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映画『ナイトフラワー』森田望智×佐久間大介「本物を求めて」さまざまな愛の形をとらえ、伝える表現者たち【ロングインタビュー】

  • 2025.11.27

内田英治が脚本・監督を務めた映画『ナイトフラワー』は、かの『ミッドナイトスワン』に続く「真夜中」シリーズとなっている。主人公は、夫が作った借金を肩代わりしながら二人の子供を育てる夏希(北川景子)。昼も夜も必死に働く夏希だが、生活はギリギリで、やがてドラッグディーラーの仕事に手を染めるようになる。

そんな夏希のボディーガード役を買って出るのが、森田望智演じる多摩恵だ。多摩恵は格闘家としての成功を目指しながら、生活とジム運営のために夜は風俗嬢として働いている。そして、佐久間大介は風俗店に勤務しながら、幼馴染の多摩恵を一途に思い続ける海を演じている。

登場人物たちそれぞれの心情を表現したポスター画には、「初めて知った愛」(多摩恵)、「閉じ込めた愛」(海)と、それぞれの愛の形が示されている。多摩恵は、夏希や子供たちと過ごすうちに愛を感じていき、海は夜の世界から抜けられずはまっていく多摩恵を必死に守ろうと、想いを寄せ続ける愛が表現されている。

彼らの、ものがなしく、それでいて何にも代えがたい絆を受け取る本作。森田&佐久間ペアにインタビューをすると、俳優として互いを敬愛する姿が浮かび上がった。

深い絆を感じる、多摩恵と海による数々のシーンでした。初共演でしたが、お二人で演技プランや役の上での距離感などをお話されたんでしょうか?

佐久間:話し合いはあまりしなかった……ですよね?

森田:なかったと思います。

佐久間:一番最初に撮影するときに、僕は「どういう多摩恵が来るのかなぁ?」と思っていたんです。いざご一緒して「なるほどね!こうなるんだ!」と思いました。受けて出てくるものでの(自分の)芝居になったかなぁと思っています。

森田:えっ。そうです……か?

佐久間:そうです(笑)。僕の予想していた多摩恵とは少し違ったというか、「こっちにくるのね!」と思ったんです。

台本上では、佐久間さんは森田さんによるどのような多摩恵像を想像していたんですか?

佐久間:どちらかというと、もっとクールな感じの多摩恵かと思っていました。でも、森田さんの多摩恵は結構やさぐれ感もあったから、「はいはい!はいはい!めっちゃいいな!!」となったんです。僕が脚本を読んで想像した多摩恵のほうが、もっと隙がなかったので、どうやったら海との距離が近くなるんだろうと考えていたんです。森田さんが演じる多摩恵は、愛せる余地がすごくあったのでより親近感が湧いたんですよね。

森田:はじめて聞きました! そうだったんですね!

佐久間:そうだったの。それがまたいいなって。

逆に、森田さんの想像では佐久間さんの海はどうなると思っていましたか?

森田:想像と大きく違うことはなかったんですが、「多摩恵への想いが、ここまでまっすぐにストレートに届くものなんだ」と思いました。それは脚本を読んでいてもわからなかったところでした。そんな海を置いてまで夏希に行くことの事実は、すごく大きいなことですよね。多摩恵は、海のこともすごく大事な存在なので。そのまっすぐな感じ、佇まいみたいなものは、現場に立ってみてすごく影響されました。

私、海の佇まいが佐久間さんと遠いかと言われたら、そうではなく延長線上にあるような感じがしていたんです。普段の佐久間さんから感じるものとつながっていたので、どこからが役で、どこからが役じゃないのかという線引きが曖昧だったことに、すごく助けられました。私自身もお芝居の際に「役になるぞ」というより、自然とそうさせてもらっていました。夏希と対峙する多摩恵よりも、気が柔らかくなれた感じがしました。心を許していて信頼している分、あたりが強くなっちゃったりする多摩恵なんですけどね(笑)。

佐久間:そうだよね!

