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文化薫る大阪・上本町「錢屋カフヱー」硬めのプリンと自家焙煎の珈琲と&上食研公開サロン【上食研・Wあさこのおいしい社会科見学vol.11】

  • 2025.11.29

お料理教室&上方食文化研究會(上研)を通じて上方の家庭の味を伝える日本料理家・吉田麻子先生と、奈良在住の編集者・ふなつあさこの“Wあさこ”がお届けする、上方(関西)の食にまつわる大人の社会科見学。

今回は、古代から現代に至るまでずっと大阪のアーバンエリア(大阪の多くのエリアは海底だったので、レアケースです!)上本町(うえほんまち)にある錢屋カフヱーで、美味しいプリンと珈琲をいただきながら上方の食文化を学んできました。

さらに11月1日に系列の「うえほんまち錢屋ホール」で上方の人気落語家・桂吉坊(きちぼう)さんを招いて開催された、上方食文化研究會の第3回公開サロンの模様もレポートします。

創業115年の老舗が営むカフェで“最高の普通”を味わう

「あさこちゃん。上本町にある錢屋さんっていろいろやってはんねん。カフェも素敵やからご一緒しましょ!」と、錢屋カフヱーに連れて行っていただきました。

麻子先生は「やっぱり大阪で喫茶店ゆうたらコレやね」と、ミックスフルーツジュースと錢屋カフヱー10周年を記念して定番化されたというコーヒープリンを、私はお店の看板メニューであるプリンと、自家焙煎の珈琲のなかから錢屋さんの創業110周年記念でつくられたブレンドをチョイス。

上本町は、歴史ある下町のあたたかな賑やかさと、由緒ある学校の多い文化的な雰囲気が混じり合うエリア。東京でどこというとたとえづらいですが、あえていうなら文京区かな(個人の感想です)。この地で長く商いをしてきたという錢屋さんのカフェは、リノベーションしたヴィンテージビルの1Fにあります。

しつらいもヴィンテージ調。取材に訪れたタイミングはたまたまお客さまがいはりませんでしたが、時間帯によっては並ぶほど混雑する人気カフェです。

お菓子や缶詰などのフード類や、お肌にも自然にもやさしい洗剤、はたまたお酢や食器など錢屋さんが掲げる“最高の普通を”というコンセプトを踏まえたセレクトアイテムも取り扱っています。

奈良時代から大阪の都市部・大阪上本町の食文化

「このへんは、『古事記』『日本書紀』にも地名が登場する、歴史ある地域です。大阪は、今は陸になってるところもほとんど海やったんです。奈良時代に難波宮(なにわのみや)が置かれたあたりが半島の先のようになっていて、その少し陸側が、現在の上本町。うちの店のすぐ横を、古代のメインストリート・朱雀大路(すざくおおじ)が通ってたようです」。

文豪・谷崎潤一郎の『細雪(ささめゆき)』は、船場の商家を舞台に昭和10年代の関西の上流階級を描いた小説ですが、主人公の四姉妹の本家がある場所として設定されているのも、上本町です。

写真の部屋は、ギャラリーやイベントスペースとしてフリーに使用されているのだそう。

「ここでもさまざまな催しをしていますが、このビルの4Fにある“錢屋サロン”でも、“文化”を幅広く捉えて、食、エクササイズ、ハンドメイドなどジャンルを問わずさまざまな“錢屋塾”を開催しています」と正木さん。上本町エリアの歴史をふまえながら、今を生きる私たちが心豊かに過ごすための幸せな灯のようなコミュニティを目指しているといいます。

写真提供:錢屋本舗本館

「僕は生まれも育ちも上六(うえろく。上本町界隈の通称)ですが、本家は明石藩の武士やったようで、大阪に出てきたのは曽祖父の代からです。お煎餅屋さんで奉公に出て、明治43年(1910)に独立して当時の記録で“南区高津三番町”に店を持ったそうです。その後、事業を拡大して、ビスケットなどの焼き菓子工場を構えた頃には“江戸堀将軍”なんて新聞に書かれたりしていたようですよ」

