やかではなく、荒々しい海は、スカーレットの心のざわめきや、世界の厳しさを伝えているようでした。また血の表現も、血が流れるということは、言い換えれば人が生きているということ。誰もが血の通った人間で、心には血の通った情熱がある。本作の血には、そういったメタファーも感じられます」と体感してほしい映像ばかりだとオススメする。

スカーレットとして生きた日々を通して、「復讐という、ネガティブな感情から始まる物語。負の感情は誰しもが少しは持ってしまうもので、ある意味では自分の原動力になったりする感情だとも思います。すごく強くて、暗く輝くような感情」だと改めて再確認したという芦田。「そこから愛を知ったスカーレットが、未来をどのようなものとして捉えられるようになるのか。皆さんの心にも、何か残るものがあったらとてもうれしいです」と願いを込めていた。(取材・文:成田おり枝 写真:高野広美)

映画『果てしなきスカーレット』は公開中。

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