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JAF「約4割が止まらない」年間32万件が検挙…“知らなかった”では済まない危険行為に「捕まってほしい」

  • 2025.12.9
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出典元:photoAC(画像はイメージです)

SNSではしばしば「信号のない横断歩道で車が止まってくれない」「歩行者が『どうぞ』と譲ってくるけど、歩行者優先なので早く渡ってほしい」といった声が見られます。

横断歩道での歩行者優先は単なるマナーではなく、道路交通法で定められたルールです。今回は、JAFの最新調査で明らかになった実態と、知っておくべき法律について解説します。

JAF調査が示す深刻な実態

JAF(日本自動車連盟)が2025年8月に実施した調査によると、信号機のない横断歩道を通過する車両(横断歩行者側の車線を走行する自家用自動車、白ナンバーの自家用トラック)のうち、歩行者が渡ろうとしている場面で一時停止した車は56.7%でした。

前年比3.7ポイント増加し過去最高の停止率となったものの、依然として約4割の車が止まらずに通過している実態が明らかになりました。

調査は2025年8月6日から28日にかけて全国94箇所の信号機のない横断歩道で実施され、6,226台の自家用車を対象に行われました。

都道府県別では大きな差があり、最も高い長野県では88.2%が一時停止した一方、最も低い山口県では34.3%にとどまりました。大阪府35.5%、東京都44.2%、愛知県48.9%など、大都市圏でも停止率が低い傾向が見られます。

出典:信号機のない横断歩道での歩行者横断時における車の一時停止状況全国調査(2025年調査結果)(JAF)

歩行者優先は法律で定められている

横断歩道での歩行者優先は、道路交通法第38条で明確に定められています。運転者には横断歩道に近づいたときに歩行者がいないことが明らかな場合を除き、停止できる速度で進行する義務があります。

また、歩行者が横断中または横断しようとしているときは、横断歩道の手前で一時停止し、通行を妨げてはなりません。さらに、横断歩道とその手前30m以内では、他の車を追い越したり追い抜いたりすることも禁止されています。この規定に違反すると「横断歩行者等妨害等違反」として罰則が科される可能性があります。

令和6年の横断歩行者等妨害等違反の取締り件数は約32万件で、令和2年の約1.1倍に増加しています。横断歩道で歩行者を優先しないことは単なるマナー違反ではなく、明確な道路交通法違反なのです。

警察庁によると、令和2年から令和6年までの5年間で、自動車と歩行者が衝突した交通死亡事故は4,262件発生しており、そのうち約7割の2,954件が歩行者の横断中に起きています。

SNSに寄せられる実際の声と注意すべきポイント

信号のない横断歩道をめぐっては、さまざまな体験談がSNSに投稿されています。

  • 信号のない横断歩道で歩行者が渡ろうとしているのに一時停止しない車が多く、危険を感じる。
  • 信号のない横断歩道で待っていても、自動車が全然止まってくれない。ルールは守ってほしい。
  • 都心も郊外も、止まる気のない車が多すぎる。捕まってほしい。
  • 「渡ります」というそぶりを見せたのに、まったく止まらない車ばかりだった。

歩行者が待っているのが見えているのに無視をする車が多い、と感じているという声が見られました。

一方で、車を運転する側からは「歩行者が譲ろうとしてくるのが困る」というコメントも。

  • 車を運転していて、信号のない横断歩道前に歩行者がいたため止まったが、歩行者が「先にどうぞ」とジェスチャーをしてきた。法律上は歩行者優先なので、早く渡ってほしい。
  • 渡ろうとしている歩行者が「先どうぞ」とジェスチャーをすることがあるけど、歩行者優先が法律で定められているので、変な気を使って譲る必要はない。
  • 運転免許取るまで車を止めて渡るのは悪いなと思ってたけど、免許を取って歩行者優先だと知った。

これらの声からは、歩行者優先のルールが十分に浸透していない現状や、「善意の譲り合い」がかえって混乱を招いている実態が見えてきます。

交通ルールを理解することが必要

ドライバーは、路面に描かれた白いひし形のダイヤマークを見かけたら必ず減速し、いつでも止まれる速度にすることが大切です。歩行者が待っていたり、渡ろうとしている素振りを見せたら、必ず停止線または横断歩道の手前で一時停止してください。歩行者が「お先にどうぞ」とジェスチャーをしても、一度は停止して歩行者に渡るよう促しましょう。法律上、歩行者が「渡ろうとしていた」と説明すれば歩行者妨害と判断される可能性があります。

歩行者側は、横断歩道では歩行者が優先であることを理解し、「車に悪いから」と譲る必要はありません。善意のジェスチャーが、かえってドライバーを困らせる可能性もあります。横断歩道を渡るときは手を挙げるなどして、ドライバーに渡る意思を明確に伝えましょう。ただし、歩行者優先とはいえ、車の挙動をよく確認してから渡ることが大切です。

横断歩道は歩行者が安全に渡るための場所です。ドライバーと歩行者がお互いにルールを理解し、思いやりを持って行動することが、交通事故を減らすことにつながるでしょう。


参考:
信号機のない横断歩道での歩行者横断時における車の一時停止状況全国調査(2025年調査結果)(JAF)
横断歩道は歩行者優先です(警察庁)