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87歳の介護未満の父に毎月15万円の出費【ジェーン・スーさん・50歳】自身の”おひとりさま”の老後にも言及

  • 2025.11.17

87歳の介護未満の父に毎月15万円の出費【ジェーン・スーさん・50歳】自身の”おひとりさま”の老後にも言及

離れてひとり暮らしをする87歳の父親の生活を、別居しつつサポートするジェーン・スーさん。あえて同居を選ばない家族の距離感とは? 父親を支える秘訣とは? そしておひとりさまとしてのご自身の自立についても伺いました。

Profile
ジェーン・スーさん コラムニスト、ラジオパーソナリティ

じぇーん・すー●1973年東京生まれ。
TBSラジオ「ジェーン・スー 生活は踊る」、ポッドキャスト番組「ジェーン・スーと堀井美香の『OVER THE SUN』」のMCを務める。
著書に『生きるとか死ぬとか父親とか』(新潮文庫)、『へこたれてなんかいられない』(中央公論新社)など。

父はミック・ジャガー、私は招聘元

とはいえ家事代行サービスを頼んでも担当者と気が合わなかったり、冷凍食品を送っても食べてもらえなかったり。プロジェクトはトライ&エラーの繰り返しだ。頻繁に顔を突き合わせているとけんかになるし、相手が寂しいときに放っておけばすねてしまう。ほどよい距離感も徐々に学んだ。

「父のことはミック・ジャガーだと思っています。海外一流アーティストならわがままも当たり前。招聘元である私は、今日のステージがうまくいけばそれでよし、です。それでもイライラしたら、他人の親だと思い込む。そうするとうまく距離が取れるんです」

お互いが対峙するのではなく、隣同士で介護に顔を向けるというスタンス

そんな中でも、80歳を超えてLINEの操作を覚え、毎日の食事を写真で送ってくれるなど、父の協力に感謝もしている。

「介護は、する側とされる側、真正面から向き合ってしまいがちですが、実は隣同士に並んで理想の方向に進んでいくものなんじゃないかと思うんです。このプロジェクトには、父の当事者意識が欠かせません。そのことは父にも伝え、協力してもらっています」

元々、スーさんが小さい頃から家族の中でも個人の境界線がしっかり引かれた家だったという。父と娘、お互いに精神的に依存しないことでプロジェクトはうまく回っている。

ひとつだけ、本当はもっと早く、親が元気なうちからプロジェクトをスタートするべきだったと振り返る。

「どんな保険に入っているかなど、郵便物から少しずつ把握するしかなく、まるで探偵のようでした(笑)。よく、子どもには迷惑をかけたくないからと何も相談しない人がいますが、残念ながらそれは無理。体調を崩せばどうしたって子どもに迷惑はかかるのだから、元気なうちにエンディングノートなどで情報を共有して、プロジェクトの準備をしたほうがいいと思いますよ」

自分の好きなように生きられているのはあの家庭に生まれ育ったから

介護未満のサポートを始めて5年。父は現在、87歳になった。骨折もし、ペットボトルの蓋が開けられないなど、できないことも増えてきた。その都度サポートのシステムを更新し、父娘のプロジェクトは継続中だ。大ヒットしドラマ化されたエッセイ『生きるとか死ぬとか父親とか』では、父への愛憎を綴った。今も父への想いは単純ではない。

「実は私自身、今も家族を持つことは恐怖なんです。それにはやはり自分の家庭、あの父が影響していることは否めません。でも同時に、私が自分の好きなように生きられているのは、あの家庭に生まれ育ったからこそだとも思うんです」

人間、最後はひとり。好奇心を道連れに

父は今、スーさんに老いる姿を見せてくれている。それに対処しながら、自分の老後にふと不安がよぎることがある。

「今の福祉制度がいつまで続くかわかりませんし、私には、私のような優秀な娘もいません。でも、それは誰でも同じなのかもしれませんね。人間、最後は結局ひとりだと思うんです」

パートナーがいようがいまいが、子どもがいようがいまいが、人は基本的にひとりだとスーさんは考えている。そこには、家族は依存する間柄ではなく、お互いに自立し、支え合うものだという想いが見える。

「自立というと、私にとってはどうしても経済的自立が第一に来てしまいますね。今、父のサポートに月15万円くらいかかっています。経済的には相当、依存されている形ですが、これは私が好きでやっていることなので。ただ、自分の老後のお金は自分で稼ぐしかありません」

ただしお金さえあれば老後が幸せかといえば、もちろんそうではないとスーさん。

「最終的にひとりになった自分を支えてくれるもの。それは好奇心ではないでしょうか」

本を読んだり、映画を観たり、習い事をしてみたり、小さなことでいいという。

「好奇心を持ち続けることで、人は元気でいられるのでは。子育てや介護など家族のために尽くしていると、自分の好きなことさえわからなくなったりしますよね。家事は上手にできるのに、自分自身の取扱説明書がないみたいな。かつては妻、母、女性であるだけで背負わされた役割が多く、それも仕方のないこと。でも最近『自分軸』という言葉が注目されるように、ゆうゆう世代にとっても自分自身を大切にすることはとても重要だと思います。健全な好奇心を発揮して、自分の人生を取り戻す。幸せに老いるために、ぜひ取り組んでほしいと思います」

ジェーン・スーさんの父親を尊重した介護未満ルール

①父親の人生を改善したり、状況をよくしようとしない
②父親の人生を後ろからサポートする気持ちで
③けんかしたり、怒ったりしない距離感を探る
④こちらがイラついたら他人の親だと思おう
⑤お互いのプロジェクトだという認識を共有する

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撮影/佐山裕子(主婦の友社) 取材・文/志村美史子

※この記事は「ゆうゆう」2025年12月号(主婦の友社)の記事を、WEB掲載のために再編集したものです。

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