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映画『トリツカレ男』に広がる大絶賛の声! 最優先で見てほしい3つの理由を全力解説

  • 2025.11.15
映画『トリツカレ男』を最優先で見てほしい3つの理由を全力解説します!事前のキャラクターデザインへの賛否が覆った理由もはっきりとありました。 (C)2001 いしいしんじ/新潮社 (C)2025映画「トリツカレ男」製作委員会
映画『トリツカレ男』を最優先で見てほしい3つの理由を全力解説します!事前のキャラクターデザインへの賛否が覆った理由もはっきりとありました。 (C)2001 いしいしんじ/新潮社 (C)2025映画「トリツカレ男」製作委員会

まず、単刀直入にお願いします。11月7日より劇場公開中の『トリツカレ男』をまだ見ていない人は、今すぐに劇場上映を確認し、見に行ける回を予約して、見に行ってください。

お伝えしたいことはそれが全てなのですが、さらに「可及的速やかに劇場に駆け付けなければならない」理由をたっぷりと記していきましょう。

前置き:「この大傑作を埋もれさせてはならないムーブメント」が起きている!

その理由の筆頭は、何しろSNS上での絶賛の嵐。「人生で見てきたアニメーション映画の中で一番感動したかもしれない」「ケチのつけようがない傑作。全人類観ましょう」「アニメ史に残る傑作と比較して批評されるべき」など最上級の評価をする声が相次いでいます。

さらに、映画.comでは5点満点中4.3点、Filmarksでは5点満点中4.2点など、レビュースコアでも超ハイスコア。しかも、老若男女を問わずに楽しめる、見る人を選ばない作品とも断言できるのです。

(C)2001 いしいしんじ/新潮社 (C)2025映画「トリツカレ男」製作委員会
(C)2001 いしいしんじ/新潮社 (C)2025映画「トリツカレ男」製作委員会

もう1つの大きな理由は、劇場で見る機会をすぐに失ってしまうかもしれない緊急事態だから。

応援したい作品にネガティブな言及をして申し訳ないのですが、『トリツカレ男』はその評価の高さに相反するように、あまりに注目度が足りておらず、興行的には大苦戦のスタートとなってしまっているようです。公開初週から上映回数は決して多くなかったのですが、今週末ではさらに減り、1日1回のみの上映スケジュールも見かけました。

SNSでの絶賛の声が広がっているのは、「この大傑作を埋もれさせてはならない」意志も強く働いているからでしょう。しかも、後述するように「映画館のスクリーンで見るべき」作品でもあるのです。 SNS上にある「このままだと早く上映が終わってしまいそうだから、少しでも多くの人に今すぐに劇場で観てほしいんです」「焦って観に行った結果大大大正解だった」といった声にならって、ぜひ最優先で劇場へ足を運んでほしいのです。

1:賛否あったキャラクターデザインが絶賛へと変わる理由

アニメ映画『トリツカレ男』のキャラクターデザインは、公開前から「クセが強すぎて敬遠されそう」などと、作品を応援している人からも懸念の声があがるほどに個性的です。

そして、実際に本編を見た人からは、「いざふたを開けてみるとキャラにマッチした美術含め映像は眼福モノ」「あの世界観にあの絵柄めっちゃくちゃいいんよ!」など、キャラクターデザインへの事前の賛否の声を踏まえた上で、ほぼ絶賛に染まっているのです。

(C)2001 いしいしんじ/新潮社 (C)2025映画「トリツカレ男」製作委員会
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確かに、極端なまでに「顔や体つきがカクカクした」「デフォルメされた等身の」キャラクターの見た目は、昨今の「整った」「スラリとした見た目」のアニメのキャラクターとは全く異なります。

しかし、ヨーロッパ風かつ絵本のようにも見える街並みと、後述するミュージカルシーンでの躍動感たっぷりのアニメ表現でこそ、個性役なキャラクターそれぞれが「生きている」ように思えますし、そこには「このキャラデザならでは」のアニメの表現の豊かさと面白さがいっぱいでした。

(C)2001 いしいしんじ/新潮社 (C)2025映画「トリツカレ男」製作委員会
(C)2001 いしいしんじ/新潮社 (C)2025映画「トリツカレ男」製作委員会

ここまでのアニメのクオリティーが実現できたのは、『クレヨンしんちゃん』で知られるシンエイ動画の制作だからこそ、そして『映画クレヨンしんちゃん』の中でも傑作とされる『ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん』と『謎メキ!花の天カス学園』で知られる高橋渉監督の手腕も大きいでしょう。

