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90代の【樋口恵子さん】が伝えたいこと。「3つのショクを生活に取り入れることが健康長寿の秘訣」

  • 2025.11.20

90代の【樋口恵子さん】が伝えたいこと。「3つのショクを生活に取り入れることが健康長寿の秘訣」

90代の今も仕事は現役! 「老いのトップランナー」として、自らの老い方・生き方を発信し続けている評論家の樋口恵子さん。年齢を重ねても前向きな心を失わず、今を楽しんで生きる樋口さんに、健康長寿の秘訣を伺いました。 ※記事の初出は2023年10月。年齢など、内容は取材時の状況です。

<お話を伺ったのは>
樋口恵子さん

ひぐち・けいこ●1932年、東京生まれ。東京大学文学部卒業。時事通信社勤務などを経て、評論活動に入る。東京家政大学名誉教授。NPO法人「高齢社会をよくする女性の会」理事長。『老いの玉手箱 痛快! 心地よく生きるヒント100』など著書多数。近著の『老いの地平線 91歳 自信をもってボケてます』が話題に。

高齢期になったら文化系より体育会系が◎

「私は一病息災ならぬ、多病息災」

茶目っけのある笑顔で、そう話す樋口恵子さん。91歳の今なお精力的に活動を続ける姿からは想像できないが、実はこれまでさまざまな病気と闘ってきた。50歳で子宮筋腫の摘出手術、66歳のときには乳がんが発見され手術を受けた。さらに77歳のときに大動脈瘤手術、89歳のときに二度目の乳がん手術……。

「病気だけでなく、ケガもけっこうしています。50代のとき、真っ暗闇の中でしゃべりながら階段を下りていたら、勢いよく落ちてしまいました。すぐに病院へ行ってレントゲンを撮ってもらうと、右膝頭にひびが入っていた。結局、手術はしませんでしたが、70代になってから膝の補助具を作りました。2年前には家の階段から転げ落ちて全身打撲、1年前は玄関先でふわーっと倒れて頬骨を強打。でも私、体は強くないんだけれど骨は強いんです。だから転んでも骨折したことはありません」

骨を強くする秘訣はあるのかと尋ねてみると、「牛乳よ!」と力強い答えが返ってきた。

「子どもの頃、戦前のわが家は貧乏学者の父が支える中流階級でしたけれど、母は兄と私に1合瓶(180㎖)の牛乳を必ず飲ませてくれました。戦後、集団疎開から戻ってくると、私は結核を患い寝たきりに。母は四方駆けずり回って、山羊を飼ってる家から山羊乳を分けてもらって飲ませてくれました。そんなふうに乳製品を飲み続けてきたから、骨が強くなったのではないかと思っています。今も毎朝コップ2杯くらい牛乳を飲んでいますよ」

肉体的にも精神的にもヨタヨタヘロヘロ、そんな高齢期を「ヨタヘロ期」と名づけた樋口さん。自らもヨタヘロ真っ最中だと自覚する。

「耳は遠くなるし、体のあちらこちらが痛むし、ちょっと歩くのだってひと苦労だし。老いは大変なのです。でも、現代は皆それぞれの不自由を抱えて老いていく長生き社会。老いに慣れていかなければなりません。幸いにも補聴器があれば聞こえるし、補助具や杖があれば歩けます。医学の進歩に助けてもらいながら、初めての老いを私なりに楽しんでいきたいと思っています」

70代後半からは月2、3回、パーソナルトレーニングを受けている。

「私は中学から大学まで新聞クラブで活動し、合唱団に所属していたこともある文化系人間。でも年齢を重ねて『ちっとは体も動かさにゃあ』と思い、パーソナルトレーニングを始めました。先生に指導を受けながら、たっぷり1時間ストレッチをします。やり始めてみてつくづく思ったのは、手足というのは命を乗せて運ぶ器だということ。だから年齢を重ねるほど、生活の中に体を鍛える体育会系要素も取り入れたほうがいいと実感しています」

超高齢社会に突入する2025年に向けて

高齢期をより豊かに自分らしく過ごすために、樋口さんが提案・実践しているのは食・職・触の「3つのショク」を生活に取り入れること。

「私は80代半ばで家を建て替えたとき、虎の子貯金が減った心細さや喪失感からプチうつになりました。食欲が低下し、調理する気力も起きず、食がおろそかになった結果、栄養失調で入院するハメに。そのときに痛感したのが『食』の大切さ。食べることは生きることなのです」

「職」は仕事をすることだが、ボランティア活動や地域社会でのお手伝いなども含む。

「高齢者だってまだまだ働けます。シルバー人材センターなどに登録して働くもよし、ご近所さんのちょっとしたお手伝いをするもよし。微力でも社会の役に立ちながら自分自身も楽しめる『微助っ人(ビスケット)』の志で、いつまでも社会とつながり続けてほしいと思います」

最後の「触」は、人との触れ合いや人間関係づくり。

「職場の仲間は退職すれば縁が薄れるし、家庭も子どもが独立すれば家族が減る。そんなとき、血縁でなくても支え合える地域コミュニティがあれば、高齢者は家に閉じこもることなく社会に存在できます。コロナ禍で孤食が増え、人と触れ合う機会も減ってしまいましたが、ようやく元に戻り始めた今だからこそ提案したいことです」

樋口さんは、この「3つのショク」の重要性をすべての世代の人に、そして行政に携わる人たちに届けたいと考えている。

「2025年には団塊世代が皆75歳以上になり、高齢者人口が過去最多になるといわれています。迫りくる超高齢社会に向けて実現したいのが『3つのショク』。身体的健康の増進を諦めない医療対策、高齢者が外に出やすい社会になるような行政の施策を望みます」

取材・文/本木頼子 撮影/柴田和宣(主婦の友社)

※この記事は「ゆうゆう」2023年11月号(主婦の友社)の内容をWEB掲載のために再編集しています。

※この記事は2025年11月20日に文章構成を変更しました。

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