撮影していて、特に印象的だったシーンはどこでしたか?

佐久間:僕は、二人でラーメンを食べるシーンがすごく好きです。あのシーンは幼馴染ならではの空気感というものを、そこまで意識せずにすっと入れた感じがありました。やっていて海の気持ちが自分自身に染みてきて。「夢叶って、すごいじゃん!」と多摩恵に話しているのがすごくうれしかったし、楽しかったんですよね。「あのシーン好きだな~」と試写で観たときもまた思いました。

森田:私も好きです。多摩恵はちょっとツンデレなので。

佐久間:ねー(笑)!

森田:顔にはそんなに出さないんですけど、「きっと海ならこう言ってくれるだろう」みたいなものは、もちろんありました。ラーメン屋さんでは、海自身のお話をするじゃないですか。バックグラウンドとして回想シーンがあるわけではないのに、二人には共通認識として、苦しい過去や見せたくないものを見せ合った時間があったんだろうなと思わせてくれる場面でもあるんですよね。お芝居をしていて、海との絆みたいなものをすごく感じたシーンでした。

挙げればキリがないんですが、多摩恵の試合を海が見るシーンも忘れがたいです。

佐久間:実は、僕、撮影の場所にはいなかったので、実際に戦っているシーンは見られていないんです。演じるときには「こういう動きになる」と監督から聞いてはいて、その前に多摩恵が戦っているシーンも見せてもらっていたので、「こういう頑張りかな」と想像しながら演じていました。多摩恵が有利に立ったらめっちゃうれしいし、ヤバそうだったら「耐えろ!」と言っちゃうだろうな、と。

多摩恵に対しての思いを常に考えてやっていたのもあり、だからこそ試写で観させてもらったとき、戦っている多摩恵の姿にすごいグッときちゃって……。観ているときも自分の中に海の気持ちが残っていたから、めちゃめちゃ泣きました。終わった後の一言が、特にきちゃって。あれは良かったなあ……。海にとっても、ある覚悟を決めるきっかけになった姿だったと思いました。

森田:多摩恵としては、どうしても夏希のほうに(想いが)いってしまっているように見えていると思いますが、一緒にいたり、ずっとそばにいることだけが愛ではないと思っています。海とずっと一緒にいるわけではないけれど、今までの絆が消えるわけではまったくなくて。海は、むしろいなくても感じられるぐらいの関係性だったので、その絆のあり方みたいなものは、また夏希とは全然違うんですよね。だから多摩恵を演じている感覚としては愛があったと感じています。それはまた違う形の愛だと思っています。

セリフを発する際に、特に考えたりしたところなどはありますか?

佐久間:海的に考えたというか、よりにじみ出てきて本当に心から出た言葉だと感じたのは、駐車場の屋上でのシーンです。多摩恵が本当に危ないから引き止めたくて、というまっすぐな気持ちでのセリフでした。なんか必死すぎて泣けてきちゃう、みたいな感じでした。

森田:本当に打たれました。多摩恵じゃなくて、私だったら号泣です。

佐久間:ははは(笑)。

森田:感動しました。内田監督が佐久間さんに対して「ここ、もうちょっと」と声をかけられたあと、次のテイクで一気に空気が変わったのを感じたんです。スイッチの入り方が段違いで、ギアの変わった瞬間みたいなものを感じました。多摩恵として、海との非常に大事なシーンでもあるので、今でも脳裏に焼き付いています。

内田監督とは、森田さんは『全裸監督』シリーズで、佐久間さんは『マッチング』(※待機作『スペシャルズ』)でご一緒されました。完成披露試写会の舞台挨拶で、内田監督は「皆さんとの「第二章」として、まだ見ぬ良い部分を出したいと思っていた」とお話されていましたが、そのお言葉通りになりましたか?

森田:今回いただいた多摩恵という役が、私自身とはものすごくかけ離れていたんです。だから最初は自分で演じることが想像できませんでした。リングに立って戦っている姿なんて私からすると、到底結びつかなったんです。きっと「はじめまして」の監督からは、絶対にいただけない役だろうなと思っていました。

佐久間:確かに……!