『映画クレヨンしんちゃん』と同様の、ダイナミックな構図でのアクションの迫力のみならず、日常的な場面での細やかな動きやクスッと笑えるユーモアもとっても魅力的です。

なお、キャラクターデザインおよびビジュアルディレクターを担当した荒川眞嗣は、「僕の絵で大丈夫?」と驚いたものの、「大人向けの童話のような作品なら僕のタッチでもできるかもしれない」と思って手掛けたのだとか。

(C)2001 いしいしんじ/新潮社 (C)2025映画「トリツカレ男」製作委員会
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特に苦労したのは「タタン」というキャラクター(声は森川智之!)で、そこには「優しいクマのような人と言われたのですが、ロマンスもあるので色気がほしくて、最終的には『スーパーマン』のクラーク・ケントのように。小男であるジュゼッペと対照的ながっしりとした体型にしています」という工夫もあったのだとか。

また、終盤にはかなり現実離れした展開もあり、そこでモノローグで「どうして◯◯◯◯◯かって?」と観客が思う疑問を代弁しながらも、アニメという表現および、やはりこのキャラクターデザインだからこその説得力を持たせていました。そのほか、通行人や店の客などのモブキャラクターも、世界観をしっかりと作るため荒川眞嗣が監修しているそうです。

ともかく、この個性的なキャラクターデザインの良さは、静止画や予告編の一部だけを見ても分かりきることは決してできない、映画本編を見てこそ「これがいいんだ!」になるのは間違いないです。

2:原作者が佐野晶哉を「今、天才を見ているんだ」と思った理由

褒めるところだらけの『トリツカレ男』の中で、最も重要な特徴は、はっきりと「ミュージカルアニメ」であること。特に、主人公のジュゼッペの声と歌唱を担当した「Aぇ! group」の佐野晶哉のことは、誰もが称賛するのではないでしょうか。劇団四季の舞台などに子役として出演した経験もある佐野晶哉は、今回は「何か1つのことに夢中になると、ほかのことが全く見えなくなってしまう」という、愛おしくはあるけれど、ちょっと(かなり?)危なかっしくもあるジュゼッペに完璧にハマっており、その純粋さがありありと伝わってくる、伸びやかな歌唱そのものに感動があります。

それを証明するかのように、原作小説の作者であるいしいしんじは、アフレコに立ち会った時に、体を動かしながら演じる佐野晶哉を見て「『今、天才を見ているんだ』と思いました。ジュゼッペってある意味なんでもできる天才なので、天才じゃないと演じられないでしょうから」と、心からの称賛のコメントを送っているのです。

(C)2001 いしいしんじ/新潮社 (C)2025映画「トリツカレ男」製作委員会
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さらには、笑顔に影のある女の子・ペチカを演じた上白石萌歌と佐野晶哉のデュエットは一生聴いていられるほどの多幸感があります。

変わりものだけど親友のジュゼッペを心から心配するハツカネズミのシエロ役の柿澤勇人、ギャングの親分なのに憎めない理由もあるツイスト親分の山本高広も、キャラクターの個性に合った歌唱を披露。それぞれが劇場のスクリーンで、迫力の音響で聴いてこその感動があるとも断言できるのです。しかも、劇中のミュージカルソングおよび主題歌『ファンファーレ』を手掛けたのは、映画『花束みたいな恋をした』のインスパイア楽曲「勿忘(わすれな)」の大ヒットでも知られるAwesome City Club。それぞれがメロディアスで、言うまでもなく素晴らしいクオリティーで、メンバーのatagiは劇伴も担当しています。最後の最後まで、ぜひ聞き入ってほしいです。さらに、めちゃくちゃ良い人のレストランの店長役の松山鷹志や、ペチカの母の水樹奈々といった声優陣のハマりっぷりにも、ぜひ楽しみにしてください。

3:「夢中になること」を肯定してくれる物語

本作の基本的なあらすじは、何かに夢中になってばかりの青年のジュゼッペが、公園で風船売りをしている女の子のペチカに一目ぼれをして、なんとかアプローチをしようと奮闘するという、一途なラブストーリーです。

恋には不器用だけど、彼女が本当に大好きで、時には自分の恋の成就なんかよりも、彼女の悩みごとを優先してしまうジュゼッペのことを、誰もが好きになれるのではないでしょうか。

(C)2001 いしいしんじ/新潮社 (C)2025映画「トリツカレ男」製作委員会
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しかしながら、本作は良い意味で、ほのぼのとした幸せなラブストーリーだけでは終わりません。後半からはペチカが心に抱える悲しみの一番の理由が明かされ、シエロからの「こんなの間違ってる!」という心からの助言があってもなお、ジュゼッペはペチカの幸せのために、とある行動に出るのです。

