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歩きたいけれど寒い!そんな日こそ“家でちょこっと足トレ”【足連載/第3歩】

  • 2025.11.27

歩きたいけれど寒い!そんな日こそ“家でちょこっと足トレ”【足連載/第3歩】

連載第3回は、短い秋にウォーキングしそびれた方も必見、家の中でもできる簡単な足の運動をご紹介。今日からできるこれらの運動は、歩けなくなってからでは遅い……今始めておけば転倒リスクを防いだり、認知症を遅らせたり、歩ける期間を少しでも延ばすことにつながります。歩きのプロ、健康運動指導士の黒田恵美子さんにお話を伺いました。 これまでの記事はこちら>>【連載】足が変われば、人生が変わる。~一生自分の足で歩くために

寒さも猛暑も……外を歩けない日が増える時代の新常識

「外に出ることは、体を動かすだけでなく社会とのつながりを保つ活動です」
このように歩くことの大切さを語るのは、健康運動指導士の黒田恵美子さん。
「近年、新型コロナウィルスの状況下では外に出ない生活が強いられ、多くの人の体力はだいぶん落ちてしまいました。今年も猛暑日が長く、外を歩ける期間は年々短くなっています。以前は『冬にじっとしていないで!』とお伝えしていましたが、今は夏をどう乗り切るかも大きな課題です」

黒田さんはそんな現代の事情による健康への影響を懸念しています。
「さまざまな理由により外へ出なくなると、なかでも高齢者はフレイル(加齢によって心身が衰え、健康と要介護の中間にある状態)が進み、認知機能が落ちてやがて鬱になり、体が動かなくなって食事も摂らなくなるという“負の連鎖”が起きてしまいます」

気候をはじめ、さまざまな事情により外で歩けない方のために、この冬、家の中でもできることを伺いました。
「ウォーキングができなくても、足をケアできることがあります。フェイスタオルを足指で掴んだり、足指で挟んだタオルを引っ張ったり、足でタオルを持ち上げてくしゃくしゃにしたり、足で平らに直したり。家の中でできることはたくさんあります」

さらには、靴下でのケアも欠かせません。靴下については次回詳しくご紹介しますが、冷えでお悩みの方には心強い、あたために特化した靴下もこの冬の味方です。

若くても実は老化が進む――歩行不足の深刻な現実

“歩けなくなる”ことは高齢者だけではなく、実は若い人にも深刻であることを黒田さんは指摘します。
「高齢者の介護は社会全体の問題として捉えられていますが、実は子どもたちに起きていることも深刻です。成長期に歩いていない子どもたちが、今の高齢者のように年を重ねた時に動けているか不安です。運動嫌いで体の弱った歩かない子供。実は、中身は老化しているのです。今の70~80代の方々は、若い頃によく歩いていました。今は、ほとんどの子どもが車や自転車に乗せられ移動します。感染症や安全を守ることはもちろん大切ですが、その結果、体を育てる基本である“歩き”ができないのです」

今ケアしておかないとどうなるか? 知ることがまずは第一歩。
「近年、子供の生活習慣病や子供のロコモティブシンドローム(移動機能が低下した状態で、将来的に介護が必要になるリスクが高まること)が指摘されています。実際、20歳くらいで骨密度を測ると、60代や70代の方より少ない子もいます。まだ若いため問題は表面化していませんが、この世代が50代、60代になるとどうなるのか。未来が懸念されます。だからこそ、歩くことや足そのものに意識を向けていただきたいのです」

体をケアしながら歩けるボディを作る、「ケア・ウォーキング」という考え方

歩きの指導のプロである黒田さんが代表理事を務める「ケア・ウォーキング普及会」とはどんな団体なのか伺いました。
「以前、私が内科で運動療法に携わっていた頃、生活習慣病の方などに『歩いた方がいいですよ』と勧めても『関節が痛くて歩けない』とおっしゃる方が多くいらっしゃいました。体が弱ると動けなくなり、内科的な病気の予防も改善もできない。そのことを今から30年ほど前に痛感しました」