写真提供:錢屋本舗本館

「海の玄関口として栄えた大阪は、戦の舞台になったり、埋め立てが行われたりしたこともあって、スクラップ&ビルドが繰り返されてきた街やと思います。このあたりは昔、桃の名所やったらしくて桃丘(ももがおか)と呼ばれていたそうやけど、地名には残ってないんです。神武東征(※)ゆかりの“いくたまさん”(生國魂神社・いくくにたまじんじゃ)は、元々今の大阪城のあたりにあり、築城の際に太閤さんによって、うちの近くへと移されています。せやし、古いものをそのまま残すというよりは、伝統や歴史を大切にしながら、柔軟に形を変えながら発展してきたのが大阪なんやないかと思います」

写真は、江戸堀にお店を移した大正時代の初めごろに撮られたもののようです。中央が創業者の正木繫吉さん。創業以来、創業日の11月13日は毎年集合写真を撮影しているそう。

※『古事記』『日本書紀』に神代(神話の時代)に記述されている、日向(ひむか。現在の宮崎県)の神倭伊波礼毘古命(かんやまといわれびこのみこと。別称がいくつかります)が奈良盆地周辺を平定して初代天皇である神武天皇として即位するエピソード。難波津から上陸した際、日本列島の神霊とされる生島神(いくしまのかみ)・足島神(たるしまのかみ)を祭神として祀ったのが、生國魂神社の創建とされているそうです。

浪花百景「増井浮瀬夜の雪」芳瀧/大阪府立図書館

「お茶屋さんが建ち並んだ江戸時代には、いい料理を出す仕出し屋さんもあったでしょうし、『摂津名所図会』や錦絵に登場する高級料亭「浮瀬(うかむせ)亭」はこのすぐ近くにありました。海に近い大阪は、今日入った魚をお客さんの好みに合わせて料理する、対面オーダーが合っていたのか、割烹文化が広がりました」

プリンを食べながら割烹のお話を伺っているうちに、だしが恋しくなりました。

“食”にゆかりのある噺(はなし)に笑う 上方食文化研究會・第3回公開サロン

そんな上本町界隈、実は上方落語の発祥の地なのだそう。浄瑠璃の井原西鶴や近松門左衛門のお墓があったり、歌舞伎『夏祭浪花鑑』の舞台として知られる大阪 浪速高津宮(高津神社)も遠からぬエリアにあります。そんな上方芸能にゆかりある錢屋さんのホールで、11月1日、上方食文化研究會の第3回公開サロンが開催されました。

お招きしたのは、さまざまな古典芸能に精通する人気落語家、桂吉坊さん。“食”にゆかりのある噺(はなし)として、まずは「まんじゅう怖い」をご披露いただきました。

「まんじゅうが怖い」という人の家にそれぞれにまんじゅうを買った友だちが押しかけて、という有名な噺ですね。怖がってますね〜!

トークショーでは、古典落語のなかからうかがえる上方の食文化や吉坊さんが住み込みの内弟子(関係性としては、孫弟子だそうですが)をしていた桂米朝(べいちょう)師匠の食卓事情などのお話を伺いました。

江戸落語で有名な「時そば」が上方では「時うどん」になるなんて知らなかった〜!

二席目は「河豚(ふぐ)鍋」。毒があるけど、美味しいふぐを巡ってのやり取りがおかしい噺でした。ふぐって……いつ食べただろう? 鍋でいただいたことあったかしら。吉坊さんがあまりにおいしそうにハフハフお鍋を食べる(ように見えてるだけで、もちろん食べてないですよ!)ものだから、アツアツのお鍋をいただきたくなりました。

打ち上げには麻子先生の手料理が並び、新刊の『炊込み、混ぜ込み だしごはん』(文化出版局)を先生から吉坊さんにプレゼント。

ちなみに、お教室には時々通っていますが、私は戦力外です(笑)。その代わり、音響係をしていたんですよ〜〜〜! 緊張したぁ!

この記事を書いた人

編集者 ふなつあさこ

ふなつあさこ

生まれも育ちも東京ながら、幼少の頃より関西(とくに奈良)に憧れ、奈良女子大学に進学。卒業後、宝島社にて編集職に就き『LOVE! 京都』はじめ関西ブランドのムックなどを手がける。2022年、結婚を機に奈良へ“Nターン”。現在はフリーランスの編集者として奈良と東京を行き来しながら働きつつ、ほんのり梵妻業もこなす日々。

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