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大人気中国アニメの続編『羅小黒戦記2 ぼくらが望む未来』ついに公開!異例の大ヒットを果たした「羅小黒戦記」はなぜ日本人にも刺さったのか?

  • 2025.11.8

2020年に花澤香菜、宮野真守、櫻井孝宏の豪華キャストによる日本語吹替版が公開され、多くのファンを生みだした中国アニメーションの傑作『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ) ぼくが選ぶ未来』。その待望の続編『羅小黒戦記2 ぼくらが望む未来』が、丸5年の歳月を経て、11月7日より公開となった。

【写真を見る】シャオヘイはルーイエと共に真実を求める旅に出る(『羅小黒戦記2 ぼくらが望む未来』)

黒猫の妖精、シャオヘイ。前回よりちょっぴり大人に(『羅小黒戦記2 ぼくらが望む未来』) [c]2025 Beijing HMCH Anime Co.,Ltd
黒猫の妖精、シャオヘイ。前回よりちょっぴり大人に(『羅小黒戦記2 ぼくらが望む未来』) [c]2025 Beijing HMCH Anime Co.,Ltd

愛くるしい黒猫の妖精シャオヘイ(声:花澤)と、“最強の執行人”と呼ばれるミステリアスな人間、ムゲン(声:宮野)が繰り広げる冒険ファンタジーは、なぜこれほど観客の心を惹きつけるのか。本稿では、新作公開にあわせたおさらいとして、「羅小黒戦記」誕生の経緯や前作の物語を振り返りながら、本シリーズの魅力を紹介したい。

口コミで人気上昇!日本でも根強い人気を獲得

森を追われたシャオヘイの居場所を求める冒険が描かれる『羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来』 [c]Beijing HMCH Anime Co.,Ltd
森を追われたシャオヘイの居場所を求める冒険が描かれる『羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来』 [c]Beijing HMCH Anime Co.,Ltd

「羅小黒戦記」は、中国のアニメ監督、木頭(MTJJ)と彼が代表を務めるアニメ制作会社“寒木春華(HMCH)”スタジオが制作したWEBアニメシリーズが原点。2011年3月に動画サイトで初公開されたWEB版ショートアニメの第1話は、木頭監督がたった一人で半年かけて完成させたものだ。黒猫の妖精シャオヘイを主人公に、妖精と人間が共存する不思議な世界を描いたこの作品は、シャオヘイのキュートなSNS用スタンプの流行と共に、じわじわと人気上昇。これまでにシリーズ通して40話が制作され、中国発の動画配信プラットフォームbilibiliにおける総視聴回数は7億回を突破。現在も不定期で更新中だ。日本でも今年10月からWEB版をテレビサイズに編集した日本語吹替版の放送がスタートしている。

そのWEBアニメシリーズの劇場版として、2019年9月に中国全土で公開されたのが同タイトルの『羅小黒戦記』である。MTJJ監督と同世代の若手スタッフ50人ほどの少人数で制作したこの映画は、中国国内での興行収入3.15億人民元(当時のレートで約49億円)のヒットを記録。また中国公開と同時期、おもに日本在住の中国人をターゲットに簡単な日本語字幕を付けたバージョンを国内のミニシアター数か所で公開したところ、瞬く間にSNSで評判が広がり、各上映の1週間前にはほぼ日本人による予約で満席になってしまうという想定外の事態が発生。この人気を受けて、翌年にアニプレックス制作、配給で豪華声優陣による日本語吹替版の全国公開が決まり、半年に及ぶロングラン上映となった。

逃げようとするたび、ムゲンに捕まるシャオヘイ(『羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来』) [c]Beijing HMCH Anime Co.,Ltd
逃げようとするたび、ムゲンに捕まるシャオヘイ(『羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来』) [c]Beijing HMCH Anime Co.,Ltd

前作『羅小黒戦記』の物語はWEBアニメシリーズよりも4年前、6歳の時のシャオヘイの冒険を描く前日譚。いわばエピソードゼロにあたるので、WEBアニメをまったく知らない人が観ても楽しめる作品になっている。舞台は近代化が急速に進んだ現代の中国。森を人間に開発されて居場所を失った黒猫の妖精シャオヘイと、人間のエゴを許すことができない妖精フーシー(声:櫻井)、そして人と妖精の共存を願い、両者の間に立とうとする人間ムゲンとの予期せぬ出会いと激しい戦いが描かれていく。

