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我が子への贈り物から生まれた「ファーストシューズ手縫いキット」が大反響!革小物工房・クアトロガッツが大切にする“自分らしさ”

  • 2025.11.25

赤ちゃんが人生で初めて足を通す「ファーストシューズ」。そんな記念すべき一足を手作りできるのが、革小物を製作・販売するクアトロガッツの「ファーストシューズ手縫いキット」だ。初心者でも作れる体験型ギフトで、約2時間で栃木レザーの手作りシューズが完成するというもの。今年9月2日の「靴の日」に発売され、たちまち完売となる大反響を引き起こした商品だ。

子どもへの特別な贈り物を手作りできる「ファーストシューズ手縫いキット」
子どもへの特別な贈り物を手作りできる「ファーストシューズ手縫いキット」

同製品を手掛けるクアトロガッツは、ミニサイズの革財布「小さいふ」をはじめ、ほかではなかなか見ないユニークな革小物を企画・製作・販売する革工房。今回はクアトロガッツの竹中遥香さんに、ファーストシューズ手縫いキット商品化の舞台裏や、クアトロガッツのものづくりへのこだわりについて話を聞いた。

父親の想いが起点の人気商品。ファーストシューズ手縫いキットが生まれた背景

――「ファーストシューズ手縫いキット」が誕生した背景を教えてください。

【竹中さん】商品が生まれたきっかけとしては、クアトロガッツの製作部門長で革職人の矢田が「子どもが生まれた時に、父親として何か特別なことをしてあげたい」という思いから、息子がお宮参りの時に履くために一足のファーストシューズを手作りしたのがきっかけです。

そこから「手作りの靴をお子さんに贈るっていう喜びを多くの人に体験してほしい」と、どんな人でも手作りのファーストシューズが作れ、特別な贈り物をすることができるキットが生まれたと聞いています。

「ファーストシューズ」のカラーはホワイト/キャメル/レッド/ネイビーの4色。対象年齢はおおむね生後10カ前後
「ファーストシューズ」のカラーはホワイト/キャメル/レッド/ネイビーの4色。対象年齢はおおむね生後10カ前後

――サイト上ではすでに完売で、反響は大きいと思います。実際に見た方、購入した方の声はいかがでしたか?

【竹中さん】大阪のららぽーとEXPOCITYに実店舗がありまして、通りすがりの家族連れの方が立ち止まって見ていたり「かわいい」と言ってもらえたり、いい反応をいただいているなと思っています。

――革職人の方々が普段製作しているものを誰でも作れるようなキット、その製作にあたり、どんな工夫をされましたか?

【竹中さん】どんな方でも作っていただけることを大事にしていますので、裁断されたパーツに穴を開けておいて、針で糸をつけて通せば組み上がるような仕組みにしています。また、説明書の代わりに参考動画を見ながら組み上げていただくようにしたのもポイントです。難しい部分はスロー再生に、細かい部分はアップにしたりと動画も工夫して、動画を見ながら一緒に作っていただけるよう少しでも組み上げられやすいような形をとりました。

革のファーストシューズ キット
革のファーストシューズ キット

――購入者が作る過程にもこだわられたんですね。

【竹中さん】そうですね。それと、普段の生活で没頭する時間ってなかなか作れないと思うんですが、「手縫いで一針ずつ縫って没頭する感覚をけっこう取り入れたい」という思いもあります。編み進めることでちょっとずつ形が完成していく過程には達成感もありますし、一定のリズムで手を動かすことで集中力を高めたりストレスを解消したりと、そうやって没頭する時間も楽しんでもらえるのではと考えています。

キットの段階で穴を開けるなど、初心者でも作れるよう細部に工夫が施されている
キットの段階で穴を開けるなど、初心者でも作れるよう細部に工夫が施されている

――手縫いキットの中には、革製の手作りシューキーパーのパーツもついていますね。

【竹中さん】「ファーストシューズを履き終えても、いつまでも飾ってもらえるように」というこだわりから付属しています。シューキーパーはなくてもいいパーツではありますが、もともと靴職人の矢田は靴に対するこだわりを強く持っており、自身で作ったファーストシューズも今でもずっと飾っているそうです。同じように、思い出を飾ってほしいという気持ちから生まれたパーツです。

――ファーストシューズ手縫いキットの企画が立ち上がってから販売までどのくらいの期間がかかったのでしょうか?