森田:まだ私がやったことない役だけれども、内田さんはきっと想像されているんだろうなと思ったんですね。私自身は信じられないけれど、内田さんが言うなら、もしかしたらまだ見ぬ自分に出会えるのかなとすごく思えたんです。……で、内田さんは私のことをなぜか運動神経がいいと勘違いをされていて。

佐久間:勘違いか(笑)。

森田:そうなんです! 少しの練習期間でいけると思われていたんですけど、そこは必死に「もうちょっと練習させてください!」と言ったぐらい、本当に苦労はしました。でも同時に、身体的なアプローチが結果、役として立ったときの気持ちに影響することを、とても実感しました。これまで私は内面から役を作ることが多かったんですけど、今回の現場で外的に作っていく役作りは、すごく信じられるんだなと。ないものをあるようにする、本物を求めてくださる監督なので、嘘がでてしまった瞬間にカットされてしまうのも分かっていたので、いかに嘘をつかずにちゃんとその役を生きられるのか、その大事さみたいなものは改めて内田さんに教えていただいたように思います。

フィジカルがメンタルごと多摩恵という人物を作り上げていく手助けになった、という。

森田:はい、そう感じました。格闘技をしていると、少し猫背じゃないとダメなんですよ。

佐久間:肩、入りますもんね。

森田:そうなんです。練習を続けているうちに、普段の姿勢まで少し猫背気味になってしまうこともあって、こうやって繋がっていくんだなと感じました。やっぱり、積み重ねてきた時間って画にも自然と表れるといいますか、かけた時間がちゃんと映ってくるものなんだな、と改めて思いました。

佐久間:スタッフさんに聞いたんですけど、森田さんは増やしたと言っていたんですけど、「用意された期間が足りない」と言って、さらに自主練でもまた増やしたそうなんです。だからもともと用意されていた練習期間の、もう3倍くらいになっているって。

森田:だって……みんな「大丈夫だよ」、「できるよ」と言ってくれるけど、できない(笑)!

佐久間:そうだよね、大会に出ている選手にならなきゃいけないと考えたら、役者が一番プレッシャーを考えるやつですよね(苦笑)。

森田:そうなんです! 私次第で話が変わってしまうのでは、というプレッシャーもありました。

佐久間さんも今回は新たな境地でしたよね。『マッチング』の吐夢も衝撃でしたが、全然違う役で。

佐久間:そうなんですよね。監督が言ってくれていたのは、前作がちょっと変わった役ではあったので、そうじゃなく「よりナチュラルな普通の男の子を演じてもらいたかった」と。今回は「いろいろな人がさっくんの演技を観て“こういう芝居もできるんだ”と絶対わかると思うから、それが俺は楽しみなんだよね」と言ってくれていたんです。それがすごいうれしくて。「普通の子って何だろう」とすごく考えながらやりました。

森田:本当に自然に海としてそこにいらっしゃいました。 前作の『マッチング』も拝見して印象的だったんですが 、今回の海としての佇まいもすごく素敵でした。 多摩恵や海は、影の部分を抱えて生きている人間なので、どうしても陰の部分が必要ですが、佐久間さんご自身の持つ温かさが、その陰の中から少しにじみ出ているように感じました。だからこそ、多摩恵は海に心を許しているのだと思いますし、その信頼感は、佐久間さんの人柄から生まれているように思いました。

佐久間:えー、うれしい!

ご一緒して、お互い表現者として尊敬した点はどのようなことになりましたか?

森田:佐久間さんの人柄の良さが、現場の空気を変えるんです。そこが本当にすごいです。

佐久間:へ~!

