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「写楽」誕生の瞬間!やっと気付いた“兄弟の絆”、ていが届けた嘘と真実【NHK大河『べらぼう』第45回】

  • 2025.11.25

*TOP画像/定信(井上祐貴) 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」45話(11月23日放送)より(C)NHK

吉原で生まれ育ち、江戸のメディア王に成り上がった蔦重の人生を描いた、大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」(NHK総合)の第45話が11月23日に放送されました。40代50代働く女性の目線で毎話、作品の内容や時代背景を深掘り解説していきます。

源内先生はどこへ…定信らの「悪党成敗」に巻き込まれる蔦重

長年探していた人とようやく再会できると信じて待ち合わせ場所を訪れたのに、待っていたのは全くの別人だった──そんな展開は案外ありふれているのかもしれません。蔦重(横浜流星)も平賀源内(安田顕)との再会に胸をふくらませて安徳寺を訪れたものの、そこにいたのは松平定信(井上祐貴)や高岳(冨永愛)といった想定外の人たちでした。

 

さらに、耕書堂の前に置かれていた加筆された源内軒の原稿は、定信が三浦庄司(原田泰造)の話を聞いて書き起こしたものであることも本人の口から明かされました。

定信(井上祐貴) 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」45話(11月23日放送)より(C)NHK

定信は「そなた 源内の遺志を継ぐ気はないのか?」「源内は生きておれば そこにある源内軒のように 傀儡(くぐつ)好きの大名を成敗し 仇を討ちたいと思ったはずじゃ」と、蔦重に傀儡好きの大名への仇討ちに参加するよう誘います。これに対し、蔦重は「越中守様は源内先生に会ったことねえでしょう!」と一蹴。

 

蔦重にとって源内は自由に生きることの大変さも楽しさも体現して見せてくれた人でした。源内が発明や商いに目を輝かせて打ち込む姿は“自分の店をいつか持ちてえ”と胸を焦がす若き蔦重に希望を与え、励ましました。蔦重にとって源内は“人生の師”であり、大切な存在。源内と会ったこともない定信の憶測による言葉ではなく、本人の口から話を聞きたいと思うのは自然なことだと思います。

 

定信の強引さや頑固さは視聴者も知るところですが、蔦重はこの場に足を踏み入れた時点でこの企てに関わってしまったのです。

 

「写楽」の誕生 次ページ

喜三二の一言から「写楽」が誕生

定信から世の中を騒ぎ立てる役割を強引に与えられたものの、気が進まない蔦重でしたが、てい(橋本愛)の「かつてないほど 贅沢でふざけた騒ぎを起こすのです」「春町先生への供養となすのはいかがでしょう?」といった言葉に心変わりしました。

蔦重(横浜流星) てい(橋本愛) 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」45話(11月23日放送)より(C)NHK

耕書堂には朋誠堂喜三二(尾美としのり)、山東京伝(古川雄大)、大田南畝(桐谷健太)、北尾重政(橋本淳)らが集まり、作品について久しぶりに案を出し合います。定信の治世に解散した蔦重率いるクリエイターチーム。彼らの賑やかなアイデア出しの風景はもう見られないと思っていましたが、再び集結し、また一緒に作品を作り始めることになりました。

 

時代が変われば、これまで当たり前だったことが通用しなくなり、気落ちすることはあります。しかし、生きていさえすれば、かつてのような時間がめぐりめぐってふっと戻ってくることもあるのです。

蔦重(横浜流星) 山東京伝(古川雄大)、大田南畝(桐谷健太)他 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」45話(11月23日放送)より(C)NHK

世間が大騒ぎするような作品の案に頭を抱える中、菊之丞や宗十郎といった人気役者が躍り出る曽我祭のタイミングに合わせ、源内が描いたと思われる役者絵を出すことで意見が一致。南畝が源内から預かっていた蘭画を参考にしながら役者絵を描くことになりました。

蘭画 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」45話(11月23日放送)より(C)NHK

そしてついに、「写楽」の名が誕生。きっかけは喜三二の「「しゃらくさい」ってのはどうかねぇ?」という一言でした。南畝が「しゃらくせえのもじりということにございますか?」と返答。すると、喜三二は「しゃらくさいってのは いかにも 源内先生が言いそうな言葉でもあるし どうだろう まぁ」と説明していました。

 

京伝が「じゃ 字はどうします? そのまま書くと 洒落臭い(しゃれくさい) 洒落斎(しゃらくさい)ってとこかね?」と問いを投げかけると、蔦重は紙に筆で字を書き始めました。

