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「食費は月1万円」月5万円の年金でセンスよくやりくりする【70代・紫苑さん】の節約&DIYライフ

  • 2025.11.20

「食費は月1万円」月5万円の年金でセンスよくやりくりする【70代・紫苑さん】の節約&DIYライフ

月5万円の年金でやりくりする生活を綴ったブログが大人気の紫苑さん。お金の不安に押しつぶされそうだった時期と比べ、節約生活が板についた今は心身ともにすっかり健康になったそう。「今が一番楽しい」という、創意工夫あふれる暮らしを紹介します。 ※記事内容は、取材時の状況です

PROFILE
紫苑
しおん●1951年生まれ。
地方新聞社勤務を経てフリーライターに。
2020年から月5万円でやりくりする節約生活を始め、少ない年金でも楽しく安心して暮らす工夫をブログで配信。新聞、雑誌、テレビなどでも取り上げられ、反響を呼んでいる。
ブログ「ひとり紫苑・プチプラ快適な日々を工夫」

69歳で初めてお金の不安と向き合う

30代で離婚し、フリーランスのライターとして働きながら、二人の子どもを育てた紫苑さん。

「若い頃は目の前の仕事や子育てに必死でした。生活に困らない程度の収入もあったので、お金の問題と正面から向き合ってはこなかったんです」と当時を振り返る。

ところが子どもたちが独立し自らも60歳を迎えると仕事が減り始め、この先の人生に不安を感じるように。賃貸住宅の家賃が負担になり、64歳で小さな中古の一軒家を購入した。

「家賃を払い続ける必要はなくなったものの、貯金はほぼゼロになりました。それでもこの頃はまだ仕事があったので、お金のことはあえて考えないようにしていましたね」

そんな毎日を襲ったコロナ禍。仕事はなくなり、いよいよ年金5万円での生活に直面せざるをえなくなる。69歳のときだった。

「遅すぎるスタートですよね。でもやるしかありません。とにかく月の支出を5万円以内に抑えることが私に残された道でした」

そこで最初に行ったのは大きな支出のカットだった。

「ちまちまとした節約では、とても追いつかなかったんです」

まず、一番大きな出費だった生命保険を解約。万一のときは高額療養費制度があると割り切った。スポーツジムも解約した。近所の土手で運動すれば十分。基礎化粧品もカット。冬場の乾燥対策にはホホバオイルを1滴つけるだけ。食生活の改善もあり、以前より美肌になったという。紫苑さんの生活に欠かせない本もできる限り図書館で借りて……。

こうして大きな出費を削り、改めて5万円の使い道を考えたところ、水道光熱費、固定資産税、健康保険料、通信費といった固定費を引いた2万円が、食費と交通費、医療費その他に使える生活費として残された。

「節約生活のスタートですね。この生活に欠かせないのは健康であること。健康を保つには食事と運動。節約生活を始めるに当たり、まず食事を充実させることを考えました」

月1万円の食費で 体にもいい変化が

2万円の生活費のうち、食費を1万円と設定した紫苑さん。節約生活を始めた頃は、やみくもに安い食材を買って無駄にしたこともあったそう。今はいわしと鶏むね肉をメインのおかずの基本と決めている。

「安くて栄養満点。味つけもアレンジがきき、飽きずに食べられます」

この他、豆腐、卵、旬の野菜、牛乳、さばやトマトの缶詰、わかめや昆布などの乾物が定番食材。季節にもよるが4日に一度程度、予算1000円前後で買い物に行き、足りないものを買い足していくスタイルだ。缶詰や乾物、味に変化をつけるために欠かせない調味料は特売やポイントで賢くゲット。きのこや野菜を干したり、豆腐を塩漬けにしたりと、日もちをよくする工夫もこらし、無駄なく使いきる。

「実はこれだと1カ月の食費が8000円くらいで賄えるんです。そうすると1000円ちょっと残ります。この1000円が大きいですね。大好きな貝類や豚のかたまり肉など豪華食材を買って楽しみます」

高い食材を使えばおいしくなって当たり前。低予算でいかに必要な栄養をとり、心まで満足させるか。

「料理は脳活でもありますね。何より、ずっと悩まされていた過敏性腸症候群が治ったのが嬉しくて。少し太れるようにもなって、見た目も若返ったかもしれません」

フードロスを出さないために

最近購入した萬古焼のおひつ。冷蔵、冷凍からレンジ、オーブンもOKなので、ご飯の保存の他、余り野菜を蒸すのにも便利。

きのこ類はベランダで乾燥させて。栄養価もうまみもアップし、日もちもよくなる。朝のみそ汁に入れて、腸活にも役立っている。

栄養バランスのいい食事を 心がける

豆腐とトマトと青じそのカプレーゼ。塩をふって冷蔵庫で寝かせた豆腐はチーズのような濃厚な味わい。チーズをのせて焼いても。

お正月に田作り用のかたくちいわしを半額で買い、乾燥させて保存。ナッツと一緒におやつにしたり、ピーマンと炒めておかずにも。

さばの缶詰をよく使うが、ひと缶使いきれないときは、余りを炒めてさばそぼろに。生姜をきかせ、ごまやのり、乾燥パセリを加えて。

いわしは節約料理の救世主です!

安くて栄養満点のいわし料理。つみれ汁、パン粉焼き、ごま焼き、塩焼き……と、飽きないように味つけは毎回変えている。

リメイクとDIYでとことん遊び尽くす!

