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芳根京子&高橋海人が映画『君の顔では泣けない』を語る!体が入れ替わってからの15年間をどう生きたか

  • 2025.11.22

映画『君の顔では泣けない』は、高校生の坂平陸と水村まなみの体が入れ替わったまま15年の人生を歩んでいく物語。
 
芳根京子さんは、まなみの体だけれど意識は陸。高橋海人さんは、陸の体だけれど意識はまなみ。
 
まずはオファーを受けたときのことから聞きました。

※高橋海人の「高」は正式には「はしごだが」

芳根京子さん&高橋海人さんインタビュー

――体が入れ替わる物語はこれまでもありましたが、本作は入れ替わったまま15年間戻らないというところに驚きました。それぞれオファーがあったときにどのようなことを考えましたか?
 
芳根京子さん(以下、芳根):体が入れ替わってしまったら戻りたいと思うものだと考えていたのですが、陸とまなみは15年も入れ替わったまま生きるので、その間に戻れない事情や戻りたくなくなる感情も生まれてしまうという展開が新鮮でした。

あまりにも時間が経過してしまうと、物事は複雑化してしまうんだなと思いましたし、難しい役なので「さあ、どう演じればいいのか」と気合も入りました。
 
高橋海人さん(以下、高橋):僕自身、入れ替わるという設定は初挑戦でしたし、しかも入れ替わってから15年間という長い年月を背負うというのはハードルが高いなと感じていたのですが、脚本を読み込んでいくうちに考えが変わりました。

この作品は単に入れ替わることだけに終止せず、入れ替わった後の彼らの人生をとても丁寧に描いています。自分を大切にしつつ、相手への思いやりを持ちながら過ごしていく物語がすてきだなと思いました。
 
共演が芳根京子さんと聞いて、初共演ですが、甘えさせていただきながら(笑)、楽しんで演じようと思いました。

体が入れ替わるだけでキャラは変わらない

©2025「君の顔では泣けない」製作委員会
©2025「君の顔では泣けない」製作委員会


――まなみの体で心は陸、陸の体で心はまなみという役ですが、どのように役作りをしていきましたか?
 
芳根:私は映画『累-かさね-』で入れ替わりが題材のものは経験しているのですが、そのときは人格が入れ替わったり、元に戻ったりを繰り返していたので、2つのキャラクターを演じる難しさがありました。
 
でも本作は、体はまなみでも心は陸なので、陸のキャラクターを追求すればいいんだと思い、役作りとしてはこれまでと変わらないアプローチでした。
 
高橋:撮影前のリハーサルで動画を回していただき、それを見ながら動きなどチェックしていきました。僕の主観だけでは乗り越えられない部分もあったので、スタッフの皆さんや芳根さんとも話し合って「こうじゃない?」と言いながら、ワンシーンずつ積み重ねて芝居を作り上げていきました。

――お互いの振る舞いやしぐさなどを参考にしたのでしょうか?

芳根:見た目や振る舞いではなく、中身が重要だと思っていたので、陸という人物を作り上げることに集中していました。
 
高橋:僕も同じですね。表面的なものや見た目にとらわれると、まなみの心の深いところまで届かない気がしたので、動きやしぐさにはこだわらず、まなみの感情に寄り添って演じました。

それぞれの心に響いたシーンとは

©2025「君の顔では泣けない」製作委員会
©2025「君の顔では泣けない」製作委員会


――完成した映画は撮影のときにイメージしていた通りでしたか? 好きなシーンはありますか?
 
芳根:撮影しているときに「こんな感じかな」とイメージを膨らませて、ワンシーンずつ芝居をつなげていったのですが、その一方で「どうなっているんだろう」という気持ちもありました。もしかしたらその気持ちの方が大きかったかもしれません。
 
高橋:そうですね。完成した作品のことをイメージするよりも、その瞬間、瞬間をまなみとして精いっぱい生きなくては!という思いでいっぱいだったので、僕は完成した映画を見て、すごくいい映画になっている!とびっくりしました。

©2025「君の顔では泣けない」製作委員会
©2025「君の顔では泣けない」製作委員会


芳根:陸は自分のことに必死過ぎて、ちゃんとまなみのことを見ることができていなかったので、完成した映画を見たとき「まなみのこの表情好き!」というシーンがたくさんありました。それから、出産前に陸が一人で本音を語るシーンが特によかったと思います。まなみがひそかに陸のことを見守り支えてくれていたことが分かるからこそ、グッとくるシーンだったと思います。
 
高橋:まなみは陸の家族と生活をしているのですが、それを陸が見にくるシーンが印象深いです。陸はそんなふうに一人になるシーンが多いような気がしました。陸とまなみがぶつかり合うシーンも、まなみのことを思いながら気持ちをぶつけてくれていたんだなと感じましたし、一人でいるときの陸の表情、顔が涙でいっぱいになっているシーンなど、すごく刺さりましたね。
 
一人ぼっちになった瞬間に人間は心が開いて気持ちがあふれるのかなと思いました。

俳優の自分と素顔の自分とのギャップを乗り越えて

©2025「君の顔では泣けない」製作委員会
©2025「君の顔では泣けない」製作委員会


――この映画は、体が入れ替わった後に、どうやって自分の人生を生きるかという葛藤が描かれています。そもそも人間は誰もが生活の中で演じている部分があると思うのですが、芳根さんと高橋さんは俳優として他者を演じながら、自分とのギャップを感じることはありますか?
 