街で出会った妖精、フーシーに迎え入れられるシャオヘイ(『羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来』) [c]Beijing HMCH Anime Co.,Ltd
街で出会った妖精、フーシーに迎え入れられるシャオヘイ(『羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来』) [c]Beijing HMCH Anime Co.,Ltd

自然破壊の問題や、異なる価値観や文化を持つ者たちがどのように共存していくかという普遍的なテーマを縦軸に、シャオヘイが本当の居場所を見つけるまでの精神的な成長を横軸にしたドラマチックで重層的なストーリー。最初は人間であるムゲンのことを妖精の敵とみなし強い反発を見せていたシャオヘイが、ムゲンと一緒に長い旅を続けるうちに彼を少しずつ信頼していく過程には、世界中で様々な対立や争いが起こっているいまだからこそ胸に刺さる大切なメッセージが込められている。たった一人で必死に生きてきた孤独な幼子のシャオヘイが、ついにはムゲンを最高の“師匠”と認め、ずっとそばにいたいと心から願うようになる展開は何度観ても泣けてしまう。

キャラ造形やそれぞれの能力など見どころポイント満載

ご飯をおいしそうに食べる姿がかわいすぎる(『羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来』) [c]Beijing HMCH Anime Co.,Ltd
ご飯をおいしそうに食べる姿がかわいすぎる(『羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来』) [c]Beijing HMCH Anime Co.,Ltd

シャオヘイとムゲンをはじめ、チャーミングなキャラクターたちの細やかな描写も本作の大きな魅力の一つ。まずはなんといっても主人公のシャオヘイのかわいらしさ。花澤の透明感のある優しい声は、無邪気でまっすぐなシャオヘイのイメージにぴったりだ。妖精は人間の姿にもなることができるという設定で、シャオヘイの場合は黒い子猫と人間の子どもの姿の2形態。どちらの姿も小さくて、丸っこくて、思わず守ってあげたくなる。食べることが大好きで、おいしそうなものを見ると目がキラーンと光るところもかわいい。

シャオヘイとフーシーのもとに、執行人ムゲンが現れる(『羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来』) [c]Beijing HMCH Anime Co.,Ltd
シャオヘイとフーシーのもとに、執行人ムゲンが現れる(『羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来』) [c]Beijing HMCH Anime Co.,Ltd

一方のムゲンは、妖精を支援するための組織“館”に所属する執行人。不穏な動きをする妖精たちを法に基づいて捕え、拘束するのが任務だ。人間でありながら“最強の執行人”として恐れられる彼は、自身が一部の妖精たちから疎まれていることは認識している。常に冷静沈着、齢何百歳ともいわれる人間離れした存在だが、肉もまともに焼けないほど料理が下手だったり、スマホを水没させたりと、見た目に似合わずポンコツな面があるギャップも人気の理由。ムゲンのクールなイケメンぶりと愛すべき天然っぽさの両方を表現する宮野の繊細な演技もハマっている。

『羅小黒戦記』のバトルアクションを存分に楽しむために押さえておきたい大事なポイントは、妖精は生来、自身の霊の属性に基づいた特別な能力を持っていて、修行をすることでその能力を使いこなせるようになるという設定。人間も修行によって、能力を得ることが可能だ。いくつもの異なる種類の能力があるなか、シャオヘイとムゲンが偶然にも“御霊系・金”と“空間系”という同じ系統の能力を持っていたのも運命的だった。

フーシーの不審な動きを察知したムゲンによってシャオヘイは捕えられてしまい…(『羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来』) [c]Beijing HMCH Anime Co.,Ltd
フーシーの不審な動きを察知したムゲンによってシャオヘイは捕えられてしまい…(『羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来』) [c]Beijing HMCH Anime Co.,Ltd

