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27年前、語りかけるように溶け合う“5人の歌声” 派手なプロモーションなしで160万ヒットしたワケ

  • 2025.11.25

「27年前、冬の街を歩くと、どんな“匂い”がしていた?」

吐く息が白くほどける季節。街のネオンはきらびやかなのに、心のどこかには小さな不安が残っていた。1998年の始まりは、そんな冷たい風がそっと頬を掠めるような空気だった。その冬の空気に不思議と溶け込むように現れた曲がある。

SMAP『夜空ノムコウ』(作詞:スガシカオ・作曲:川村結花)――1998年1月14日発売

季節の匂いとともに立ち上がるこの一行が、当時の日本の“あの冬の温度”を確かに思い出させてくれる。

冬の静けさに寄り添い、心をほどいた一曲

1990年代後半のJ-POPは、勢いと華やかさがまだ主流だった。力強いビートやダンスナンバーがあふれ、テレビ番組も高揚感をベースにしたものが多かった。

そんな中で『夜空ノムコウ』は、まるで冬の夜のようにしんとした佇まいで登場した。優しいギターの音色。強く重なりすぎない歌声。控えめな装飾。そのすべてが、「静けさって、こんなに心を温めるものだったんだ」と気づかせてくれるようだった。

冬は本来、感情が少し縮こまる季節。でも、この曲は静かに呼吸を整え、寒さの中にあるぬくもりをそっと差し出してくれた。

スガシカオ×川村結花が描いた“冬の青さ”

作詞を手がけたスガシカオの言葉は、日常の隙間にある感情を丁寧にすくい取るような温度を持っていた。決して劇的ではないけれど、誰もが一度は触れたことのある、あの「冬の空気」がそこには確かにあった。

作曲の川村結花が描くメロディは、伸びやかでありながらも、冬の空に漂う淡い青さのような透明感をまとっている。

大きく盛り上げるわけではなく、けれど聴くたびに胸の奥でそっと積もるような深さ。SMAPの声がそこに重なることで、曲全体が“静かな灯り”のように輝き始めた。

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『夜空ノムコウ』を作詞したスガシカオ-2006年撮影(C)SANKEI

冬に響いたSMAPの“素の温度”

5人が自然に溶け合っていく歌声。その距離感が、この曲の最大の魅力だった。声を張らずに語りかけるように歌うスタイルは、当時の冬の街並みと不思議なほど呼応していた。

特に1998年当時は、社会の揺らぎが続き、人々が“強い言葉”より“そっと寄り添う温度”を求めていた時代でもある。だからこそ、この控えめであたたかな表現が大きく愛されたのだろう。豪華さではなく、素朴さで胸に触れる。そんな稀有なバラードだった。

160万枚超の大ヒット。それでも響き方は“静か”

シングルとして160万枚を超える大ヒットを記録した。しかし、派手なプロモーションで押し上がったというより、冬の空気に寄り添うようにゆっくりと広がっていった印象が強い。

音楽番組で披露された際も、派手な照明やステージングはほとんどなく、あくまで曲そのものの“余白の強さ”が前面に出ていた。その姿は、誰かの部屋の灯りがふと漏れ見えるような親密さがあり、観る人の胸に静かに灯りをともし続けた。

冬を越えて、未来へ向かう小さな光

『夜空ノムコウ』は、リリースから27年経った今でも冬の名曲として愛され続けている。

その理由は、季節を描きながらも、人生全体に寄り添う普遍性を持っているからだ。冬は、終わりの季節であり、始まりの季節でもある。その境界線に立つような気持ちを、この曲はそっと言葉にしてくれる。

大きな希望じゃなくていい。小さな光で前に進める――そんな実感をくれる。

あの冬の風の匂いとともに響いた一曲は、今もなお、誰かの夜をやさしく照らし続けている。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。