1. トップ
  2. 榎木淳弥と櫻井孝宏が振り返る「呪術廻戦 『渋谷事変』」。2人が込めたこだわりと意外な見どころは?

榎木淳弥と櫻井孝宏が振り返る「呪術廻戦 『渋谷事変』」。2人が込めたこだわりと意外な見どころは?

  • 2025.11.5

「呪術廻戦」史上最大の激闘となった「渋谷事変」を特別編集版として初上映し、2026年1月スタートのTVアニメ第3期「死滅回游 前編」第1、2話をTV放送に先駆けて公開する『劇場版 呪術廻戦 「渋谷事変 特別編集版」×「死滅回游 先行上映」』(11月7日公開)。「渋谷事変」と「死滅回游」、直結するエピソードをつなげることで、興奮と衝撃をもたらす新たな物語へと誘っていく。

【写真を見る】榎木淳弥と櫻井孝宏が自身の演じるキャラクターに込めたこだわりを語る!

11月7日(金)より『劇場版 呪術廻戦「渋谷事変 特別編集編」×「死滅回游 先行上映」』が公開! [c]芥見下々/集英社・呪術廻戦製作委員会
11月7日(金)より『劇場版 呪術廻戦「渋谷事変 特別編集編」×「死滅回游 先行上映」』が公開! [c]芥見下々/集英社・呪術廻戦製作委員会

「渋谷事変」では夏油傑が偽物であることが判明。親友だった五条はそれを見破るも、夏油に成り替わり生きていた別人である偽の夏油により獄門疆に封印されてしまう物語が展開。夏油の体を乗っ取った誰かの真の目的とは…。主人公の虎杖悠仁は「渋谷事変」で後ろ盾である五条悟を封印されたことで、死刑執行猶予が取り消され、「死滅回游 前編」では処刑人に任命された乙骨憂太に命を狙われることに。同じ師を持つ虎杖と乙骨の激突にも注目だ。

本作で物語の大きな鍵を握る虎杖悠仁役の榎木淳弥と夏油傑役の櫻井孝宏にいろいろな事件が起きる「渋谷事変」での印象的な出来事や、様々な変化の表現が求められる虎杖、夏油を演じるうえでのこだわり、さらにお互いが演じるキャラクターの好きなシーンや表現を教えてもらった。

「自分のシーンじゃないところのほうが客観的に観ることができて、印象に残っていたりします」(榎木)

――「渋谷事変」では五条悟の封印、伏黒甚爾の復活、両面宿儺vs魔虚羅の対決、七海建人の最期、偽夏油の正体に関するヒントが判明するなど、いろいろな大事件が起きますが、印象深い事件はありますか?

榎木「七海(建人)が死んでしまうところです。七海はあまり死にそうにないキャラだと思っていたので、まさかここで…という衝撃というか。死に方も結構ボロボロになって塵にされるような感じで。体すら残さない容赦のなさみたいなものが印象に残っています」

――虎杖は七海からメッセージも託されているので、余計に強く印象に残っているのではないでしょうか。

榎木「そうですね。なぜあのひと言を言ったのだろう、みたいなことは考えました。あの言葉の前には葛藤もあったようだけど、結局は言うことを選んだ、というところからの『彼になにを与えたんだろう』というセリフもすごく印象的でした」

――偽夏油の頭をパカっとするシーンは、TVアニメ放送時もかなり話題になりました。

櫻井「僕自身はあのシーンにはそこまで…だったりするのですが、話題にしていただけるのはやっぱりうれしいです」

榎木「自分のシーンじゃないところのほうが客観的に観ることができて、印象に残っていたりしますよね」

【写真を見る】榎木淳弥と櫻井孝宏が自身の演じるキャラクターに込めたこだわりを語る! 撮影/興梠真穂
【写真を見る】榎木淳弥と櫻井孝宏が自身の演じるキャラクターに込めたこだわりを語る! 撮影/興梠真穂

櫻井「そうだよね。だから七海のシーンは確かにインパクトあったし、釘崎(野薔薇)とかもそう。あとは漏瑚!漏瑚が悲しく去っていくのがすごく印象的で、真人の最後にも同じ悲哀を感じました。呪霊は恨みとか怒りが言動力だと思っていたけど、根底に悲しみがあるんだなと」

榎木「真人の怯えも印象的でしたよね」

櫻井「そうだね。夏油はそれをニタニタ…ねぇ(笑)」

榎木「ニタニタしながら『助けてあげようか?』って。あれは、助ける気のない人の言い方です(笑)」

――後ろからスッと現れていましたよね?

