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そりゃはかどるわ…GDPで日本を抜いたドイツのワーママが朝イチで取り組む仕事内容にぐぅの音も出ない

  • 2025.11.21

日本をGDPで抜いたドイツ人の働き方は日本とどう違うのか。ドイツ出身のサンドラ・ヘフェリンさんは「ドイツの働き方はどこまでも『効率重視』で、仕事の目標が達成できていれば、どこで働くか、いつ働くかなどについてうるさくは言わない。子供がいる40代の女性もチームリーダーとしてフレキシブルに働いている」という――。

※本稿は、サンドラ・ヘフェリン『有休取得率100%なのに平均年収が日本の1.7倍! ドイツ人の戦略的休み方』(大和出版)の一部を再編集したものです。

40代ドイツ人女性の朝のルーティン

近年、特にコロナ禍が終わってからというもの、ドイツでは「仕事における自由さ」、それも会社に属している従業員の立場の人の自由さが目立っています。

ドイツの働き方はどこまでも「効率重視」で、仕事の目標が達成できていれば、どこで働くか(場所)、いつ働くか(時間)などについてうるさくは言わないのです。

このような働き方であってもドイツは日本をGDPで抜いたのですから「自由な働き方」は侮れません。

リサさん(Lisaさん、40代、女性、家族と同居)、ドイツ在住。
チームリーダーとしてフルタイムで勤務。

リサさんは2007年から建設機器やクイックヒッチの会社の人事部で事務をしており、2012年からはチームリーダーを務めています。

彼女が担当しているのは社員のペイロール(給料支払簿)です。

・リサさんの朝のルーティン

「休暇の過ごし方」や「働き方」の本題に入る前に、リサさんに仕事がある日の「朝のルーティン」について聞いてみました。

ざっと紹介すると、6時半にシャワーを浴び、6時45分に子供(8歳の息子)を起こして、息子が学校の休み時間に食べるPausenbrot(ハムやサラダなどを挟んだパン)を作ってタッパーに入れます。

サンドイッチを袋に入れる女性
※写真はイメージです
面倒な業務を先に片づける

長年の習慣で、リサさんは朝ご飯を食べる習慣はなく、コーヒーも飲まないとのこと。

リサさんが毎朝思い出すようにしているのは、Eat that frogという英語の言い回しです。

日本語に直訳すると「蛙を食え」ということですが、要は「不愉快な仕事から先に片づけろ」という意味。

つまり、長年働いてきたリサさんが実感しているのは、「後回しは精神衛生上よくない」ということです。

したがってリサさんは、一番面倒な業務を先に片づけるようにしています。

そうすると、その後の1日を気持ちよく過ごせ、そのほかの業務にも手が回り、生産性も上がると感じています。

1日がスタートするときに「自分にとって嫌なこと」「自分にとって精神的にハードルの高いこと」に思いきって取りかかる。

すると、その用事が片付いた瞬間に、それが「自分の中の成功体験」となり、その後の1日においてモチベーションを保ち続けることができます。

仕事と子育ての両立
・リサさんの働き方

リサさんはフルタイム勤務。

朝は、8時から8時半の間に会社に到着し、15時半から16時の間に帰宅します。

どうしても残業が必要なときは夜にホームオフィス(在宅勤務)で働くそうです。

リサさんは言います。

「私は子供を理由に週に1~2回ホームオフィスで働いているわけだけれど、5人いる部署の中で子供がいるのはチームリーダーの私だけ。私のチームには、毎日ホームオフィスの人が1人いるわ。彼女は2025年の1月に郊外に引っ越しをしたから、それをきっかけに会社の了解をもらって毎日ホームオフィスにしているの」。

コロナ禍のころ、多くの会社がそうであったように、彼女の会社でも基本的には全員がホームオフィスでした。

でもリサさんはペイロール(給料支払簿)という仕事をしているため、会社のプリンターやスキャナーを使う必要があります。

したがって、オフィスに人がいないときを見計らって、コロナ禍のときも必要なときには出社していたのだとか。

リサさんは言います。

「コロナ禍が始まったとき、息子はまだ3歳だったの。コロナ禍だから当然、息子の預け先もなくて。そんな中でホームオフィスが始まったから、本当に大変だったわ。午前中は息子も頑張っておとなしくしてくれていたの。

