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【和田秀樹さん】の老後資金術「いくら貯蓄しても不安は消えないから」必要最低限の蓄えのすすめ

  • 2025.11.20

【和田秀樹さん】の老後資金術「いくら貯蓄しても不安は消えないから」必要最低限の蓄えのすすめ

老後の資金については、誰しも気になるところです。しかし貯金があればあるほど幸せかというと、そうではないのかもしれません。ここでは、「老後の不安がみるみるうちに消えていく」と話題の書籍『わたしの100歳地図 65歳を過ぎても幸せが続く鉄則』から、シニア世代に向けた精神科医・和田秀樹さんのアドバイスをご紹介します。

財産はすべて使いきる

いまの70代は、財産を子どもや孫に残すより、自分のために使いたいと思っている人の割合がどんどん増えていると聞いています。とはいえ、依然としてお金をもっているのに使わず貯め込んでいる高齢者は、ここ日本にはまだまだたくさんいるのも事実です。

日本の個人金融資産は日本銀行が定期的に発表している資金循環統計(2022年7〜9月速報値)によると、2022年9月末時点で個人(家計部門)が保有する金融資産残高の合計は2005兆円でした。このうち50%以上の1100兆円が現金・預金です。また、60歳以上の高齢者が個人金融資産全体の6割を超えて保有しているともいわれています。

本のテーマでもある「人生100年時代」に関わることでもありますが、平均余命が長くなり、老後の生活費や介護費用など自分の寿命をまっとうするまで貯蓄がもつかどうか心配だという人も多いことでしょう。しかし、老後の資金が足りないという不安は、資産をある程度もっていたとしても、いくら貯蓄が増えたとしても、実は不安そのものが消えるということはないのです。

老後30年間で約2000万円が不足する「老後2000万円問題」というものがありますが、たとえ2000万円の貯蓄ができたから絶対に安心かというと、おそらくそのようにはならないと思います。であるならば、老後のお金は必要最小限でいいのではないでしょうか。

70歳を過ぎ、からだの衰えを実感するようになれば、いつ病気になるかわからないですし、いつ歩けなくなってもおかしくはありません。もしかしたら明日、死んでしまうかもしれない。しかし、いちばん心配しなければいけないのは、これまで多くの時間をかけて一生懸命、必死に働いて貯めてきたお金を使わないまま死んでしまうことです。

わかりきったことですが、あの世にお金はもっていけません。それなら自分のやりたいことのためにお金を使い、人生を楽しむことに使うべきです。自分の裁量でお金を使うことができるのも70歳かせいぜい80歳くらいまでではないでしょうか。認知症になり、症状が進んで重度になると、お金を自由に使うこともできなくなります。

いまこそお金を思い出に変える

もちろん、無計画に使い続ければ家計が破綻してしまいますが、巨額のお金を無謀な投資などに使ったりしなければ、そう簡単に破産するということはないと思います。高度経済成長期からバブル経済を経験したいまの日本の高齢者は、預金や家など、ある程度の財産をもっており、臨終を迎えたとき、思っていたよりも多くの財産を残す人が多いといわれています。必要以上にお金の心配をする意味はないということです。

とはいえ、総じてお金を使わないように考えて、コツコツ貯蓄しながら生活を送ってきた人のなかには、いきなりお金を使えと言われてもどうやって使っていいのかわからないという人もいるのではないでしょうか。

であるならば、これまで頑張ってきた自分へのご褒美、パートナーへの感謝の気持ちとして、自分や大切なパートナーが、本当に幸せと思えるお金の使い方を考えればいいと思います。

どんなものでもいいのです。これまでほしかったけど我慢してきたもの、やりたかったけどやらずに我慢してきたことなど、自分の心を満たしてくれるものや体験などにお金を使い、「お金」を「思い出」という何物にもかえがたい財産としてあげればいいのです。

そして、いつ最期の日が来るのか誰にもわかりませんが、人生の終わりにすべての財産を使い切るというのが理想です。

なかには、子どもや孫にお金を残したい、死ぬときは周りに迷惑をかけたくないと考えている人がいても不思議ではありません。しかし親に財産があると、その子どもや相続の権利をもつ人たちにはたいていろくなことがありません。遺産相続でもめるケースが非常に多いからです。親の遺産相続でそれまで仲のよかった兄弟姉妹が犬猿の仲となってしまった――映画やドラマの世界で見聞きするものではなく、身近なところで起きている事実です。

まして子どもや孫に財産を残そうとして、自分がしたいことを我慢したり、節約したりして、かえってストレスをためることは、まったく意味のないことです。ややもすると、それが認知症やうつ病の発症につながってしまい、かえって子どものためにも社会のためにもならないことは明白です。

それでも、どうしてもお金を残したいというのなら、自分の葬式代程度にしておくのがいいのではないでしょうか。もちろん死んでからのことはわからないので、わたしはそれも必要ないと思っています。

※この記事は『わたしの100歳地図 65歳を過ぎても幸せが続く鉄則』和田秀樹著(主婦の友社)の内容をWEB掲載のため再編集しています。

※この記事は2025年11月20日に文章構成を変更しました。

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