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27年前、15才の4人が放った“140万の衝撃” “上手さ”では語り切れないヒットの裏側

  • 2025.11.27

「27年前、あの季節の匂いって、どんな色をしていたんだろう?」

冬の冷たさが少しずつほどけ、街の空気に“別れと始まり”の予感が混ざり始める頃。制服の襟に残る白い息、放課後の校庭に伸びる影。あの頃の景色のどこかに、静かに寄り添っていた曲がある。

SPEED『my graduation』(作詞・作曲:伊秩弘将)――1998年2月18日発売

当時、その年齢とは思えないほどの表現力と存在感で日本中を席巻していたSPEED。彼女たちが放った“卒業”をテーマにした一曲は、ただのシーズンソングではなく、時代と世代の心に深く刻まれた“青春の証明”になった。

言葉より早く響いた、“卒業”の温度

『my graduation』がリリースされた1998年の2月。4人が見せる大人びた表情と、まだ15歳のあどけなさ。そのギャップこそが、この曲の熱量を特別なものにしていた。

曲に流れるのは、青春の“終わり”ではなく、むしろ“これから始まる物語”の気配。「あの頃の自分にも、こんな瞬間があったよね」と、誰もが少しだけ胸の奥を締めつけられる。

伊秩弘将によるメロディは、直球の切なさと、どこまでも澄んだ伸びやかさが共存していた。サビで一気に広がる旋律は、卒業式の体育館の天井へと舞い上がるようで、10代ならではの不安と期待がそのまま音に閉じ込められている。

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SPEED-1998年撮影(C)SANKEI

4人の声が描いた“瞬間の強さ”

SPEEDの魅力は、歌がうまいとか、ダンスが揃っているとか、そんな単純な言葉では語り切れなかった。特に今井絵理子と島袋寛子の歌声が、合わさった瞬間に生まれる熱と透明感。その“チームでしか出せない音”こそが、J-POPの中でも唯一無二の存在だった。

特にこの曲では、儚さをにじませる島袋寛子のボーカルが楽曲の説得力を押し上げている。バッキングには、伊秩サウンドらしいキーボードの厚みと、90年代後半のポップスを象徴するストリングスが重なり、青春を一気にドラマへと変えていた。

バンドではなく“4人の物語”として刻まれたヒット

『my graduation』は、SPEED出演の「日清焼そばU.F.O.」CMソングとしてオンエアされ、リリース直後からランキング1位を3週連続で獲得。累計では140万枚を超える大ヒットとなった。

ただし、その成功はタイアップや勢いだけでは説明できない。当時の音楽番組や雑誌には“等身大より少しだけ大人びた4人”がいた。まだ幼いのに、どこか“旅立ち”を知っているような目をしていた。その姿こそが、曲の世界観と重なり、リスナーの記憶に深く染み渡っていったのだ。

時代が変わっても、青春の温度は変わらない

音楽の聴き方が変わり、街の景色が変わり、卒業式の形すら変わってしまった今。それでも『my graduation』が胸に残り続けるのは、誰もが一度は経験した「どうしようもないほどのまっすぐさ」を呼び起こしてくれるからだ。

27年経った今でも、この曲が流れると、あの頃の自分の影がふと横を通り過ぎる。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。