蔦重のメモ書き 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」45話(11月23日放送)より(C)NHK

蔦重が書いたのは「写楽」。「この世の楽を写す」「または ありのままを写すことが楽しい」という意味が込められています。

 

この世には数えきれない苦しみがある一方で、楽しいことも無数にあります。たとえば吉原の遊女たちは過酷な境遇にありながら、仲間と語らったり、本を読んだり、恋をしたりして“楽”を見出していました。江戸の町人たちも天災や米不足、幕府の厳令に苦しみつつ、流行や芝居、祭りに目を輝かせて人生の”楽”を享受していました。生きていれば悲しみに呑み込まれそうになる瞬間はありますが、同時に“楽”もある──それを作品は一年かけて教えてくれた気がします。 また、歌麿はありのままの姿を写すのが得意ですが、この世界には蝶のような美しい生き物が舞い、町にはおきたのような美女もいて、それぞれが懸命に生きています。そうした命の輝きを描くことこそ、見る者にとっても大きな喜びとなるのです。

ちなみに、史実では、東洲斎写楽は役者絵を中心とする大量の作品をわずか約10カ月の短い活動期間中に発表しました。正体については能役者の斎藤十郎兵衛であるとする説が現在最も有力とされていますが、写楽が複数人の浮世絵師による共同ペンネームだったとする説も根強くあります。

 

ていが届けた恋文の返事 離れて気付く兄弟の絆

蔦重は源内風の絵を絵師たちに好き勝手に描かせてみたものの、どれも彼が思い描いていたイメージに届きません。描き直しを何度も命じられた絵師たちはうんざり。そうした中で、重政は「これじゃねえ あれじゃねえなら ガキでも言えらぁ べらぼうめ!」と蔦重に激怒。

蔦重(横浜流星) 京伝(古川雄大)他 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」45話(11月23日放送)より(C)NHK

重政(橋本淳) 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」45話(11月23日放送)より(C)NHK

一方、歌麿は自分の絵を何も言わず受け入れてくれる書物問屋の主人たちの評価に物足りなさを感じていました。蔦重にあれこれ口を出されることにはうんざりしていたはずなのに…。何の指示もされないことに不満を抱き、満たされない思いを募らせていました。

 

蔦重と歌麿はそれぞれの場所で必死にもがいていましたが、突破口を開いたのはていでした。

てい(橋本愛) 歌麿(染谷将太) 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」45話(11月23日放送)より(C)NHK

「蔦屋重三郎からの恋文にございます。正しくは 恋文への返事にございます。一目でも見てやってくださいませ」

 

ていは完成した「歌撰恋之部」を歌麿に渡し、蔦重が毛割(けわり)の彫り、色味、着物の柄も歌麿の目線で考え、摺師にしつこくやり直させていたことを伝えます。

「歌撰恋之部」(毛割部分) 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」45話(11月23日放送)より(C)NHK

そして、歌麿が気にしていた板元印と名の位置についての蔦重の想いも明かしました。

 

「歌さんを立たせるべきだが 自分と歌さんの仲に 上下をつけたくはない。肩を並べ 共に作りたいと思っていることを 伝えたいと。歌さんの名が上のものが三図 蔦屋の印が上のものが二図と 落ち着きました」

「歌撰恋之部」 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」45話(11月23日放送)より(C)NHK

 

「歌撰恋之部」 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」45話(11月23日放送)より(C)NHK

加えて、ていは「二人の男の業と情 因果の果てに 生み出される絵というのものを 見てみたく存じます。私も 本屋の端くれ。サガというものでございましょうか」と胸の内を伝えていました。

歌麿(染谷将太) 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」45話(11月23日放送)より(C)NHK

兄弟のように絆が深ければ深いほど相手に苛立ったり、無遠慮な態度を取ってしまったりするものです。気持ちがすれ違ったまま離れ離れになってしまうこともあります。けれど、蔦重と歌麿は突然の別れを経験しながらも再会を果たしたように、今回も再び心が通じ合いました。二人三脚で生き続ける運命にあるのでしょう。

 

それにしても、ていの“出家する”という嘘を歌麿のように見抜けず、騙された視聴者は筆者も含めて多いはずです。歌麿に見透かされるような嘘は知的で、曲がったことが大嫌いなていらしくないものの、不器用なほど真っすぐで、一生懸命な彼女らしくも感じました。

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