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「経済力がない妻は”卒婚できない”のか」夫婦問題のプロが教える【うまくいく卒婚キーワード】とは?

  • 2025.11.20

「経済力がない妻は”卒婚できない”のか」夫婦問題のプロが教える【うまくいく卒婚キーワード】とは?

家族がいてもいなくても、自分軸を定めて生きる。その一つの形が「卒婚」です。識者の考える卒婚の意味とは? ここでは、夫婦問題研究家の岡野あつこさんにお話を伺いました。

お話を伺ったのは
岡野あつこさん 夫婦問題研究家・公認心理師

おかの・あつこ●立命館大学卒業。立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科修了。
1991年に離婚相談室を開設以来、約4万件の相談を受け、夫婦問題の研究家として後進の育成にも力を注いでいる。
NPO法人日本家族問題相談連盟理事長。

婚姻関係を続けながらお互いに自立した道を歩んでいきましょう

増える熟年離婚。卒婚との違いは?

最近は、50代以降の方からの離婚相談が増えています。女性だけでなく、男性からの相談も珍しくありません。理由はモラハラや浮気が多いですね。SNSが発達したことでモラハラが認知されるようになり、理由として堂々と挙げられるようになってきたのだと思います。離婚のハードルは下がっている印象です。

離婚は法的に婚姻関係を解消するものですが、では卒婚はどういうものでしょうか。法律の定めはありませんが、一般的には「婚姻関係を継続しながら、お互い自由に別々に暮らしている」ととらえられています。端的に言えば別居ですが、別居には夫婦仲が悪くなって離れて暮らすイメージがありますね。もう少し前向き・肯定的に夫婦の関係をとらえるのが卒婚です。夫婦の関係は卒業しますが婚姻関係は解消せず、お互いの自由を認め合う。別の道を歩みながらゆるやかなパートナーシップを結んでいる––––そういう夫婦の形が卒婚のイメージです。

相手に寄りかからない精神が妻にも夫にも必要です

前向きな夫婦関係の卒業は、どうすれば実現できるのでしょう。一番大切なのは、2人がお互いに精神的に自立していることだと思います。「気持ちをわかってほしい

「もっと自分を大事にしてほしい」と相手に期待していると、自分の思いをかなえてくれない相手に不満ばかりが募ります。相手に何かしてもらおうと考えるのではなく、まず自分の足でしっかりと立つ。自分にできないことを相手に求めず、「自分にはできない」と認めたうえでどうするかを考える。卒婚の第一歩はそこから始まるのではないでしょうか。もちろん、精神的な自立は妻だけでなく夫にも求められます。

相手に精神的に寄りかからなくなると、何かあったときには助け合おうという気持ちが芽生えます。相手への信頼を土台に、お互いに認め合う関係が築けているなら、「同居しながらそれぞれ自由に暮らしている」「離婚した」というケースだって、ある種の卒婚と言えるのではないでしょうか。

経済力があっても卒婚できるとは限らない

卒婚を考えるとき、もう一つ気になるのは経済的なことです。生活費は主に夫が担っているというご家庭も、まだまだ多いですね。経済力がない妻は、卒婚できないのでしょうか。

夫婦それぞれに暮らしを成り立たせる経済力があるならもちろんそのほうがいいのですが、経済的な自立は卒婚の絶対条件ではないと私は思います。お金を稼ぐ以外のことは相手に丸投げというのでは、離れて暮らすことなどできそうもありません。

精神的な自立ができていれば、別々に暮らすにあたって住居費や食費などの経済的な負担をどうするかということも、きちんと話し合えるはず。それぞれが自分の道を歩むための前向きな夫婦の形が卒婚ですから、経済的な負担の大きい側が一方的に損をするわけではないのです。いざ卒婚してみたら「話が違う!」とならないように、決めたことを書面にしておくといいと思います。

子育てや介護を終えた後に「妻」や「夫」の役割を卒業する卒婚は、魅力的に思えるかもしれません。でも、お互いに認め合う関係を保ちながら別々の道を歩んでいくには、それ相応の努力や覚悟が必要です。

卒婚なんて考えられないという夫婦でも、いずれどちらかが先に旅立ちます。そのとき、残されたほうは自分を見失わずに前向きに生きていけるでしょうか? 夫婦としてめぐりあった縁をいとおしみながら、一人で生きていくための練習をする––––卒婚とはそういうものではないかと思います。

岡野あつこさんが考える【うまくいく卒婚のキーワード】

①夫婦がお互いに信頼し合っている

相手の人格や価値観などを尊重する気持ちがないと、離れて暮らしながらよい関係を続けていくのは難しいものです。これまでにパートナーとどんな関係を築いてきたかが、問われているとも言えるでしょう。

②夫婦がともに一通りの家事ができる

食事が作れない、掃除ができないからと、定期的にパートナーに来てもらうのでは、自立しているとは言えません。最近は夫の家事能力が上がって妻への依存度が下がる傾向があり、卒婚の追い風が吹いているのかも?

③夫婦がともに経済的に自立できている(のがベター)

別々の世帯を維持していくことになるので、夫婦がともに自分の暮らしを成り立たせる経済力を持っているならそのほうがいいですね。ただし経済的な負担については、事前の話し合いでの取り決めも十分可能だと思います。

取材・文/荒木晶子

※この記事は「ゆうゆう」2025年12月号(主婦の友社)の記事を、WEB掲載のために再編集したものです。

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