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27年前、130万枚ヒットが証明した“心地よいロック” 「何度聴いても疲れない」ワケ

  • 2025.11.25

「27年前、あの春の街にはどんな風が吹いていた?」

1998年のゴールデンウィークの入口。少し浮き立つ季節の気配と、どこか移り変わりの早さを感じさせる街のざわめき。その空気の中で、ふっと肩の力を抜かせてくれるようなロックナンバーが静かに、しかし確かな存在感を持って広がっていった。温度も匂いも、あの年の春をそのまま閉じ込めたような一曲だった。

GLAY『SOUL LOVE』(作詞・作曲:TAKURO)――1998年4月29日発売

同日に発売された『誘惑』とともに、2週連続で1位2位を独占するという離れ業を成し遂げ、最終的には130万枚以上のセールスを記録した。『誘惑』とはまた違った強さを放つ、長く愛される軽やかな名曲である。

心にそっと触れるように、穏やかに始まった衝撃

『SOUL LOVE』は、当時すでに国民的バンドとなっていたGLAYの勢いの真っただ中で生まれた。だがそのサウンドは、同時発売された『誘惑』のハードなロック路線とは少し角度を変え、軽やかで空気をはらんだようなバンドアレンジが広がっていく。派手な音の壁ではなく、心地よく抜けていく春の光のような手触りを持っていた。

イントロから走り抜けるギターの音は、爽快さと抜けの良さが同居し、ベースがつくるグルーヴが曲全体を明るく押し出していく。そこにTERUの素直な歌声がすっと乗ることで、軽快なのにどこかやさしいニュアンスが生まれ、「ロックなのに、まっすぐ心がほぐれていく感じ」という独特の感覚がリスナーの間に広がっていった。

TAKUROが紡ぐメロディラインは必要以上にたかぶらず、すっと耳に滑り込む自然さがある。その抑えた温度がかえって心に残り、何度でも聴き返したくなるような“気持ちよさ”が曲全体を包み込んでいた

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GLAY-1998年撮影(C)SANKEI

春の光をまとったような、美しいバンドアンサンブル

この曲の魅力の中心にあるのは、音のひとつひとつが丁寧に呼吸し合うアンサンブルだ。

TERUの透明感あるボーカルは、まるで朝の光をそのまま声にしたようにクリアで、一定のやわらかさを保ちながら曲全体に広がっていく。強く張り上げるのではなく、寄り添うように歌うことで、『SOUL LOVE』が持つ伸びやかで心地よい世界観に溶け込んでいく。

ギターのアルペジオやコーラスワークも軽快で、耳に残る優しい余韻を引き寄せていく。季節が巡るように自然な流れで展開していくバンドサウンドは、飽きのこない普遍性を感じさせ、「何度聴いても疲れない」という感覚を多くの人に残した


激動の1998年に生まれた、“GLAYのもうひとつの顔”

1998年はGLAYにとって特別な一年だった。エッジの効いたロックナンバー『誘惑』と、穏やかな『SOUL LOVE』を同時に送り出したことで、彼らの持つ幅広い表現力が鮮明に浮かび上がった。

ランキングでも1位と2位を独占し、バンドとしての圧倒的な人気を証明した時期でもある。その一方で、『SOUL LOVE』は勢いとは別の場所で、静かに、しかし確実に多くのリスナーの生活に溶け込んでいった。

華々しい快進撃の陰で、こうした“日常に寄り添う曲”を同時に送り出せたことも、GLAYが長く愛される理由のひとつだろう。

あの日の光景を思い出させる、普遍のあたたかさ

『SOUL LOVE』が今でも心に残り続けるのは、激しさや劇的さではなく、何気ない日の美しさを思い出させてくれるからだ。

買い物帰りの夕方の道、駅へ向かう少し肌寒い朝、窓を開けた部屋に入ってくる柔らかな風。日常のどこにでも寄り添える曲だからこそ、聴くたびに自分の思い出と結びついていく。

何十年経ってもふと流れてくると、その瞬間の自分に優しく触れてくれる。

それが、この曲が持つ静かな強さであり、春の匂いをまとった永遠の魅力なのだ。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。