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理解が現実に追いつかない。弟が事故で亡くなるも、悲しんでいる暇はなかった

  • 2025.11.26
悲しみに浸る間はどこにもなかった (C)きむらかずよ/KADOKAWA
悲しみに浸る間はどこにもなかった (C)きむらかずよ/KADOKAWA

高校生の時に、16歳の弟を事故で亡くしたきむらかずよさん。その経験をありのままに描き、肉親を突然失ったある家族が再び歩き出せるようになるまでの物語をつづったのが『16歳で帰らなくなった弟』です。

お酒を飲むと財布のヒモがゆるくなる父、よその子でも平気でしかり飛ばす母、素直になれない姉、そしてヤンチャだけど誰からも好かれた弟。

そんな家族の日常を変えたのは、深夜にかかってきた警察からの電話。弟が事故に遭ったという報を受け病院へ向かうと、すでに弟は息を引き取っていて…。

今回は、本編では描かれなかったきむらさんのエピソードをご紹介します。

泣き崩れることも許されず (C)きむらかずよ/KADOKAWA
泣き崩れることも許されず (C)きむらかずよ/KADOKAWA
どうしよう… (C)きむらかずよ/KADOKAWA
どうしよう… (C)きむらかずよ/KADOKAWA
死んだら終わりよ (C)きむらかずよ/KADOKAWA
死んだら終わりよ (C)きむらかずよ/KADOKAWA
初めて母は号泣した (C)きむらかずよ/KADOKAWA
初めて母は号泣した (C)きむらかずよ/KADOKAWA

『16歳で帰らなくなった弟』の著者のきむらかずよさんに、弟さんについて、そして当時の心境についてお話をうかがいました。

——弟さんがある日突然帰らぬ人となり、現実を受け止められない日々が続いたかと思います。弟さんがいなくなったことを強く実感したのは、どのような時でしょうか。

きむらさん「それまで賑やかだった家が、シーンと静かになりました。毎日8時になると来ていた友達も来なくなり、こんなにも家の中が変わるのか…とひしひしと感じました。

でも、弟が亡くなった後も『ただいま』と帰ってくるような気配を感じたことは、一度や二度ではありません。おそらく両親も同じように感じていたと思います」

——弟さんの死はもちろんですが、同乗していた身元不明の女の子を描くのも相当辛かったことと思います。描くと決めた時はどのような心境だったのか、教えていただけますか。

「弟のことを描くのは、本人との約束でもあったので迷いはありませんでした。でも女の子は嫌ではないだろうか…と相当悩みました。

描かないことを選択する方が楽ではありましたが、自分だったらどう思うだろうと何度も自問自答し、悩みに悩んだ末に描くことを決めました。

『忘れられること』『なかったことにされること』が亡くなった人にとって一番悲しいことではないか…と思ったからです。

単なる被害者ではない、弟が女の子を乗せてしまった、という十字架を背負い、大切に大切に描きました」

かけがえのない存在だった弟さんをある日突然亡くしたきむらさん。その辛い経験から考えさせられるのは、今ある日常は決して「当たり前」ではないということ。平穏無事に暮らせる日々のありがたさに、改めて気付かされます。

著=きむらかずよ/『16歳で帰らなくなった弟 外伝』

【著者プロフィール】

きむらかずよ

イラストレーター。小学1年生の時にプレゼントされた漫画『うわさの姫子』に衝撃を受け、漫画やイラストを描くように。現在は3人の子育てをしながら、新米保育士としても奮闘中。交通事故で亡くなった弟のことを綴った「16歳で帰らなくなった弟」にてデビュー。

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