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【ばけばけ】錦織(吉沢亮)の次元を超えたポンコツな“スキップ”が印象に残った第8週[写真多数]

  • 2025.11.24

【ばけばけ】錦織(吉沢亮)の次元を超えたポンコツな“スキップ”が印象に残った第8週[写真多数]

1日の楽しみは、朝ドラから! 数々のドラマコラム執筆を手がけている、エンタメライター田幸和歌子さんに、NHK連続テレビ小説、通称朝ドラの楽しみ方を毎週、語っていただきます。『怪談』でおなじみ小泉八雲と、その妻 小泉節セツをモデルとする物語。「ばけばけ」のレビューで、より深く、朝ドラの世界へ! ※ネタバレにご注意ください

ひたすら〝スキップ〟という展開に

半年にわたる長い期間の放送となるNHK連続テレビ小説において、緩急をつけるというか、メインのストーリーから少し離れた内容、ある種何も起こらなかったり、あれはなんだったんだ?と思わせる週を挟むことで飽きさせずかつ印象を残すようなことはときには必要かもしれない。たとえば『芋たこなんきん』で、ひたすらツチノコを追いかける週もそれにあたるのではないだろうか。

『ばけばけ』第8週「クビノ、カワ、イチマイ。」は、ひたすら〝スキップ〟〝スキップ〟、そして、トミー・バストウ演じる〝レフカダ・ヘブン〟という人物がどういう人なのか、スキップを踏みながら登場人物とともにより深く知り、少しずつ親しみをおぼえていく。もしかしたら後年もこの週のことが思い出されることも多くなるのではないか、そんな印象を残す週となった。

「ビア!」
「バイ・サム・ビア」
「ビア……ホシイ……」
ある日ヘブンは、女中としてのつとめが軌道に乗り始めたヒロインのトキ(高石あかり)にそう要求する。

「ビア」とは何なのか……。何を言われているのかトキには分からないものの「OK」と返事してしまうが、正解は「ビール」である。「BEER」などという言葉は理解できないだろう。花田旅館の面々と正解さがしをするが、「琵琶?」「枇杷?」、さらには穀物の「ヒエ?」と、混乱のなか正解を探す。

結果、ヘブン宅には琵琶や鎌、ゴマ、そしてまさかの幼なじみで教師の「サワ」(円井わん)……謎の大喜利のような状態が始まるが、それを「What is this?」「ビア? ビア……」と一つずつ読み解いていくヘブンの姿と、ボケているのか真面目なのかは分からないような絶妙な空気で説明していくトキに、食卓に「ムシ!」と言われ嫌悪された糸こんにゃくがのぼれば「ジゴク! ジゴク!」と荒ぶったりするものの、少しずつ打ち解けているような空気が笑いとともに視聴者に伝わる。

このくだりを松野家の中でも楽器の琵琶か果物の枇杷じゃないのかともう一度こするところも本作のもつ空気感だ。

このすれ違いのおかしさは、ヘブンがイラストを描いて説明してくれたことで、飲み物とわかり、苦労の末(?)正解にたどり着き、舶来品店で入手することのできた「ビア」を飲んでから、いよいよ加速する。舶来品店の店主・山橋(柄本時生)も店内で一緒に乾杯、すすめられたトキも初めて口にした飲み物「ビール」の苦さに「ビアってお薬ですか?」とびっくりするある意味お約束のくだりもはさみつつ、お酒の力も手伝い、山橋も一緒に笑いながら少しゆるやかな空気が流れる(余談ではあるが、遊女・なみを演じるさとうほなみは柄本との結婚が発表されたばかりである)。

念願のビールを飲むことができ、少し酔っ払ったヘブンはごきげんで、往来でスキップを踏み始める。このスキップもまた、トキをはじめ、松江の面々には初めて見る動きである。
「ドウゾ! ドウゾ!」
促されたトキやそこにいた面々でぎこちない謎のスキップ大会が始まる。ここから言ってみれば今週はずっと〝スキップ〟といっていい展開になる。

錦織(吉沢亮)が全問不正解というポンコツぶり

トキに説明され、母のフミ(池脇千鶴)も「何それ?」「スキッパ?」と言いながらスキップをぎこちなく踏む。それを見ていたサワも参加し、♪タッタ、タッタと楽しそうに飛び跳ねる。このぎこちない動きによる笑いの空気をさらに加速させたのが、ヘブンのアテンドを担当する英語教師の錦織だ。「大磐石」のプライドからリズム感の悪さを認めることはできないが、手足が揃い跳ぶこともできないさまは、圧倒的に下手くそである。

そこに乱入した司之介(岡部たかし)と勘右衛門(小日向文世)もスキップに挑戦するが、司之介はまさかの後退という外し方をし、いっぽうの勘右衛門がまさかのここまでで一番綺麗なスキップを成功させ、「スバラシイ、サムライ!」とヘブンに絶賛される。

「スキップコント」はまだまだくどいまでに続く。「近ごろの異人は、スキップで迫ってくる。その際は我々もスキップで対抗せねばならん」と、子供たちに教える勘右衛門がいれば、錦織が県知事の江藤(佐野史郎)にヘブンとの交流にはスキップが必要と進言すればやってみせてくれと言われ下手くそという次元を超えた動きを再び見せつけてくれた。

何度も失敗しては「ゴクロウサマ」「アバヨ!」と激昂され、20円という高給の女中をクビになることをそれこそ「クビノ、カワ、イチマイ。」でつながっていくことを重ねていくトキは、さらに近しい存在となりうるだろうか。

今週の「番外編」的な空気は、「ビア」「スキップ」に続き、突然トキと錦織、そして学生たちの間で始まった「ヘブンクイズ大会」とも呼ぶべき、ヘブンのことをもっとよく知ろうという企画(?)でさらに笑いを足してくる。
「どこの国で生まれたか?」→「ギリシア」
「嫌いな日本の食べ物は?」→「糸こんにゃく」
「料理屋を開いたことがある ◯か×か」→「ある」

ここでも錦織が全問不正解というポンコツぶりを披露し、ますます愛されキャラぶりを増していくのが素晴らしいキャラクターづくりだ。

それはともかくとして、質問を出す際の「ヘブン!」という掛け声がクイズバラエティの効果音そのままなのも小さな笑いをさそう。

これまで笑いを交えながらも借金地獄や雨清水家の苦悩などつらく苦しい場面も印象的だったドラマとは別物のように1週間まるごとスキップスキップ……あとはビアとクイズ……こういう週をおそらく意図的に挟み込んでくることが、この先のヘブンとトキの人生の幅と幸福さを際立たせてくれることにつながるだろう。そしてのちのち、「あのスキップ週はなんだったんだ!?」と振り返られるかもしれないような……そんな気もする第8週だった。

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