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【食費は月1万円前後】年金5万円で暮らす、今年74歳の紫苑さん。節約のコツは「アスリートも好むあの食材」

  • 2025.11.21

【食費は月1万円前後】年金5万円で暮らす、今年74歳の紫苑さん。節約のコツは「アスリートも好むあの食材」

月5万円の年金でやりくりするには? 知恵と工夫をちりばめたセンスあふれる節約生活をつづったブログが大好評の、今年74歳の紫苑さん。楽しくおしゃれな節約生活を成功させた秘訣はどこにあるのでしょう。食、おしゃれ、住まいとインテリアのコツを6回に分けてご紹介します。第1回は、食費。高たんぱく質の食材を生かした賢い節約術です。

年金月5万円でやるしかない、と覚悟を決めて

紫苑さんが節約生活を始めたのは、69歳のときのことでした。

「日本全国が新型コロナに見舞われた2020年の春、外出ができなくなって仕事も激減しました。そこで初めて、月にわずか5万円という自分の年金額に向き合わざるを得なくなったのです」

今でこそ、賢い節約を実践するトップランナー、ともいうべき存在の紫苑さんですが、バブルの頃は仕事がらみとはいえグルメ三昧。一時は、家賃24万円のタワマンに住んでいたこともありました。30代で離婚し、シングルマザーとして二人の子どもを育てながらも、仕事は順調で生活には困らない収入を得ていました。

その後、賃貸の公団住宅に住み替えていましたが、60歳を過ぎて、家賃に不安を感じるようになります。
「子どもたちが独立したころ、当時月々15万円だった高額な家賃をこの先払い続けていけるのか、と負担に感じるようになり、64歳で貯金をはたいてこの小さな中古の一戸建てを購入したのです。家賃の呪縛からは解放されましたが、貯金はほぼゼロになりました」

とはいえ、当時はまだ仕事があり家賃も不要になったため、切実な「節約意識」はありませんでした。
「ところが、コロナ禍で仕事が減って収入が途絶えた途端、年金は月5万円という厳しい現実から目を背けてはいられなくなりました」

正社員として勤務していたときの厚生年金は、以前は可能だった一時払いで全額受け取っていたため、残るのは国民年金のみ。
「月5万円しかないことをはっきり自覚して、5万円でやりくりするしかない! と覚悟を決めたんです」

節約の主軸は食費。月1万円と設定し、買い物は予算1000円で

熟考の末、まず、生命保険やジム通いなどの「大きな出費」を大胆にカット。
「そのうえで、1カ月5万円の配分をざっくりと決めました」
①水道光熱費 1万円
②通信費 1万円
③固定資産税や健康保険料、NHKなどの固定費 1万円
④医療費日用品、娯楽費など 1万円(※現在は7000円ほどにおさまっています)
合計4万円

「残る1万円を食費に設定しました。だいたい4日に1回買い物に行くとして、食費は1回につき1000円前後でやってみようと。月8回の買い物ならおおむね8000円でおさまる計算です」

1カ月で食費1万円⁉ 1回1000円⁉ そんなことができるのでしょうか?

「みなさんそうおっしゃいます。相当ハードルが高いですよね。私も当初は毎日、何作ろうと悩みつつ、やみくもに安い食材ばかり買って、1回2000円くらい使ってしまうこともしばしば。でも、2、3カ月くらいでだんだんと100均メニューの工夫が板につき、1万円の予算が余る月も出てくるようになったのです」

鶏むね肉やいわしなど、安価な「アスリート食材」をメインに

「月5万円生活が成功した一番のポイントは、食費の節約ですね。この家に移った当初は、息子が土日に帰って来ていたこともあり、肉といえば牛肉や鶏もも肉、魚といえばサーモン。牛肉をたっぷり入れた肉じゃがなどを作っていました。それではひと月3万円あっても足りず、大幅な予算オーバーに。1カ月1万円という低予算でも、健康をサポートする食事をおろそかにはしたくないので、“安く、おいしく、簡単に”をモットーに、健康にもよいメニューを日々考えました」

それまでよく買っていた牛肉や鶏もも肉、サーモンなどはやめて、代わりにメインの食材は、安価でかつ栄養価が高い鶏むね肉やいわし、さばなどにすることに。

「今日の生さばは2尾240円、鶏むね肉は100g69円。1パックを何回かに分けて使うので1食あたり100円以下とローコスト。いわしやさばなどの青魚はEPAをはじめ健康によい成分が豊富です。鶏むね肉はもも肉に比べて脂肪が少なく、低カロリーの高たんぱく質食品。これらの食材は、いわゆるアスリートの方たちが常備する食事と重なるんですね。これらを生かさない手はないと」

食材は買った日に塩麹に漬け込んでおくのがポイント!