【竹中さん】矢田のお子さんは現在は小学高学年、原型となったファーストシューズが生まれたのはけっこう前になります。そこから商品開発の話が立ち上がったのは、ここ3、4年ぐらいですね。

――企画が形になるまでそのぐらいの時間がかかるものなのですね。

【竹中さん】ファーストシューズ手縫いキットが今の形になる前は、靴をゾウやキリンのような動物の形でデザインした「ファーストシューZOO」シリーズにするのはどうかと検討していたんです。展示会には出展したのですが、そこから方向性をシンプルなものに変えて、現在ある商品になりました。

「デザインの民主化」を掲げるオーダーサービス「デザミン」

――矢田さん自身は靴職人だったそうですが、クワトロガッツは「小さいふ。」をはじめ、財布や革小物を多く作られています。今の形になった経緯もお聞かせください。

【竹中さん】実は偶然の部分が大きいです。矢田と弊社社長の中辻が子どもの頃同じ幼稚園に通っていて、「小さいふ。」を作っていた中辻と、自身で靴職人の店を営んでいた矢田が、イベントでたまたま再会したのをきっかけに、一緒に働くようになり今に至ります。

――クワトロガッツの革製品には、革製品のデザインをユーザーがカスタマイズできる「デザミン」というサービスがあるのも特徴に思いました。

【竹中さん】「デザミン」はユーザー参加型のオーダーサービスで、「デザインの民主化」が名前の由来となっています。「誰でも簡単にデザインができる世界になったらおもしろいよね」という思いからスタートしたサービスです。

クワトロガッツでも“自分らしさ”を大切にしてきましたが、当たり前ですが人によってそれぞれ自分らしさは違ってきます。「ユーザーの皆さんの“好き”をもっと自由に表現できるブランドを用意したい」、そういう思いから、スマホだけでデザインを扱ってハンドメイドするオーダーサービスがあったらおもしろいんじゃないかと、コロナ禍の時期に新ブランドとして立ち上げました。

写真でつくる愛犬キーケース
写真でつくる愛犬キーケース

――「小さいふ。」をはじめとするクワトロガッツの革製品は職人の個性が、「デザミン」はユーザー側の個性を反映したブランドということですね。

【竹中さん】そうですね。自分の好きなデザインなら長く大切に使ってもらえると思いますし、もし使えなくなったとしても捨てずにずっと手元に置いてもらえるのではないかなと思っています。

――革製品にプリントをするというのも新鮮です。

【竹中さん】そうですね、革業界ではあまり見ないと思いますし、オリジナルデザインのサービスも少ないのかなとは思います。

自慢の愛犬の写真をもとにデザイナーが完成イメージを作成する
自慢の愛犬の写真をもとにデザイナーが完成イメージを作成する

――「小さいかばん」「革の時計」「革の花瓶」などさまざまなデザミン製品がありますが、特におすすめのものはありますか?

【竹中さん】財布やキーケース、カードケースがメインの中で、今力を入れているのは、ペットの写真でオリジナルのキーケースを作る「デザミンペット」です。注文した方からスマートフォンで撮影したペットの写真を送っていただき、茨木の工房で革職人が一つずつハンドメイドするというコンセプトです。ペットを飼っている人はみなさん“自分の犬・猫が一番かわいい”ものだと思います。そうした気持ちにちゃんと応えようと生まれたブランドになります。本革で毎日使えるものですので、日々の生活で家にいない時もペットのかわいさをデザミンペットを通して感じてもらえたらうれしいなと思っています。

「いい影響が広がっていくようなものづくりを」

――これらのブランドを運営する株式会社ガッツ全体の強みや個性はどんなところにあるのでしょうか。

【竹中さん】1つ目は、企画、営業、製造、販売まで自分たちで一貫して行っている点です。茨木市の工房ですべて完結できるからこそ、品質のコントロールがしやすかったり、催事やポップアップストアでいただいたお客様の声を、すぐ次の商品に反映することができます。現場で生まれた気づきがそのまま商品になってお客様に届けられる、こうした速度や距離の近さだったりが弊社ならではの強みかなと感じています。

また、革職人がハンドメイドしてる革小物でありながら、遊び心やユニークさを大事にしていることも挙げられるかと思います。コラボ製品でいえば、手塚治虫作品やムーミンといった有名なタイトルはもちろん、栃木県のいちご柄だったり、吉本新喜劇の芸人さん、さらにはポップアップで出会ったお客様がたまたまイラストを描かれている方で、そのイラストが気に入って「一緒にコラボしましょう」とお声がけすることもありました。

小さい財布 小さいふ。コンチャ 手塚治虫ワールド コラボ「リボンの騎士」。鉄腕アトムや火の鳥、ジャングル大帝などのコラボ製品もある
小さい財布 小さいふ。コンチャ 手塚治虫ワールド コラボ「リボンの騎士」。鉄腕アトムや火の鳥、ジャングル大帝などのコラボ製品もある

――確かにコラボの幅がすごく広いですよね。どんな流れでコラボ製品が生まれるのですか?