「運動指導はとにかく動かせ、とにかく歩けとなりがちですが、筋トレやストレッチが必要な本当の理由は“歩けるボディを作る”ためです。有酸素運動である“歩き”、そして“筋トレ”“ストレッチ”。この3つの要素をすべて伝えなければ意味がないという考えに至りました。体を痛めないようにケアしながら歩く。その意味を込めて『ケア・ウォーキング』と名付け活動を始めましたが、会員は募りません。時代と共に変化し、ゆるやかに広がる“普及”の形をとっています」

「『人生の最後の日まで自分の足で歩く』。これがケア・ウォーキングの理念です。“歩く”とは自立の象徴。たとえ車椅子を使うようになっても、自分で動けるように。人生の最後の日に、自分でトイレに行って戻ってきて、そこで、さようならを言える。それが、人の自尊心を最後まで保つことにつながるのだと信じています」

腕の振りで歩きが変わる! 体を痛めない歩行のコツ

では、「良い歩き方」とは具体的にどうすればいいのでしょうか。
「ポイントは、『体を痛めないこと』と『運動効果が上がること』の2つ。まず、腕の振り方。腕は、体に対して平行に、やや後ろに振ることを意識します。手を前に振り上げると重心が後ろに残り、腰に負担がかかります。後ろに振ることで、自然と体が前へ進み、歩幅が広がって歩くスピードが上がります」

「荷物を持っている時は、信号待ちのたびに荷物を持ち替えるなどして、体の歪みを防ぐことも大切です。そして、顔を上げることが重要。姿勢も“胸を張る”のではなく、足元から整えます。無理に胸を張ると、かえって反り腰や猫背を悪化させることがあります。姿勢は、肩からではなく下から直すのが基本。まず骨盤の位置を正しくし、胸を張らずに顔を上げる。すると自然とお腹に力が入る。それが良い姿勢です」

努力は挫折とセット。だから“お得感”のある簡単な体操を

「私は生徒さんに、努力はしないでくださいとお伝えしています。努力には挫折がつきもの。失敗体験は自己評価を下げてしまいます。それより、小さな成功体験を積み重ねてほしいのです。そのために、ごく簡単な体操をお勧めしています」

「たとえば、朝起きた時に足の指を1本ずつ持って前後に動かしていき、足首を10回ずつ回す。たったこれだけでも、立ち上がった時の安定感が全く違います。『足指を触っただけで辛かった階段が楽に降りられるようになった!』と喜ばれる方もいらっしゃいます。期待以上の効果、つまり“お得感”があると、人は自然とそれを続けられます」

「ほかにも、椅子に座って膝を開いたり閉じたりする股関節の体操や、軽く膝を曲げ伸ばしする『ゆるゆる屈伸』など、テレビを見ながら1〜3分でできる動きで十分。大切なのは、これでもかというほどハードルを下げて、0やマイナスだった状態から、ほんの少しのプラスを続けることです」

魔法の言葉“こんにちは、どっこいしょ”。楽に立ち上がる重心移動のコツ

さらに、筋力が落ちた方におすすめな姿勢のコツは、その名も“こんにちは、どっこいしょ”。
「筋力が落ちてきた方には、“こんにちはどっこいしょ”という立ち上がり方をお勧めしています。多くの方は、椅子から立ち上がる時に前傾するという発想がありません。まず、脚の付け根に手を当て、“こんにちは”とお辞儀をするように上半身を前に倒します。頭が膝より前に出たら、今度は“どっこいしょ”と言いながらお尻を上げて体を起こします」

「この重心移動を覚えるだけで、今まで立ち上がれなかった方が立てるようになります。座る時も“ドスン”と座らず、この逆の動作でゆっくり座ることで、背骨の圧迫骨折を防ぎ、筋トレにもなります。年齢に関わらず、この動作を習慣にしておくと、将来必ず役に立ちます」

“歩く”を助けるためにも、足指や足首を動かすことや“ゆるゆる屈伸”、“こんにちは、どっこいしょ”は、冬だけに限らず、普段から意識して続けていきましょう。

【今日からできる足ケア習慣】
寒くて外に出たくないときは、家でできることを続けよう。

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イラスト/草野かおる

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