芳根:以前は、映画やドラマに出ている自分と素の状態でいる自分とのギャップに悩んだり、もやもやしたりすることはありました。ただ、どれも「本当の私」と受け入れられるようになったら、とても気持ちが楽になったんです。
 
一度、友達にその話をしたら、彼女も会社にいるときの自分、家にいるときの自分に違いを感じると言っていたんです。みんな同じなんだと思いましたし、どの場所にいても、何をしていても、全て自分で選んだこと。そこにうそはないんです。そう考えるようになったら、スッと自分を信じて生きていけるようになりました。
 
高橋:いいこと言うなあ。
 
芳根:じゃあ、以下同文にしておきますか?
 
高橋:そうですね(笑)。自分の考えをしっかり持っていることは本当にすてきですよ。“芳根京子の哲学”って感じがしました。

©2025「君の顔では泣けない」製作委員会
©2025「君の顔では泣けない」製作委員会


――高橋さんはアイドル、俳優として活躍する自分と普段の自分とのギャップに悩んだりすることは?
 
高橋:世間の皆さんが知ってくれている自分は、おそらく100%の自分ではなく、僕の中の何%かだと思うんです。それだけで「高橋海人はこういう人」と判断されてしまうと「それはほんの一部なんだよ」と思ったりはします。
 
でも、他人を100%知ることって難しいじゃないですか。とても時間がかかることだとも思いますし、僕自身も自分のことを100%分かっているかと聞かれたら分からないですし。永遠のテーマかもしれません。
 
芳根:自分のことって意外とよく分からないですよね。
 
高橋:僕はメソメソしてしまう時期が割と長くあったんですが、自分が歩いてきた道、経験したこと、選択してきたことに対しては、自信を持てていないとだめだなって思って。世間の人にどう思われても、自分だけでも自分を愛してあげたいと思います。

簡単に「自分に戻りたい」と言えない理由

学生時代の陸とまなみ ©2025「君の顔では泣けない」製作委員会
学生時代の陸とまなみ ©2025「君の顔では泣けない」製作委員会


――映画の中でまなみが「もしかしたら戻れるかも」と話すシーンがありますよね。「チャンスがあるから戻ろう」ではなく「もし戻れる方法が分かったって言ったら、どうする?」という提案だったのが興味深かったのですが、お二人は、本当の自分に戻る・戻らないの選択についてどう考えていますか?
 
高橋:15年も入れ替わった体で人生を歩んできているので、簡単に戻りましょうとは言えないのだと思いますし、戻りたいけど戻りたくないという葛藤は生まれますよね。まなみは戻りたい思いもあるけれど、やはりまなみとして歩んできた人生があるから、陸のことを考えると……。だから、提案として話をしたんじゃないでしょうか。
 
芳根:15歳で入れ替わったときは、いきなりそれが起こったんです。すぐに戻れるという案があればよかったけれど、年月がたてばたつほど、進学、就職、結婚と経験し、それぞれ新たな人間関係も構築されていきますから、戻ることは簡単ではないと思います。
 
でも私は、思わぬ入れ替わりから、入れ替わった体で人生を歩んで、元の自分に戻ることが簡単ではなくなるというところがこの映画の面白さだと思います。
 
高橋:戻るか戻らないかの選択は本当につらいですよね。最初の「入れ替わっちゃったよ! どうしよう!」という感覚の方が、まだ楽かもしれない。
 
芳根:戻った後、大変なことになるのは目に見えていますからね。戻りたい気持ちはあるけど、家族、仕事、生活環境が……と考えてしまいます。
 
高橋:ああ、苦しくなってきた(笑)。戻っても戻らなくても、とにかく陸とまなみには幸せになってほしいです。
 
芳根:以下同文です(笑)。私もそう思います。この映画を見た、皆さんの感想が知りたいです。どんなふうに受け止めてくださったのか、ぜひ教えていただきたいです。
 
高橋:僕も知りたいですね。映画をご覧になったら、ぜひ感想を聞かせてください。よろしくお願いします!

芳根京子さんプロフィール

1997年2月28日生まれ。東京都出身。

2013年、ドラマ『ラスト・シンデレラ』(フジテレビ)で俳優デビュー。2015年『表参道高校合唱部!』(TBS)、2016年、連続テレビ小説『べっぴんさん』(NHK)に主演。2018年映画『累-かさね-』『散り椿』の演技で第42回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。主演ドラマ『波うららかに、めおと日和』(2025/フジテレビ)で第124回ザテレビジョンドラマアカデミー賞主演女優賞を受賞。

高橋海人さんプロフィール

1999年4月3日生まれ。神奈川県出身。

2018年、King & PrinceのメンバーとしてCDデビュー。2018年、ドラマ『部活、好きじゃなきゃダメですか?』(日本テレビ)で初主演。2023年、主演ドラマ『だが、情熱はある』(日本テレビ)の熱演が話題になり、第116回ザテレビジョンドラマアカデミー賞主演男優賞を受賞。ほか『95』(2024/テレビ東京)『DOPE 麻薬取締部特捜課』(2025/TBS)などに主演。近作は映画『おーい、応為』(2025)。

『君の顔では泣けない』2025年11月14日公開

©2025「君の顔では泣けない」製作委員会
©2025「君の顔では泣けない」製作委員会


原作:君嶋彼方『君の顔では泣けない』(角川文庫/KADOKAWA刊)
監督・脚本:坂下雄一郎
出演:芳根京子、高橋海人、西川愛莉、武市尚士
©2025「君の顔では泣けない」製作委員会

文:斎藤 香(映画ガイド)

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