だから私は朝は8時半から12時まで仕事をした。でも何せ3歳だからね。お昼12時ごろになると、息子のイヤイヤが始まるの。当時、息子は夜7時には寝たから、そこからが私の『第二の仕事タイム』だったの。夜7時から12時まで仕事をしていたわ」

と、当時を振り返りながら話してくれました。

【図表1】リサさんの1日
『有休取得率100%なのに平均年収が日本の1.7倍! ドイツ人の戦略的休み方』より
子供がいても、チームリーダーとして働ける

この話には「いい意味で考えさせられる」ことがあります。

ひとつ目は、リサさんの部署には5人いて、全員が女性ですが、リサさんにだけ子供がいるということ。

そして、そのリサさんがチームリーダー(所属長)をしているということです。

この話から見てとれるのは、ドイツでは「子供がいてもチームリーダーになれる」という土俵があるということ、そしてほかの女性社員が「子供のいる女性の足を引っ張っていない」ということです。

リサさん自身は「子供がいるから」という理由で週に1回~2回はホームオフィスで働いているわけですが、前述通り「子供がいないけれど、郊外に住んでいるという別の理由から毎日ホームオフィスをしている女性」もいます。

その両方が「摩擦なく当たり前のように受け入れられている」状況なのです。

働き方は会社ではなく自分で決める

もう一点注目したいのは、コロナ禍でリサさんが子供のサイクルに合わせて「第一仕事タイム」と「第二仕事タイム」にわけて働いていたこと。

サンドラ・ヘフェリン『有休取得率100%なのに平均年収が日本の1.7倍! ドイツ人の戦略的休み方』(大和出版)

あくまでも事務員という立場ですが、ドイツの会社では近年、事務員に対しても、このようなフレキシブルな働き方を許可することが増えました。

現在のドイツ社会の価値観や共通認識に照らし合わせると、会社が「社員に子供がいて大変だなんて知りません。子供がいないケースと同じ形で働いてください」というスタンスを取れば、その会社の悪い噂はすぐに広まってしまいます。

現在のドイツでは「働き方のフレキシビリティ」という観点から言えば、基本的には「すべてを許可する方向」だと言っても過言ではないでしょう。

1人ひとり、家庭状況も違えば、ライフスタイルも違うわけです。

それを会社が「みんな同じ働き方をするように」と統一する必要はありません。

統一すると、働いている人に無理が生じて結果的に生産性は落ちるでしょう。

そのため「それぞれ、その人に合った働き方」をすればそれが一番合理的だとドイツでは考えられています。

自宅とオフィスのハイブリッド勤務イメージ
※写真はイメージです
フレックスタイムは当たり前

コロナ禍が終わった今、リサさんの会社では「朝6時~夜20時までの間」であれば、フレキシブルに仕事ができます。

「もしも『社員が必ず18時まで働くこと』を求めるような会社だったとしたら、私は子供を幼稚園が終わった後にHort(学童)に預けなければいけなかった」

とリサさんは言います。

繰り返しますが、子供のいる社員にそのような働き方を求める会社というのは、近年のドイツでは「評判を落とすこと」になる可能性があるため、「社員に自由にさせている」側面があります。

サンドラ・ヘフェリン(さんどら・へふぇりん)
著述家・コラムニスト
ドイツ・ミュンヘン出身。日本語とドイツ語の両方が母国語。自身が日独ハーフであることから、「ハーフ」にまつわる問題に興味を持ち、「多文化共生」をテーマに執筆活動をしている。著書に『体育会系 日本を蝕む病』(光文社新書)、『なぜ外国人女性は前髪を作らないのか』(中央公論新社)、『ほんとうの多様性についての話をしよう』(旬報社)など、『ドイツ人は飾らず・悩まず・さらりと老いる』(講談社)、『有休取得率100%なのに平均年収が日本の1.7倍! ドイツ人の戦略的休み方』(大和出版)などがある。 ホームページ「ハーフを考えよう!」

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