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身長133センチの女性「私はなぜ私であることを謝っているんだろう」偏見と戦う社会のリアル【作者に聞く】

  • 2025.11.5
ひるのつき子(@tsukkooo)
ひるのつき子(@tsukkooo)

「本当はそんなんじゃないのに」と、見た目で判断されることに口に出せずに嫌な思いをした経験はないだろうか。また、反対に自分が誰かを見た目で判断してしまったことは?この物語は、そんな偏見について私たちに問いかける。

月刊コミックバンチの2023年2月号に掲載されたひるのつき子さん(@tsukkooo)の読み切り漫画『133cmの景色』は、作者自身が2022年の年末にXに投稿するやいなや、11.7万いいねを集めた。リプライやメッセージツールを通して主人公への共感や、続編を求める声が多数寄せられた。この物語を描こうと思ったきっかけと、その想いをひるのつき子さんに聞いた。

ひるのつき子(@tsukkooo)
ひるのつき子(@tsukkooo)
ひるのつき子(@tsukkooo)
ひるのつき子(@tsukkooo)

「戦いに行く覚悟」で仕事をする女性の苦悩

本作は133センチで成長が止まってしまった女性が、食品会社に勤める会社員として偏見と戦いながら奮闘する物語だ。一見して小学生のような主人公が、見た目で判断されるハンデを乗り越え、自分を取り戻していく様子が繊細かつ流麗なタッチで描かれている。恋愛モノかと思えばそうではない、骨太なテーマだ。

低身長のせいで頻繁に小学生と間違えられてしまう吉乃華(よしの・はな)は25歳の会社員。低身長が壁となり、仕事も恋も上手くいかない毎日を送る。能力があっても同じ土俵に立たせてもらえない、恋愛の相手として対等に見てもらえない、それが彼女の悩みだった。

後輩の岩見に、いつも「戦いに行く覚悟で仕事をしている」とこぼす華。何か失敗をすれば「やっぱり」と言われてしまうからだ。必要以上に気を張り、社会を渡っていくため必死にもがく。

「ごめんね」「すみません」謝罪を繰り返す心理

何も悪いことなどしていないのに、見た目で周囲に判断されるたび、彼女が口にするのは「ごめんね」「すみません」といった謝罪の言葉だ。作中、華は何度も謝る。こんな見た目で誤解させて「ごめんね」、不安な気持ちにさせて「すみません」。そうして空気を読み、事を荒立てないよう、これ以上傷つけられないよう、華は「自分が自分であることを謝り続けてしまう」のだ。

落ち込む華に後輩の岩見は、他人から色眼鏡で見られたくないと思っているのに、自分で自分を否定していたら同じ穴の狢ではないかと語る。「見た目とは違う」自分こそが一番よく自分を知っているのだから、胸を張って自分を肯定するべきであり、自分の見た目を恥じなくてはならない理由など誰にもない。岩見の言葉によって華は前向きに進もうとする。

「誰も見た目で判断していないか」読者に問いかける

派手な格好をしているから遊んでそう、メガネをかけているから勉強ができる、体つきががっしりしているから男らしい、華奢で大人しそうに見えるから家庭的。私たちは普段、見た目で何気なく相手を判断してしまいがちだ。

小犬に驚く岩見を見た華は、背丈もあり普段はクールな男性が小さな犬を怖がっているそのギャップについ「かわいい」とこぼしてしまう。そこで華は、岩見の見た目に勝手な人間像という偏見を持っていたことに気づく。自分自身もまた、相手を見た目で判断していたのだ。

見た目だけで判断したくないし、されたくもないが、無意識のうちに誰かを傷つけている可能性を忘れてはいけない。「133センチの景色」はそう、私たちに問いかける。

創作の原点は「病気の影響で成長が止まった女性」のインタビュー

133センチの女性を主人公に物語を描こうと思ったきっかけを尋ねると、「今回の話を描いた直接的なきっかけは、病気の影響で成長が止まった女性のインタビュー記事を読んだ担当さんからの提案でした」と明かす。もともと見た目に関する話に関心があり、過去には『コワモテくんの乙女同盟』という、自分の外見によって素直に趣味を楽しめない主人公の話を描いたことがある。

「外見によって嫌な思いをしたり、性別によって軽んじられた経験があること、私自身も子どものころから病気と共に生きていることなど、同じような体験を通して私にも描けることがあるのではないかと思い挑戦させていただきました」と語る。

主人公のセリフ「いつも戦いに行く覚悟で仕事してるの」に込めた思いについては、「あくまでこの話は『吉乃華』個人の話ではありますが、現状、社会で生きることは誰にとってもある種の戦いだと思っています。何が戦いを生むのか、なぜ戦わなくてはならないのか、一人ひとりが考えていければもう少し優しい社会になるのではないかと感じています」と、作品に込めたメッセージを語った。

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