「これだからゆとりは」と新人に説教するパワハラ上司。後日、退職代行からの電話で顔面蒼白に【短編小説】

本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。

私の職場には、昭和の価値観をそのまま引きずってきたような、困った上司がいます。彼は「指導」という名の元に、理不尽な説教を繰り返すのが日課でした。

自分のやり方が絶対で、少しでも違うことをすれば容赦なく怒鳴り散らすのです。

ある日の午後、静まり返ったオフィスに上司の怒鳴り声が響き渡りました。ターゲットになったのは、入社したばかりのおとなしい新人くんです。

「おい、なんだこのメールの書き方は！誰に教わった！」

それは、些細な言葉遣いの指摘でした。正直、そこまで怒ること？と誰もが思っていましたが、ターゲットが自分になるのを恐れて誰も口を挟めません。

新人くんが小さく「申し訳ありません」と謝ると、上司はさらにヒートアップしました。机をバンと叩き、フロア中に聞こえるような大声で吐き捨てたのです。

「これだからゆとりはダメなんだ！」

その言葉に、フロアの空気が一瞬で凍りつきました。また始まった、と私たちは視線を合わせます。

「最近の若いのは」が口癖の彼にとって、新人は格好のストレス発散相手でした。新人くんは唇を噛み締め、何も言い返さずにただ立ち尽くしていました。

その姿があまりに不憫で、私は後でこっそり「気にしないでね」と缶コーヒーを差し入れたほどです。

しかし、事態が急変したのはその数日後のことでした。

新人くんが出社してこないのです。上司は「これだから最近の奴は根性がない、社会人を舐めてる」と朝から高笑いしていました。

ところが、一本の外線電話を取った瞬間、上司の表情が一変したのです。

「は……？退職、代行……？」

受話器を握る上司の手が震え始めました。電話口の相手は事務的に、そして冷徹に要件を伝えているようでした。即日退職の意思表示、有給の完全消化、そして今後一切の本人への直接接触禁止。

さらに決定打となったのは、これまでの暴言やパワハラ発言を記録した「証拠データ」の存在を突きつけられたことでした。

「いや、あれは愛の鞭というか、指導の一環で……」

しどろもどろに言い訳をする上司の顔は、みるみるうちに血の気が引いていき、まさに顔面蒼白。額からは冷や汗が流れ落ちています。

新人くんは、ただ黙って耐えていたわけではありませんでした。冷静に証拠を集め、自分を守るために最も効果的な方法で反撃に出たのです。

青ざめて椅子にへたり込み、震える手でハンカチを取り出す上司を見ながら、私は心の中で「ナイス、新人くん！」と叫ばずにはいられませんでした。

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