櫻井「お待たせしました、みたいな感じで(笑)」

榎木「助けないくせに(笑)」

「映像に任せつつ、罠っぽい分岐点を仕掛ける」(櫻井)

2人が語る、自身が演じるキャラクターに込めたこだわり 撮影/興梠真穂
2人が語る、自身が演じるキャラクターに込めたこだわり 撮影/興梠真穂

――虎杖は成長という面で変化もあれば、「渋谷事変」の終盤でも垣間見えていましたが、新章に入ると印象が変わります。夏油は偽夏油との違いという意味での変化もあります。虎杖、夏油、それぞれの“変化”の演じ方についてお聞かせください。意識的なスイッチのようなものはあるのでしょうか。

榎木「東堂(葵)が助けに来てきてくれるあたりは、いままでは気づいていなかった自分の行動理由に気づいてしまって、ちょっと自己嫌悪に陥っているような、心境に変化があったところ。なので、意識的にという感じではないですが、虎杖はそこからなにか変わったんじゃないかなと思いながら演じていました」

櫻井「僕はケースバイケースでやっているかもしれません。たとえば、五条封印の一連の企みの中で本人と相対した時に、彼に引っ掛かりを残せるようわかりやすく違和感を作りました。偽夏油が夏油傑の感覚や記憶が全部わかると発言していて、それって要するに完コピもできるということじゃないですか。だけど、私の演技のアプローチとしてはそうせず、夏油っぽいけれど?みたいな曖昧な表現にしたいと思ってやっていましたね。芝居を変えるのではなくカラオケで半音下げるような音をいじる方法と言いますか。そうすることで、観ている側が『なにか違う』と思ってくれたんじゃないかなと」

――そのとおりになっています、これはどっち?みたいに。

櫻井「なので、僕が夏油と偽夏油の表現を変えたというよりも、映像に任せつつ、罠っぽい分岐点を仕掛ける狙いで、その都度ニュアンスをちょこちょこ変えたりはしていました。どこをどう調整したのかもう覚えてませんが、ニュアンスとしてはそんな感じです」

お互いのキャラクターについても語ってもらった 撮影/興梠真穂
お互いのキャラクターについても語ってもらった 撮影/興梠真穂

「夏油に感情が乗っていると感じたのがすごく意外」(榎木)

――劇場版は見どころがギュッと詰まっていますが、お互いが演じるキャラクターの好きなシーンや表現はありますか?

榎木「『渋谷事変』で印象的だったのは、加茂憲倫の話が出た時に、なんだか夏油が嫌そうだなと感じて。基本、何事も相手にしない人だと思っていたら、意外とハッキリ拒絶していたことがすごく気になったし、自分のアイデンティティのようなものがなにかあるのかなとも思いました。感情が乗っていると感じたのがすごく意外で、ちょっと気になったところです」

――櫻井さん、そのあたりは意識的に?

榎木(櫻井の代わりに)「もちろん!(ニヤリ)」

櫻井「もちろんなの?」

榎木「もちろんです!」

櫻井「だ、そうです(笑)。確か、あのシーンは演出が入ったんじゃないかな」

榎木「そうだったんですね。結構嫌そうに聞こえて、すごく印象に残っています」

「渋谷事変」の特別編集版と、その続編で2026年1月に放送がスタートするTVアニメ第3期「死滅回游 前編」の第1、2話が描かれる [c]芥見下々/集英社・呪術廻戦製作委員会
「渋谷事変」の特別編集版と、その続編で2026年1月に放送がスタートするTVアニメ第3期「死滅回游 前編」の第1、2話が描かれる [c]芥見下々/集英社・呪術廻戦製作委員会

櫻井「後々、わかることではあるけれど、あのシチュエーションにおいて偽夏油はもっと先のことまで考えています。確信めいた発言をした脹相は偽夏油からしてみれば、『はいはい、そうですね』みたいな感じっていうのかな…」

榎木「偽夏油にとってはものすごくつまらない話なんですよね。君が誰かで僕が誰かみたいなことって」

櫻井「なんだろうな。偽夏油ってみんなにわかるように話をしてくれないというか。ただただ、ここから大変なことになるよって、今から始まるよってメッセージを残して去って行く。え?まだ始まってなかったの?ってなるよね (笑)」