ちなみに金属性は腕につけた手甲など周囲にある金属を自在に操って戦うことができる能力。またムゲンの“空間系・己界”の能力は、外部の物体を瞬時に自分の霊域(生命力と能力の源となる異次元空間)に飲み込むことができるのに対し、シャオヘイの“空間系・領界”の能力は自分の霊域を外部に向けて広げることができる。加えて、シャオヘイは例外的にもう一つ、“空間系・転送(テレポート)”の能力も持つ。前作のクライマックスで、シャオヘイとムゲンがこれらの能力を駆使しながら共闘したアクションシーンは最高にかっこよかった。

そのほかにも、様々な能力、個性を備えたキャラクターたちが多数登場。出演シーンが少ないキャラクターであっても、一人一人に深掘りしたくなるほどのバックボーンがちゃんと用意されているため、作品の世界観に奥行きがあるのが特徴だ。

背景美術やアクションシーンの迫力など圧巻の映像表現

優しく温かみのあるタッチが魅力(『羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来』) [c]Beijing HMCH Anime Co.,Ltd
優しく温かみのあるタッチが魅力(『羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来』) [c]Beijing HMCH Anime Co.,Ltd

独自の世界が構築された長編アニメーション作品として高い完成度を誇る映像表現にも、ぜひ注目してほしい。3DCGアニメが全盛のいま、木頭監督が得意とする手描きの2Dアニメで制作された映像は、日本人にとってもどこか懐かしくぬくもりのある雰囲気が漂う。それでいて、本作の重要な要素となるアクションシーンのスピード感は圧倒的。わずか1、2秒の間に複数のアクションが立て続けに描かれるので一瞬たりとも目が離せない。その点では、特に初めて観る時は字幕版ではなく吹替版のほうが集中できるかもしれない。

また、キャッチーなキャラクターデザインと同じくらい見応えがあるのが、背景美術の美しさ。中国大陸を横断するかのようなシャオヘイとムゲンのロードムービーのなかで描かれる緑の森、青い海、田舎の村から大都会へと移り変わる色彩豊かな景色の数々。さらに静寂と安らぎを感じる霊域のなかにあるムゲンの部屋や、現実世界とは異なる空間に存在する妖精会館の全景まで、劇場版にふさわしい壮大なスケールの映像美が堪能できる。

すでに中国では100億円超え!シャオヘイとムゲンの新たな冒険が始まる

本作で初登場となる、館の長老チーネン。人間は支配するべきと考えている(『羅小黒戦記2 ぼくらが望む未来』) [c]2025 Beijing HMCH Anime Co.,Ltd
本作で初登場となる、館の長老チーネン。人間は支配するべきと考えている(『羅小黒戦記2 ぼくらが望む未来』) [c]2025 Beijing HMCH Anime Co.,Ltd

このたび日本公開となる『羅小黒戦記2 ぼくらが望む未来』は、中国本国では7月から公開され、9月の時点ですでに前作の興収を上回る5億人民元(現在のレートで約100億円)を突破。本シリーズがまさしく中国を代表するアニメとして大勢の人に愛されていることを証明した。新作で描かれるのは、前作から2年後の物語。大好きな師匠ムゲンと共に、小さな村で穏やかに修行の日々を過ごしていたシャオヘイだが、ある日、人間の軍隊が妖精会館の一つを襲撃した事件をきっかけに新たな試練に立ち向かうことになる。

シャオヘイの姉弟子ルーイエ(『羅小黒戦記2 ぼくらが望む未来』) [c]2025 Beijing HMCH Anime Co.,Ltd
シャオヘイの姉弟子ルーイエ(『羅小黒戦記2 ぼくらが望む未来』) [c]2025 Beijing HMCH Anime Co.,Ltd

日本語吹替版と字幕版の同時公開となり、吹替版では花澤、宮野のほか、シャオヘイの姉弟子ルーイエ役の悠木碧や、館の長老チーネン役の諏訪部順一、同じく館の長老シームーズ役の石田彰らが新たに出演。また、前作にも登場した総本部の執行人ナタ役の水瀬いのり、同じく執行人のキュウ爺役のチョー、龍遊市の館の館長パンジン役の大塚芳忠が続投する。

前作ではわからなかった妖精会館の詳しい仕組み、ますます増えた興味深い妖精キャラクターたちなど、観るほどに魅了される「羅小黒戦記」ワールド。前作のファンも、初めて本作に触れる人も、この機会に大きいスクリーンでシャオヘイの新たな冒険を楽しもう!

文/石塚圭子

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