1. トップ
  2. エンタメ
  3. 心に響く歌声とドラマティックな半生、女性歌手の伝記映画3選

心に響く歌声とドラマティックな半生、女性歌手の伝記映画3選

  • 2025.11.11

『ジュディ 虹の彼方に』© Pathé Productions Limited And British Broadcasting Corporation 2019
 
芸術の秋、各地ではコンサートや合唱コンクールなどが開催されています。そこで今週の映画コラムでは、「歌」に注目。著名な歌手の映画やドキュメンタリーは数多くあるので、今回は時代を象徴する女性歌手の伝記映画に絞って3作品を紹介します。

47歳で散ったミュージカルスターをレネー・ゼルウィガーが熱演 『ジュディ 虹の彼方に』

『ジュディ 虹の彼方に』© Pathé Productions Limited And British Broadcasting Corporation 2019

47歳で散った伝説のミュージカル女優にして歌手のジュディ・ガーランド。ハリウッド黄金期を象徴する映画『オズの魔法使』で主人公ドロシーを演じ、17歳にして一躍スターとなったジュディは、数々のヒット作に出演し栄光をつかんだ一方、少女の頃からショービジネスの裏側で大人たちの金儲けの道具として壮絶な経験を強いられてきました。スリムな体型をキープし、眠くならずに何時間でも働けるようにと薬漬けにされ、ハラスメントにあい、その結果、不眠症や不安神経症に生涯悩まされることになります。

『ジュディ 虹の彼方に』© Pathé Productions Limited And British Broadcasting Corporation 2019

1968年の冬、ジュディは単身でロンドンの舞台に立っていました。この頃の彼女は、度重なる遅刻や無断欠勤のために映画のオファーも途絶えて生計も苦しい状況でしたが、巡業の舞台に立てば華やかなパフォーマンスで観客を魅了していました。
 
しかし、キャリアの暗転に加えて、幼い子どもたちの心が母親である自分から離れていく恐れもあり、舞台で失態をおかしてしまいます。「もう終わった」と誰もが思うような状況でも、起死回生にかけたジュディは、懇願して立ったステージで、命を燃やし尽くすかのようなパフォーマンスを披露します。彼女が亡くなったのは、そのわずか半年後でした。

『ジュディ 虹の彼方に』© Pathé Productions Limited And British Broadcasting Corporation 2019

ジュディを演じたのは、レネー・ゼルウィガー。『ブリジット・ジョーンズの日記』シリーズで知られるレネーですが、かつてミュージカル映画『シカゴ』でゴールデン・グローブ賞主演女優賞を受賞するなど歌唱力はお墨付き。とはいえ、ハリウッドを代表するミュージカル女優を演じるということで相当なレッスンを重ねたそうですが、見事に自身で歌いきっています。

『ジュディ 虹の彼方に』© Pathé Productions Limited And British Broadcasting Corporation 2019

ラストシーンで披露される名曲『オーバー・ザ・レインボー』は、舞台のスポットライトの下でしか生きられないジュディの輝きと悲しい宿命が伝わってくるような圧巻の歌唱です。レネーは本作でアカデミー賞主演女優賞に輝きました。

『ジュディ 虹の彼方に』

2019年製作

Blu-ray ¥5,280/DVD ¥4,180
※Blu-ray、DVDともに<廉価版>もあり

発売・販売元:ギャガ

© Pathé Productions Limited And British Broadcasting Corporation 2019

美声と美貌を誇るオペラ歌手のドラマティックな人生をひもとく 『私は、マリア・カラス』

『私は、マリア・カラス』© 2017 - Eléphant Doc - Petit Dragon - Unbeldi Productions - France 3 Cinéma

唯一無二の美声と歌唱力、役柄になりきれる表現力、そしてエキゾチックな美貌で、観衆を虜にしたオペラ歌手、マリア・カラス。歌の才能だけでなく、往年のスターらしくスキャンダルもまた彼女の名声を広めることに一役買っていました。
 
父親くらい年の離れた男性との結婚、歌劇場の支配人との対立、そしてギリシャの大富豪オナシスとの大恋愛と突然の悲恋。オナシスは、元ケネディ大統領夫人のジャッキーと結婚しますが、そのことをマリアは新聞で知ったのでした。
 
そんなマリア・カラスの人生は幾度か映画化されていますが、彼女に魅了された映像作家のトム・ヴォルフが未完の自叙伝やプライベートな手紙、未公開映像などを入手し、新たな作品として映画化されました。

『私は、マリア・カラス』© 2017 - Eléphant Doc - Petit Dragon - Unbeldi Productions - France 3 Cinéma

歌声も人生もドラマティックで、圧倒的な存在感を放つマリア・カラスに見とれてしまう本作。失恋に心を痛めるひとりの女性であり、バッシングにあっても我が道を行く強い信念を持った女性でもあり、さまざまな面を持った“20世紀のディーヴァ”の真実に心打たれます。

『私は、マリア・カラス』

2017年製作

DVD<廉価版> ¥1,257
発売・販売元:ギャガ

© 2017 - Eléphant Doc - Petit Dragon - Unbeldi Productions - France 3 Cinéma

不世出の歌姫の光と影、パワフルな歌声に魅了される 『ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODY』

『ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODY』
© 2022 NYBO Productions LLC. All Rights Reserved.

読者世代なら、リアルタイムで映画『ボディガード』を観た人も多いのではないでしょうか。筆者も映画館に観に行きました。当時、主演作が次々公開されていたケビン・コスナーと映画初出演のホイットニー・ヒューストンが共演するということで話題になったロマンティック・サスペンス映画ですが、細かいストーリーは忘れてしまったものの、ホイットニーがパワフルに切々と歌い上げる主題歌『I Will Always Love You』で反射的に号泣したことだけは覚えています。
 
この歌はホイットニーの最大のヒット曲となりましたが、1985年にデビューして2012年に48歳で亡くなるまで数多くの素晴らしい曲を生み出した歌姫の半生を描いたのが本作です。

『ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODY』
© 2022 NYBO Productions LLC. All Rights Reserved.

ホイットニーを演じたのはナオミ・アッキーで、スタンリー・トゥッチらが共演、『ボヘミアン・ラプソディ』のアンソニー・マクカーテンが脚本を手掛けています。劇中で流れるヒット曲のほとんどはホイットニー自身の歌唱を使っているので、あの印象的な歌声を懐かしく楽しむことができます。
 
晩年はスキャンダル続きで波乱の人生でしたが、音楽史に刻まれる偉業を残して駆け足でこの世を去ってしまった不世出の歌姫に対する敬意が伝わってくる感動作です。
 

『ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODY』

2022年製作

デジタル配信中
ブルーレイ&DVDセット ¥5,280

発売・販売元:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

© 2022 NYBO Productions LLC. All Rights Reserved.


※画像・文章の無断転載はご遠慮ください
※価格は、断りのある場合を除き、消費税込みで表示しています
※この記事の内容および、掲載商品の販売有無・価格などは2025年11月時点の情報です。販売が終了している場合や、価格改定が行われている場合があります。ご了承ください

構成・文

ライター
中山恵子

中山恵子

ライター。2000年頃から映画雑誌やウェブサイトを中心にコラムやインタビュー記事を執筆。好きな作品は、ラブコメ、ラブストーリー系が多い。趣味は、お菓子作り、海水浴。

元記事で読む
の記事をもっとみる