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【考察】目黒蓮の“スイッチオン”芝居から考えられる背景 『ザ・ロイヤルファミリー』第7話

  • 2025.11.26

ロイヤルホープは有馬記念で引退。山王耕造社長(佐藤浩市)と栗須(妻夫木聡)は、ホープの血統を残すことについて検討していた。

そんなある日、耕造を拒絶していた隠し子の耕一(目黒蓮)から、耕造に急いで会わせてほしいと頼まれた栗須は、ふたりが会う機会を作る。

しかし、話し始めてすぐに耕一と耕造は言い争いになってしまう。

耕一が何を伝えたかったのかわからない栗須は電話で加奈子(松本若菜)に相談。

加奈子から、耕一は馬を心配しているのでは、と指摘され、『馬の相続』を思いつく。

耕造からあらためて馬を引き継いでくれないかと依頼された耕一は、なぜか断る。

栗須は彼の本心を聞こうと問いただし、やっと口を開いた耕一からの提案に、その場の全員がおどろかされる…。

自分から発言することはほとんどなく、いつも黙り込んでいる耕一。

何を考えているのかよくわからない彼がやっと口を開いたかと思ったらすごい早口で、ノートパソコンに蓄積したデータを次々と見せながら、ひたすらまくしたてる。

ああ、この姿は見覚えがある。これは、好きなものの話をするスイッチが入ってしまった時の、オタクだ。

黙っているのは頭の中で言いたいことがぐるぐると渦巻いているからで、でも一度言うと決めたら、相手のことも場所も考えずに、頭の中身すべてをぶちまけてしまう。

そのあとで「やってしまった」と自己嫌悪する姿も想像できる。

今までそんなことを繰り返してきた耕一は、不用意に人と話さないように、大学の飲み会も行かずに自分を抑えてきたのではないだろうか。

そして、自分と同じくらい熱を持って馬について話しあえる相手も、これまで見つけられずにいたのではないだろうか…あの母以外には。

超一流の血統オタクである耕一。ロイヤル所有の馬の血統を何代にも渡って調べ、ホープの子を産ませるべきだと彼が考えた馬は、ロイヤルハピネス。

亡くなった母・美紀子(中嶋朋子)が、耕造に買うことを勧めた馬。

彼が相続馬限定馬主となるなら、たしかにこの馬しかない。

ホープとハピネスの子、耕一が耕造から引き継ぐことになった馬の名前は、ロイヤルファミリー。

『希望』と『幸福』が未来へ残すのが、『家族』なのだ。

そして、耕一にファミリーを相続させるために、競走馬として登録できるまでの3年を、耕造は生きた。

苦しい治療に耐え、もう車椅子でしか移動できず、牧場でファミリーが走る姿も車の中で横たわったままでしか見られない。

泣き虫の栗須は、毎回ドラマの中で何度も泣く。

けれども今回は、ひょっとしたら視聴者の方が、栗須が泣くのと同時かちょっと早いくらいのタイミングで、耕造を思いながら、彼よりもたくさんの涙を流したのではないか。

つい栗須に強い言葉を使った耕一に「いいかげんにしねえか青二歳」と耕造が怒った場面。

「俺は馬主としては凡庸だったが、お前をこの道にひきずりこんだのは手柄だったな」とつぶやいたシーンで…。

栗須より先に、涙が止まらなくなっていた。

自分勝手でワンマンで、よく喧嘩して、愛人を作って。「人としてどうなの」と思うところが多数あるのに、なぜか嫌いになれない。

むしろ、どうしようもなく人と馬を愛しているその情の深さとか、どんどん体が弱っているのに、死ぬつもりなど全然ない精神力の強さとか、栗須じゃなくても好きにならずにはいられない。

死の床で、他の馬をはるか後ろに置き去りにして飛ぶように走るファミリーを見ている耕造。

その手をしっかり握りしめた妻の京子(黒木瞳)が「面白かったわ」と涙を流しながら笑うところでも。

知らせを聞いた栗須が「今この時から、耕一さんが…ファミリーの馬主です」と涙目で微笑みながら耕一に伝えるところでも。

どれだけ泣いたか、わからない。

本当に、面白い人だった。さようなら、耕造社長。

耕造はこの世を去り、彼の望みは次の世代の耕一に『継承』された。

体に合っていないスーツを、ぎこちなく着ている新人馬主。金銭面は栗須がサポートすれば大丈夫だとは思うけれど、問題は『人間関係』となりそうな気がする。

彼は確かに、知識が豊富だ。でもそれはコンピュータ上の『データ』での話。

生きている馬を見る経験がほとんどなく、強調性があるとはとても言えない耕一は、馬と濃密に接してきたチームロイヤルのメンバーと、うまくやっていけるのだろうか。

これまで耕造社長のワンマンぶりに振り回されながらも「承知しました」となんとか要望をクリアしてきていた栗須。

馬オタクな耕一には、また別の感じで振り回されそう。

第一話のラストに出てきた、当時はまだ『謎の男』だった耕一と栗須が並んでいた写真、あれは今回一緒にファミリーに会いにいった時に撮ったものだったことが判明してすっきり。

あの第一話の『2030年』まで、時代がどんどん近づいている。

耕造の夢を継承して、ファミリーは有馬記念で勝てるのか。ファミリーに騎乗するのは、ジョッキーとして成長した翔平(市原匠悟)なのか。

次週予告に椎名社長(沢村一樹)の息子役として現れて、びっくりさせてくれた俳優の中川大志さん。彼はどう絡んでくるのか。

もうすでに夫婦の空気を出している栗須と加奈子はどうなるのか。

物語はいよいよ最終章。

[文/渡辺裕子 構成/grape編集部]

渡辺裕子

SNSを中心に注目ドラマの感想を独自の視点でつづり人気を博している。

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