森田:やさしさや心遣いはもちろんですが、すごく周りをよく見ていらっしゃる方だなと感じています。現場にいるみんなの気持ちが自然と良い方向へ向くような、そんな雰囲気を作ってくださるんです。作品自体は重さのある内容ですが、現場ではみんなのポテンシャルが最大限発揮できるような空気づくりをしていただきました。それが意識してのことなのか、ご本人の自然な魅力なのかはわかりませんが、佐久間さんの醸し出す空気のおかげで、みんながリラックスして撮影に臨むことができ、本当にすごい方だと思いました。私自身も今回は大変な役どころで、夜遅くまでの撮影が続いたときには、佐久間さんが「メロンパン買ってきたよ〜!」って。

佐久間:あったね~(笑)。

森田:そんなふうに、さりげなくみんなを盛り上げてくださって。「食べたら元気になった!」みたいなエピソードもたくさんあるんです。役としても、その温かさが今回すごく生きていると思いますし、作品作りの現場としても、とても大きな力になっていると感じました。

佐久間さんは差し入れ方面でも、気遣っていらしたんですね。

森田:あと、マッサージも差し入れてくださったんです!

佐久間:森田さんが一番大変な試合のシーンの日に僕は行けなかったので、せめて何かできないかなと。Snow Manがよくお世話になっているトレーナーさんがいるんですけど、その方に連絡して行ってもらいました(笑)。

森田:最初すごく驚きました!「えっ……どなたですか?」って(笑)。

佐久間:差し入れのマッサージです(笑)。

森田:もうすごい、本当に助けられました。連日の格闘シーンの撮影が続く中だったのでとても励みになりました。

佐久間:うれしいです。森田さんの尊敬するところは、やっぱり役者としての表現力に尽きます。“役を演じる”という言葉よりも、“役が生きている”というのを、よりナチュラルにされる方だとすごく思っていて。現場でも自然と“いる”んですよね。スイッチ切り替え型が北川(景子)さんなんですけど、気づいたらそこにいてくれるのが多摩恵の森田さんで。真逆の人を演じているからこそ、より感じやすかったです。その切り替えが見えないぐらい自然と入るから、「この人……すっごいな」と一緒に芝居をしながら思っていました。「この人マジですごい、役者だなぁ……」というような話を直接すると、「そんなことないですよ~~」みたいな感じで(笑)。

森田:(笑)。

やわらかいしゃべり方、普段の森田さんですね!

佐久間:そう、全然違うんですよ! 生粋なんだな、血が濃い役者だなと思って尊敬しています。

森田:ありがたいです。

最後に、様々な思いを受け取る『ナイトフラワー』という作品で、ご自身たちがどのようなことを感じたのか、ぜひお話ください。

森田:キャラクターたちが誰かを想い、自分だけではなくその人のために生きるという力強さを感じられる作品です。決して生活が豊かではない中で、明日があるかどうかもわからない覚悟を持ちながら必死に日々を過ごしている。その生き様から、みんなが死ぬ気で生きているという切実さが伝わる作品だと思っています。 そうした人間の泥臭さやがむしゃらさ、そして「この人のために生きられる」と思えたときに生まれる深い愛情や、人が本来持っている強さのようなものを受け取っていただけたらうれしいです。

佐久間:本当に愛の作品だなというのが、一番感じるところです。愛にはいろいろな形があって、お母さんからの子供に対する愛、絆みたいな愛、片思いの愛、どうにかしてあげたいという愛…。それに、それを失ったときの感情も得られる作品だとも思います。誰に共感するかで捉え方も全然変わると思いますので、それぞれの受け取り方を観終わった後に話し合ってくれたら、よりうれしいです。全力で楽しんでもらいたいです。

(取材、文:赤山恭子)

映画『ナイトフラワー』は、2025年11月28日(金)全国公開。

出演:北川景子 森田望智 佐久間大介(Snow Man) 渋谷龍太 / 渋川清彦 池内博之 / 田中麗奈 光石研
原案・脚本・監督:内田英治
配給:松竹
公式サイト:https://movies.shochiku.co.jp/nightflower
(c)2025「ナイトフラワー」製作委員会

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