生のさばやいわし、鶏むね肉は、液体タイプの塩麹に漬け込んでから、さまざまにアレンジして使う——。それが、食材を2倍も3倍もおいしくする紫苑さんの真骨頂。

「いわしやさば、鶏むね肉は足が速い食材ですが、塩麹に漬けておけば翌日にはほどよい塩味がつき、秋冬なら冷蔵庫で3、4日はもちます。今回は定番のいわしが高かったので、さばをメインにしました」

紫苑さんが見せてくださったのは、その日に炊いたさばご飯と鶏むね肉のフリッター。一人用土鍋の炊き込みご飯の上にはふっくらしたさばがのっていて、いい匂いが漂ってきます。その場で仕上げてくださった鶏むね肉のフリッターを一口お味見すると、外側はサクサク、中はしっとりジューシーで柔らかく、マヨネーズとからし、バジルのディップが効いて、とても節約料理とは思えません。

「鶏むね肉はパサパサしがちですが、塩麹に漬けるとしっとり。ポリ袋(アイラップ)のまま湯煎してから冷蔵庫で保存しておくと、すぐに使えて便利です。粉をまぶして少量の油で揚げ焼きにするだけでフリッターがすぐできます。そのままほぐし、ゴマだれをかけて蒸し鶏風にしてもいいですね」

むね肉を漬けておいた塩麹液は鶏のだしが出ているので、温めて溶き卵をプラス。
「これで1品、卵スープの出来上がり。さばの残りは、塩麹に漬けて焼いたり、南蛮漬けにしたり」
野菜は、安くておいしい旬のものを中心に選びます。

節約メニューを続けたら、なんと健康になった!

「焼き野菜などのシンプルな調理法でも、ポン酢やにんにくオイル、オリーブ油、ごま油、バルサミコ酢、カレー粉など、調味料を工夫してアレンジすれば飽きません。少し値の張るバルサミコ酢などは、特売日や貯めたポイントで手に入れています」

このほかよく使う食材は、豆腐や厚揚げ、豆乳などの植物性たんぱく食品。豆腐は塩をふっておくと、水分が抜けてチーズのような味わいになるとか。

ハンバーグには卵も玉ねぎも入れず、はんぺんを入れてふっくらさせ、塩麹や甘酒を隠し味に。このタネは、肉団子やミートソース、麻婆豆腐と七変化。同じ素材でも飽きないように工夫する紫苑さんの発想力と応用力には脱帽です。

「工夫を重ねて節約メニューを続けていたら、とても健康になったのです。長年悩まされていた過敏性腸症候群もおさまり、痩せすぎていたのも改善。3㎏増えて適正体重に。以前は起きるときにだるかったのに、目覚めもすっきり。体が軽くなりました。体調がよくなると、体にいいものを食べているからだとますますやる気が出てきます。工夫するのが楽しくなってプラスのサイクルに変わり、本当に快適になりました」

帰宅が遅くなり、疲れたときでも市販のお惣菜は買わないという紫苑さん。
「一から作るわけではありませんから。冷蔵庫に塩麹に漬けた食材があれば、粉チーズを振って、レンジでチンするだけでも自分好みの一品がすぐできますからね」

その身軽さと、思い立ったらすぐ実行!の行動力で、充実した暮らしを楽しんでいます。

次回は、予算オーバーしがちな食費をおさえる方法についてうかがいます。

PROFILE
紫苑さん
しおん・1951年生まれ。
地方新聞社の東京支社勤務を経て、フリーランスのライターに。コロナ禍の2020年、月5万円の年金でやりくりする暮らしをつづったブログ「ひとり紫苑・プチプラ快適な日々を工夫」を開設。健康によい節約レシピ、おしゃれを生み出すリメイク術などが人気を集め、新聞、雑誌、テレビなどでも話題に。著書に『71歳、年金月5万円、あるもので工夫する楽しい節約生活』(大和書房)、『72歳ひとり暮らし、「年金月5万」が教えてくれたお金との向き合いかた40』など。

撮影/橋本 哲

※この記事は2023年10月20日に配信した記事を再編集しています。

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