榎木「もう、だいぶ始まっているけれど?という感じですよね」

櫻井「そういう情報格差や目線の違いがあって、会話になっているんだか、なっていないんだかわからないシチュエーションなので、演出を入れて整えたんじゃないかなって思ってます」

榎木「なるほど、そうだったんですね…」

「虎杖悠仁は健やかなクレイジー」(櫻井)

夏油の制服の着こなし方にも楽しみが詰まっている! 撮影/興梠真穂
夏油の制服の着こなし方にも楽しみが詰まっている! 撮影/興梠真穂

――櫻井さんから見た虎杖の好きなシーンもお聞かせください。

櫻井「虎杖悠仁ってクレイジーじゃないですか」

榎木「ちょっとネジが外れている感じはありますよね」

櫻井「健やかなクレイジーという不思議な内訳。そのバランスが成立することを体現しているキャラクターで、確かな答えを手繰り寄せてちゃんと必然性を持って生きているんだけど、その出どころがクレイジーなんですよ(笑)」

榎木「あー、わかります!」

櫻井「五条とは種類の違うクレイジーですね。脹相との戦いでのめくるめく優勢、劣勢が変わるなか、勝負をかける瞬間の虎杖がヤバくて」

榎木「ヤバい感じ、確かにありました」

櫻井「考え方やロジックが反則すぎておもしろい。そして、そこに理解不能の怖さがある。主人公だし、ヒーローっぽい立ち位置のキャラクターだけど、なんかそうじゃないんだよね」

榎木「そうですね。戦うのは世界平和のためとかではないですし」

櫻井「野良の怖さというのか、野蛮な感じ?」

榎木「そうかもしれないです」

櫻井「それが脹相との戦いによく現れていましたね」

七海(建人)が死んでしまうシーンが印象的だと言う榎木と、真人の最後のシーンに悲哀を感じたと話す櫻井 撮影/興梠真穂
七海(建人)が死んでしまうシーンが印象的だと言う榎木と、真人の最後のシーンに悲哀を感じたと話す櫻井 撮影/興梠真穂

「釘崎の登場回でみんなで帰るところは、数少ない日常の平和なシーンでとても印象に残っています」(榎木)

――虎杖は現役の高専生、夏油も元高専生としての姿が「懐玉・玉折」で描かれました。これまでに登場した「高専(時代)シーン」でのお2人のお気に入りをお聞かせください。

榎木「実は学校でのシーンって本当に序盤くらいで。そのなかでも釘崎の登場回で呪霊を倒してみんなで帰るところは、数少ない日常の平和なシーンでとても印象に残っています」

櫻井「僕は『懐玉・玉折』が好きで。呪術高専という学校があるという前提が、まずおもしろい。呪術を学ぶための専門学校があって、そこで学生生活を送っている。個々人の理由や事情はいろいろあるけれど、それだけで青春だなと感じて。すてきな場所だし、いいものとして高専の存在を捉えていました」

「死滅回游」ではついに、特級術師・乙骨憂太が参戦 [c]芥見下々/集英社・呪術廻戦製作委員会
「死滅回游」ではついに、特級術師・乙骨憂太が参戦 [c]芥見下々/集英社・呪術廻戦製作委員会

――夏油の制服の着こなしは虎杖たちとはだいぶ違いがありますが、夏油の着こなしはいかがでしょうか?

榎木「短ランにボンタン!」

櫻井「あのスタイルは『ビー・バップ・ハイスクール』のトオルを彷彿とさせます。そういう自分の記憶や経験に紐づけることができるディテールが落とし込まれているようにも感じて。もしかしたら文脈的な見方もできる作品なのかな、と思ったりもしました」

榎木「なるほど!」

櫻井「夏油を見てヤンキーだとは思わないじゃないですか」

榎木「やんちゃというか…」

櫻井「悪ガキって感じだよね。そういうくすぐりがそこかしこにあると思います。僕のようなおじさんが観ると自分の記憶に触れてくるような感覚があるというのかな」

榎木「そういう楽しみ方もできるなら、もっともっと幅広い層の方に観てもらえそうですね」

櫻井「観る人によって刺激されるところが違うのも、この作品のおもしろさかもしれません」

取材・文/タナカシノブ

元記事で読む
の記事をもっとみる