1. トップ
  2. ファッション
  3. 「アール・デコとモード 京都服飾文化研究財団(KCI)コレクションを中心に」展が三菱一号館美術館で開催中

「アール・デコとモード 京都服飾文化研究財団(KCI)コレクションを中心に」展が三菱一号館美術館で開催中

  • 2025.11.14

こんにちは。フリーキュレーターのSEIJIです。価値観や表現方法が多様化しているアートの世界を、展覧会やニュースに注目したコラムにしてお届けする「今どきのアート」。

今年で100周年を迎える装飾芸術の博覧会にちなんだ展覧会を紹介します。

アール・デコ博覧会から100周年を迎えた記念の展覧会「アール・デコとモード京都服飾文化研究財団(KCI)コレクションを中心に」展が三菱一号館美術館で華やかに開催中!

出典:シティリビングWeb

ラウル・デュフィ《ポワレの服を着たモデルたち、1923年の競馬場》1943年 石橋財団アーティゾン美術館

2025年は装飾芸術の博覧会、通称アール・デコ博覧会から100年目となる節目の年。

フランスのパリで開催されたこの博覧会では「モード」が中心的な主題のひとつでした。

この記念の年に開催されている三菱一号館美術館の展覧会では、世界的な服飾コレクションを誇る京都服飾文化研究財団(KCI)が収集してきたアール・デコ期の服飾作品と資料類約200点に、国内外の美術館・博物館や個人所蔵の絵画、版画、工芸品などを加え合計約310点の作品を展示。現代にも影響を与え続ける100年前の「モード」に迫ります。

アール・デコ博覧会の役割と最新モード

第一次世界大戦後、「狂乱の時代(Les Années Folles)」といわれた当時のフランスでは、高級産業品の輸出が拡大し、なかでも服飾品の輸出が急増。

アートやモードなどの文化が華々しく開花した社会状況を背景に、1925年にパリで開催された通称アール・デコ博覧会。

アール・デコ博覧会では服飾が芸術性の高い産業のひとつに位置づけられ、全体で5つのグループに分けられた展示のうちのひとつが「服飾」に充てられたのです。

衣服や宝飾品、香水、帽子や靴など、パリ屈指のクチュリエ、宝飾メーカー、香水メーカーらによる最新の品々が展示され、会場となったグラン・パレやエレガンス館、ブティック通り、そしてポール・ポワレ(1879-1944)の川船を使用した展示は、各国のメディアの耳目を集めました。

出典:シティリビングWeb

ポール・ポワレの川船 1925年 ポストカード 京都服飾文化研究財団

展覧会のみどころ

同展では、ポール・ポワレのデイ・ドレス、ジャンヌ・ランバンのイヴニング・ドレス、シャネルのデイ・アンサンブル、ジャン・パトゥのビーチウェアなど、パリ屈指のメゾンが生み出す1920年代のドレスが多数展示され鑑賞者を魅了します。

出典:シティリビングWeb

ジャンヌ・ランバン イヴニング・ドレス 1920年代前半 京都服飾文化研究財団 撮影:畠山崇

出典:シティリビングWeb

ジャン・パトゥ ビーチウェア 1929年頃 京都服飾文化研究財団 撮影:畠山崇

出典:シティリビングWeb

シャネル デイ・アンサンブル 1928年頃 京都服飾文化研究財団 撮影:広川泰士

また同展は、アール・デコ博覧会から100年を記念し、当時の服飾の流行を、絵画、工芸、グラフィック作品などとともに総合的に検証。

例えば、靴を誂える際のヒールのサンプル。ラインストーンや手彩色による細密で精巧な装飾が足元を艶やかに彩ります。

出典:シティリビングWeb

ヒール 1925年頃 京都服飾文化研究財団 撮影:広川泰士

日本の漆芸を学んだ工芸家ジャン・デュナンは漆を金属に塗布するなど、斬新なアイデアで服飾小物を多数制作。

出典:シティリビングWeb

ジャン・デュナン バックル[中右] コンパクト[上][中左][下] 1925年頃 京都服飾文化研究財団 撮影:畠山崇

女性をテーマにした絵画作品

さらに、知られざる画家ジャクリーヌ・マルヴァルやモイーズ・キスリング、ラウル・デュフィのアール・デコ期の絵画に描かれた女性たちの絵画を展示。色彩あざやかな絵画に感性もブラッシュアップです!

出典:シティリビングWeb

ジャクリーヌ・マルヴァル《ヴァーツラフ・ニジンスキーとタマラ・カルサヴィナ》 1910年頃 個人蔵/ジャクリーヌ・マルヴァル委員会(パリ)協力

出典:シティリビングWeb

モイーズ・キスリング《 ファルコネッティ嬢》 1927年 ポーラ美術館

100年前の活動的な女性を彩ったジュエリー、腕時計、化粧道具(コンパクト)など、現代につながる様々なアイテムが集結

服飾や絵画に続き、鑑賞者を引き込むのが、ルネ・ラリックの アトマイザー、カルティエ製のフルーツサラダ・リング、ダンヒルの時計付きライター、カネボウ化粧品のルースパウダー入りコンパクト(二種)など、レトロでありながら精緻で美しいアイテム作品がじっくりゆっくり堪能できます。

出典:シティリビングWeb

ルネ・ラリック アトマイザー「サン・アデュー(さよならは言わない)」 ウォルト社 1929年 箱根ラリック美術館

出典:シティリビングWeb

時計付きライター ダンヒル社 1920年代 個人蔵 撮影:若林勇人

出典:シティリビングWeb

ルースパウダー入りコンパクト(二種) 1920年代初頭 カネボウ化粧品(アンティークコンパクトコレクション) 撮影:若林勇人

アール・デコって?

アール・デコは直線や幾何学模様を特徴としたファッションやインテリアあるいは建築にみられる装飾様式。20世紀前半にフランスをはじめヨーロッパやアメリカで流行し、植物に象徴される有機的で自然な曲線を特徴としたアール・ヌーヴォーとは対照的なフォルムを生み出しました。華麗で機能性をもった洗練されたフォルムが魅力といえるでしょう。

学芸員からのメッセージ

「アール・デコの時代は、女性たちが家の外に出て、さまざまに活動するようになった時代です。その時代の熱量を、展覧会のさまざまな作品から感じていただけたらと思います。60点の素晴らしいドレスとともに、色鮮やかな油彩画、香水瓶などの工芸品、指輪や時計などの宝飾品など、複合的なアール・デコの魅力を感じてください!」

2026年1月25日(日)まで。展覧会の詳細は下記のURLからご確認ください。

三菱一号館美術館

https://mimt.jp/ex/artdeco2025/#outline

プロフィール/SEIJI(小太刀正史)

フリーキュレーター。MeDEL個人事務所主催。学芸員の目線から美術館の情報を発信する活動を始める。自身もオブジェ作家として活動歴あり。

OBJECT東京展入選 From A The art日本オブジェ部門佳作 日本文化デザイン会議

ETDA展参加など。

元記事で読む
の記事をもっとみる