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「車が来てもどかない」聖地巡礼客に鎌倉市が…12年続いた「人気ナンバープレート」の“悲惨な結末”

  • 2025.12.5
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出典元:photoAC(画像はイメージです)

人気アニメのオープニング映像にも登場し、国内外問わず人気の観光スポットとなっている江ノ電鎌倉高校前駅。海と江ノ電と踏切というデザインの鎌倉市オリジナルナンバープレートも、根強い人気を誇っています。

しかし、あまりにも多くの観光客が訪れる「オーバーツーリズム」の現状を受け、このナンバープレートの交付を一時停止することが、2025年12月3日に鎌倉市から発表されました。

観光人気と住民生活のバランスの難しさを象徴する出来事となりました。今回は、この決定に至った経緯と背景、そして今後の展望について解説します。

観光と暮らしの狭間で…鎌倉市がとった“異例の対応”

鎌倉市は2025年12月3日、「当分の間、オリジナルナンバープレートの交付を停止する」ことを発表しました。

対象は、原動機付自転車に対する「江ノ電鎌倉高校前駅付近の風景」をデザインした課税標識(ナンバープレート)です。2026年1月30日17時までの申請分を受け付け、同年2月2日以降からは通常の無地ナンバーのみの交付となります。

同市は「現在もオーバーツーリズム対策として、地域住民等の生活環境の保護に取り組んでいる状況を踏まえ、さらなるPRにつながるオリジナルナンバープレートの交付を一時停止します」と説明しています。

近年、観光客の増加によって、江ノ島電鉄の鎌倉高校前駅周辺は混雑や騒音、ごみの投棄など、いわゆるオーバーツーリズムの問題が指摘されるように。オリジナルナンバープレートがさらなる注目を集めかねないと、交付をやめる道を選びました。

鎌倉市のオリジナルナンバープレートは、2012年に市民団体からの提案を受け、2013年にデザイン公募、2014年1月から交付が始まったものです。市の魅力を発信し、地域への愛着を育むことが目的で、今回の停止決定まで約12年にわたって使われてきました。

写真撮影の人だかり、騒音、ごみ…現地で起きていること

江ノ島電鉄(江ノ電)の「鎌倉高校前駅」付近は、さまざまなアニメ、マンガ作品に登場するため、国内外の観光客から、いわゆる“聖地”として広く知られています。

そんな中、近隣住民からは「撮影に夢中で車が来ても道を譲らない観光客」「近辺の住宅の階段で飲食している」「鎌倉高校前の駅や周辺がペットボトルのごみであふれている」といった苦情や相談が相次ぎ、生活環境への影響が大きな問題になっていました。

これを受け鎌倉市は、「鎌倉市公共の場所におけるマナーの向上に関する条例」に基づき、SNSを活用して日本語・英語・中国語で呼びかけるなど、公共の場所におけるマナーの周知を行ってきました。

さらに、状況が深刻になっていることから、今年9月には市職員による実証実験を緊急で実施。鎌倉高校前駅から最寄りの公園に撮影エリアを設置して道路上での撮影を防止する、ごみステーションを設置するなど環境改善に向けた対策が進められています。

今回のナンバープレート交付停止は、こうした観光マナーの呼びかけや対策を続けても、訪問者の増加がとまらず、“オーバーツーリズム”の状態となっていたことが背景にあります。

ファンの戸惑いと住民の安堵、SNSでも賛否さまざま

鎌倉市の今回の発表を受け、SNSでは「プレートは残念だけど、現地住民にとってはやむを得ないのかも」「仕方ないけど純粋な“聖地巡礼”も肩身が狭くなるな」など、観光ファンと地元住民、双方の思いが交錯する声が見られます。

地域への愛着や聖地の価値を共有したい人にとっては寂しさもある一方、日常生活の平穏を重んじる住民の立場を思い、理解を示しているようです。

観光と生活の両立へ、地域が歩むこれから

今回の交付一時停止は、観光地としての魅力を守りながら、地域の暮らしをどう支えていくか、その難しいバランスに直面した結果ともいえます。鎌倉市はこれまでもマナー啓発や環境整備に取り組んできましたが、訪れる人の増加に伴い新たな対策を求められている状況です。

オリジナルナンバープレートは、地域の文化や風景を発信する役割も担っています。ただ一方で、「観光」と「住民生活」のバランスは常にデリケート。

今後、自治体がどのように観光との向き合い方を調整していくのか、引き続き注目が集まりそうです。


参照:
オリジナルナンバープレート交付の一時停止について(鎌倉市)
鎌倉市公共の場所におけるマナーの向上に関する条例について(鎌倉市)
鎌倉高校前駅周辺における秩序維持のための実証実験(鎌倉市)
江ノ電駅 鎌倉高校前に居る観光客について(鎌倉市)