食費に1万円を使うと、残るお金は1万円。消耗品費や医療費を考えると、おしゃれや生活の楽しみの部分にお金はかけられない。

もともとおしゃれが大好きで、一時期は着物にはまり、たくさんの着物を買い集めたという。

「プチプラ着物中心ですが、かなりのお金を費やしました。節約生活とともに断捨離も進めたのですが、布ものは特に、なかなか捨てられないんですよね」

そんな紫苑さんだが、洋服も着物も高価なものから処分したという。

「今後、着る機会もないですし、リサイクルセンターに持っていくのも早いほうがいいと思って。それに、高いものは高いものを呼ぶんです。ブランドバッグを持っていたらそれに合う靴が欲しくなるでしょう。今後は今の生活に見合う、自分の好きなものを身近に置こうと決めました」

新しい服を買う代わりに、古いものをリメイクするのが紫苑さん流。お気に入りの着物をワンピースやコート、スカートに。年とともに似合わなくなってきた洋服も、襟を替えたり裾を足したり、部分リメイクでよみがえらせる。

「そうやって工夫していると、自分の好きなもの、自分に似合うものがわかるようになってきます。おしゃれは自分を知ることから始まるといいますが、この年になってようやく自分らしさというものがわかってきた気がします」

リメイク魂はインテリアにも存分に生かされている。

「築40年の中古住宅は、ひととおりのリフォームはされていましたが、殺風景で狭いため、開放感もありませんでした。そこでキッチンや階段に100円ショップのリメイクシートなどを貼って、好きな青を基調にイメージチェンジ。寒々としていたサッシ窓には、DIYで木製の窓枠をつけたり、端切れで作ったパッチワークのカーテンをかけたり。家にあるものや、100円ショップの素材であれこれ楽しんでいます」

紫苑さんにとって、家は最高の遊び場だ。

「立派な家なら、子どもがいたずら書きをするだけで大目玉ですよね。でもこの家は、私がいなくなったら壊してしまってかまわない。だからとことん自分好みに変えて楽しもうと思います。素材も安いものを使うので、失敗してもいいんです」

布が大好き! リメイクして長く楽しむ

「おしゃれは襟が重要」と紫苑さん。娘さんの就活時の白シャツに、元はスカートだった刺しゅう生地をつけると、たちまちおしゃれに。

着用しているトップスも自分でリメイク。ストライプシャツの身頃に帯の布地を縫い合わせた。ギンガムチェック地は100円ショップで購入。

縮毛&白髪のカムフラージュにうってつけのターバンも手持ちの生地で手作り。2種類の布を組み合わせて表情をつけて。

布を継ぎ足すとハーモニーが生まれるパッチワークが大好き。青系の端切れを韓国の伝統手芸「ポジャギ」風に縫い合わせ、窓辺に。

不安からワクワクへ。節約生活がもたらすもの

ほんの数年前は、お金や将来の不安で眠れない日が続いていた。しかし、節約生活を始め、月5万円の年金で何とかやっていける自信がつくと、みるみる元気になったという。

「あの頃は、『漠然とした不安』がいつもつきまとっていたんだと思います。お金のことときちんと向き合わずに逃げていたので、不安が不安を呼び、どんどん増幅されていく……。でも、覚悟を決めて向き合ってみるとやるべきことが見えてきて、余計な見栄などもなくなって、楽になりました」

節約を始めた頃は、我慢をすることも多かった。

「おいしそうなお菓子や素敵な洋服を見ると、やはり食べたいな、欲しいな、と思ってしまいます。そんなときは10分我慢。時間をおくと、欲望は去ってしまうものです。『欲望の引き潮10分ルール』です。これはとても有効でしたが、最近はそれも不要になってきました。なぜおいしそうなのか、なぜ素敵なのか、自分流にアレンジして作るにはどうすればいいか。頭の中でそんな分析がすぐに始まるんです。食べたい、欲しい、よりも今は、作りたい、試したい、なんです」

毎朝、近くの土手まで歩き、60段ほどの長い階段を上り下りしている。

「最初の頃は息が切れたのですが今は平気で、上り下りを何度か繰り返せるようになりました。食生活の改善もあって、お金を出してジムに行っていた頃よりずっと元気です」

体調が整うと前向きな気持ちがわいてくるもの。かつて不安で眠れない日もあったが、今では頭の中は「次は何をしよう」でいっぱいに。

「夜寝る前に、次は照明を替えたい、どうしようかな、と考えながら寝るんです。そうすると睡眠中に整理されるのか、朝起きたときにアイデアが浮かんできたりします」

「節約はケチケチすることではなく、限りあるお金をどう使うか考える、知的な行為」だと言う。お金をかけなくても創意工夫で心地よい暮らしは手に入る。

築40年の中古住宅をDIYでリフォーム

味けないサッシ窓を木の手作り窓枠でカバー。アクリル板やカラーのクリアファイル、窓用の目隠しシートなどのコラージュ。

大きな書棚の扉を外し、横に倒してチェスト代わりに。他の家具の引き出しやかごを組み合わせて。

近所で拾い集めた落ち葉を100円ショップの額に入れて。「季節ごとに、お金をかけないインテリアを楽しんでいます」

ごく普通のキッチンも、100円ショップのリメイクシートで温かみのある空間に。レンジ台もカラーボックスのリメイク。

階段にもリメイクシートを貼ってカラフルに。「急で怖い場所が楽しい場所に。『踏むとピアノの音がしそう』と言われることも」

撮影/橋本 哲 取材・文/志村美史子

※この記事は「ゆうゆう」2023年7月号(主婦の友社)の内容をWEB掲載のために再編集しています。

※この記事は2025年11月20日に文章構成を変更しました。


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