【竹中さん】コラボ周りは社長が対応しているのですが、現場でのつながりからはじまることが多いです。手塚治虫作品コラボも、イベントで手塚るみ子さんが弊社の革製品を買ってくださったことがきっかけでした。

――先ほど距離の近さという話がありましたが、具体的にお客さんの声が反映された製品があれば教えてください。

【竹中さん】たとえば、デザミンペットの「愛犬キーケース」は、私が売り場でお客様から「犬のアイテムはないんですか?」という声をいただいたのをきっかけに企画・開発した商品です。その時は猫のキーケースしかなくて、犬派のお客さんからは「猫ばっかりや」というお話があったんです。ならば、犬のほうも作ったら喜んでいただけると考え作った商品になります。

「犬はないの?」の声から商品化へ
「犬はないの?」の声から商品化へ

――余談ですが、最初は猫だけだったことには何か理由があるのですか?

【竹中さん】クアトロガッツはスペイン語で「4匹の猫」(quatro gats)という意味なんです。工房を立ち上げた時も猫を飼っていましたし、猫好きのスタッフも多いので、猫の商品はたくさん作っています。

――お客さんの声を受けて、どのくらいの期間で商品化に至ったのでしょうか?

【竹中さん】愛犬キーケースでいえば、11月1日が犬の日なのに合わせて、半年から1年かからないぐらいで準備した思い出があります。私自身、企画・商品開発はこれが初めてだったのでけっこう手探り状態で、周りの人にいろいろと助けてもらいながら製作していきました。

――こうした製作への姿勢のほか、株式会社ガッツが大切にしているポイントを教えてください。

【竹中さん】小さくてもいい影響が広がっていくようなものづくりをしたいという思いを大切にしています。作り手側の私たちは作っていてワクワクでき、手に取ってくださる方には毎日に寄り添えるような、そんなアイテムをお届けできればいいなと思っています。

また、自分たちが作った商品を通じて、商品以外のことについても知るきっかけを作れればとも思っています。たとえば、6月のプライド月間(Pride Month)の時期には、LGBTQ+のコラボアイテムを毎年リリースしています。これは売り上げを目的にはしていなくて、特集ページで映画ライターの方にLGBTQ+をテーマにした映画コラムの連載だったり、加えてSNSでもLGBTQ+の歴史や背景の紹介も発信しています。デザインに惹かれて手に取ったお財布から、そうした背景など自然に知っていただけるきっかけになったらすごいうれしいなと思っています。

小さい財布 小さいふ。コンチャ LGBTQ+エディション「Pride Movie」栃木レザー黒/白
小さい財布 小さいふ。コンチャ LGBTQ+エディション「Pride Movie」栃木レザー黒/白
「めっちゃ小さいカバン スマホポーチ LGBTQ+エディション Pride Movie 栃木レザー ブラック」。LGBTQ+をテーマとした映画のタイトルが散りばめられている
「めっちゃ小さいカバン スマホポーチ LGBTQ+エディション Pride Movie 栃木レザー ブラック」。LGBTQ+をテーマとした映画のタイトルが散りばめられている

――社会的な関心といったところにも紐づけていきたい思いがあるんですね。

【竹中さん】そうですね。今年の夏頃に発売したものだと、琉球 紅型作家の池間真裕子さんとコラボした小さいふを販売しました。紅型(びんがた)はまだ知らない人もいると思うので、革製品がそうした文化や芸術に触れるきっかけにもなるといいなと思っています。

――最後に、御社の革製品や取り組みに興味を持った読者に向けてメッセージをお願いします。

【竹中さん】本当に気に入ったものを長く愛用してもらいたい、使う人が自分らしい新しい物語を生み出していってほしいなと思って作っています。実店舗のららぽーとエキスポシティや商品の実物を見ていただけますし、期間限定ショップでは普段は工房で製作している職人が接客もしています。公式サイトやSNSで開催情報を発信していますので、そうした機会にぜひ遊びに来ていただけるとうれしく思います。

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