(C)2001 いしいしんじ/新潮社 (C)2025映画「トリツカレ男」製作委員会
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その時のジュゼッペの行動はシエロからも言われている通り、客観的には間違った行動なのかもしれませんし、もはや狂気的ですらあるということに、一定の賛否も呼ぶでしょう。

しかし、献身という言葉でも収まらない愛情と、それ以上の不器用さと、それを経てのまさかのクライマックスに、涙する人はきっと多いはずです。

(C)2001 いしいしんじ/新潮社 (C)2025映画「トリツカレ男」製作委員会
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また、ここまでドラマチックな恋でなくても、本作は何かに「トリツカレル」こと、夢中になったことは、もしも自分が本来目指していた、納得できる結果にならなかったとしても、それは別の何か良いことへとつながるのかもしれないという、とても普遍的な人生訓にもなっています。

(C)2001 いしいしんじ/新潮社 (C)2025映画「トリツカレ男」製作委員会
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人は誰しも、他人だけでなく自分自身に対しても、頑張ることや努力をすることに、「こんなことがなんになるんだ」と、冷笑的になってしまうことがあると思います。そんな時に、『トリツカレ男』は、「夢中になること」そのものを肯定してくれる、そんな物語になっていると思うのです。

そこに付随して、「とにかく見て!」と言わざるを得ない理由は、劇中の最大の感動ポイントこそがネタバレ厳禁であり、まだ見ていない人に伝えることが難しいことにもあります。見終われば、「トリツカレ男」という奇妙にも思えかもしれないタイトルに必然性があるとわかるはず。シーンの1つ1つを思い出せば、見ている時とはまた違った感慨が生まれるでしょう。

まとめ:傑作アニメ映画が埋もれてしまいかねない状況が歯がゆい! だから見て!

最後になりますが、昨今では国民的な人気を得た漫画およびテレビアニメの劇場版の超特大ヒットが話題になる一方で、『トリツカレ男』のように単体で展開するアニメ映画が、なかなか注目されづらいという、歯がゆい現状があると思います。

しかも『トリツカレ男』は、同日に『劇場版 呪術廻戦「渋谷事変 特別編集版」×「死滅回游 先行上映」』や『羅小黒戦記2 ぼくらが望む未来』が上映スタートし、IMAXで先行リバイバル上映された『もののけ姫』が通常スクリーンでも拡大公開、さらには1週前から『映画 すみっコぐらし空の王国とふたりのコ』も公開中と、ファンが多いアニメ映画が渋滞していたため、「選ばれなくなってしまうタイミング」になってしまったと思います。

また、原作となるいしいしんじの小説は、舞台化もされている、コアなファンがいる作品ではあるのですが、刊行されたのが2001年とかなり前で、今では知らない人もかなり多かったことでしょう。そのいしいしんじは「映画化のお話は以前にもいくつかあったんですが、色々な理由で立ち消えになっていました。今回、シンエイ動画プロデューサーの吉田有希さんと初めてお会いしたとき、吉田さんのトリツカレ方がすごくて(笑)。大切にしてくださる方のところに行けそうだなとホッとしましたね」とも語っています。

つまりは、『トリツカレ男』は「長い時間をかけて最高の形で映画化された」のです。そこまでの作品が、実際に見た人から絶賛の嵐にもなっているにも関わらず、「見る前のキャラクターデザインの賛否」や「公開タイミング」で見られなくなってしまうというのは、とてつもなくもったいないと思います。

『トリツカレ男』は、ただでさえ少なかった上映回数が今週末から減らされ、しかも再来週の11月21日には細田守監督作『果てしなきスカーレット』も上映開始となり、さらに見ることそのものが難しくなることも考えられます。

一方で、絶賛に次ぐ絶賛の声がさらに加速すれば、『アイの歌声を聴かせて』などと同様にロングランをする、ずっと愛される傑作として語られ続けることも十分にあり得ると思うのです。

また、『窓ぎわのトットちゃん』や『化け猫あんずちゃん』など傑作ぞろいのシンエイ動画制作のアニメ映画はこれからも注目されるべきですし、12月5日公開の『ペリリュー 楽園のゲルニカ』にも大期待できます。だからこそ、もう一度言います。『トリツカレ男』をまだ見ていない人は、今すぐに劇場上映を確認し、見に行ける回を予約して、最優先で見に行ってください!

※高橋渉監督の高は、はしごだかが正式表記

文:ヒナタカ

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