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【北山宏光】「歴史を紡いできたこの作品を、僕の肉体を通して最大限表現していきたい『醉いどれ天使』特別インタビュー<前編>

  • 2025.11.12

舞台のことはもちろん、役と向き合う中で見えてきた人間らしさまで、丁寧にまっすぐに語ってくれました。前編、後編に分けてお届け!

「陽が昇るだけで幸せを感じる。そんな時代の温度も伝わったらうれしいです」

北山宏光さん

──6年ぶりとなる主演舞台『醉いどれ天使』への出演が決まったときのお気持ちから聞かせてください。

「正直、6年もやっていなかったっけ?という感覚なのですが、振り返ると、ちょうど転機のような時期にこのお話をいただいて、自分にとってすごく意味があるタイミングだったんです。歴史を紡いできた作品だし、戦後の闇市っていう時代背景も含めて、令和に演じるというのが挑戦的で面白いなって。この作品の歴史を最大限に受け取って、それを自分の肉体を通して表現しながら違うものにしていくということにとても魅力を感じて、すごくワクワクしました」

──ストーリーで描く戦後という時代を、どう捉えていますか?

「僕には考えられないほど根性があっただろうし、メンタルも体力面でもとてもハードな時代だったと思います。それが当たり前の時代だったから必死に生き抜こうとするんでしょうけど。でも、だからこそ幸せのハードルが今とは全然違うとは思っています。花が咲いているだけできれいだなと思えたり、小さな幸せに気づける人生だったのかもしれない。今の時代と比べて不便なこともあるけど、ピュアに感じられるものが多かったんじゃないかなと思います」

──戦後の時代を生きる人たちにとって、生き延びるための糧は何だったと思いますか?

「シンプルに陽が昇ることとか、家族がいることとか、かな。洗濯物が干してあって、大人の服と子どもの服が並んでいるだけで、生きているんだなって希望や幸せを感じられるんじゃないかなと思います。セリフにもそのような表現があるんです。今の時代ではなかなか味わえない感覚かもしれないですね」

「“強がり”の奥にある、人間らしさをうまく演じられたら」

──脚本を最初に読んだときの印象は?

「台本の段階で、“本って大事だな”と再認識しました。正直、『このセリフ、僕は言わないよな』ってなることはあるものなんですけど、今回は全然そういうのがなくて。だから、稽古が始まってからもすごく自然に動けた気がします。共演の渡辺大くんとも細かく動きを決めるというより、『なんとなくここに最後座れたらいいよね』ぐらいのテンションでスタートできたんです。そこに演出の深作健太さんが『こういう側面も持っておいたほうがいいよ』って、リアリティのある肉付けをしてくれるので、早くキャッチしやすいなと稽古をしていても感じました」

──稽古が始まってから、どのような手応えを感じていますか?

「まだ稽古に入って2週間ぐらいですが(取材時)、少しずつ、“これかも”っていう感覚は見えてきました。たとえば縦軸で見たときに、この言い回しはこうだな、とか、エンディングの顔ってどんな表情だろう?とか。セリフに隠れたサブテキストを持って演じてくださいっていう演出もあるので、自然と登場人物に厚みが出てきて、自分の受け取り方も変わるし、セリフの言い方も変わってくる。少しずつみんなの軸ができあがってきている感じです」

──今回演じる松永という役は、北山さんにとってどんな印象ですか?

「多分、幼少期はすごく普通で、弱虫な子だったんじゃないかな。でも、戦争や環境によって“強くならなきゃ”という状況になって、人を傷付けてでも自分の強さを証明しないといけなくなってきた。本当は優しくされたいけど、素直に受け取れなくて『うるせえ!』って突っぱねちゃうみたいな(笑)。そういう鎧をまとっているけれど、脱いでいったら実はすごくやわらかい部分がある、みたいなすごく人間くさいキャラクターだなと僕は思っています。人間ってみんなそういう面があると思っているので、そういう部分を演じるのも楽しみです」

PROFILE

北山宏光(きたやま・ひろみつ)

1985年9月17日生まれ、神奈川県出身。2023年9月、TOBEとともに新しいエンターテインメントに挑戦していくことを発表。23年11月17日にデジタルシングル『乱心-RANSHIN-』でソロデビュー。楽曲制作やライブの演出も手掛けるほか、俳優活動など幅広く活躍している。

舞台『醉いどれ天使』

舞台『醉いどれ天使』

敗戦後の東京。戦争で帰る場所を失った人々は、闇市でその日その日を生き延びていた。ある夜、銃創の手当てを受けに、闇市の顔役・松永(北山宏光)が真田(渡辺大)の診療所を訪れる。一目見て肺病に侵されていると判断した真田は治療を勧めるが、松永は言うことを聞かずに診療所を飛び出し、闇市の様子を見回るのだった。松永の采配によって落ち着きを保っていた闇市だったが、松永の兄貴分・岡田(大鶴義丹)が出所し、闇の世界の力関係に変化が起きていく……。

【東京公演】2025年11月7日(金)~23日(日)/明治座
【愛知公演】2025年11月28日(金)~30日(日)/御園座
【大阪公演】2025年12月5日(金)~14日(日)/新歌舞伎座

出演:北山宏光
渡辺大、横山由依・岡田結実(Wキャスト)、阪口珠美/佐藤仁美、大鶴義丹

衣装:ジャケット ¥96800/MAHITO MOTOYOSHI(JOYEUX) 問い合わせ先 03・4361・4464

撮影/井澤和己 ヘアメイク/大島智恵美 スタイリング/柴田圭 構成・取材・文/高橋夏実(Spacy72)

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