「お前の代わりはいる」と上司からのリストラ宣告。私が退職日にある事実を告げると顔色が一変【短編小説】

本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。

私の職場は、成果主義を履き違えたようなギスギスした部署でした。特に直属の上司は、部下のミスは激しく責め立て、手柄は全て自分のものにする典型的なタイプ。

それでも私は、クライアントとの信頼関係を第一に考え、泥臭い仕事をこつこつと続けてきました。

そんなある日、突然会議室に呼び出されたのです。

「悪いけど、来月で辞めてもらうよ」

上司はコーヒーを啜りながら、まるで明日の天気の話しでもするかのように告げました。
理由は「人員整理」。納得がいかず私が反論しようとすると、彼は鼻で笑ってこう言ったのです。

「勘違いするなよ。お前の代わりはいるんだ」

その瞬間、私の中で何かがプツンと切れました。
ですが、私は怒鳴り返すことはしませんでした。
代わりに、ある重大な「事実」を退職日まで伏せておくことに決めたのです。

引継ぎ期間中、上司は私を完全に空気扱いし、周囲には「無能な部下を整理した」と吹聴していました。
同僚たちは心配してくれましたが、私は「大丈夫」と微笑むだけ。

そして迎えた退職日の夕方。

荷物をまとめた私の元へ、上司が勝ち誇った顔で近づいてきました。

「せいぜい次の職場でも頑張れよ」

私は満面の笑みで答えました。

「大変お世話になりました。あ、最後にお伝えしておきますね」

私は一枚の書類のコピーを渡しました。

「来期から始まる会社始まって以来の超大型プロジェクトですが、契約条項をご確認されましたか？あれ、先方の社長のご意向で『私がプロジェクトリーダーであること』が契約継続の絶対条件なんです」

上司の動きが止まりました。

「は…？何を言って…」

「つまり、私が辞める今日をもって、あの契約は白紙になります。先ほど先方の社長にも退職のご挨拶を済ませ、『それなら契約は破棄だ』と正式にご連絡を頂いたところです」

上司の顔色は、みるみるうちに土気色へと変わっていきました。

「ま、待て！嘘だろう！？」

震える手でスマホを取り出す上司。

「私の代わりはいるんですよね？後はよろしくお願いします」

私は呆然とする上司と、静まり返ったオフィスに深々とお辞儀をし、軽やかな足取りで会社を後にしました。

私の代わりはいても、長年築いた「信頼」の代わりは、そう簡単には見つからないものなのです。

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