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【安藤和津さん・77歳】自分の時間を真ん中に添える生き方「シン・自立」への挑戦

  • 2025.11.2

【安藤和津さん・77歳】自分の時間を真ん中に添える生き方「シン・自立」への挑戦

母の介護を終え、“介護後うつ”や子育てがひと段落。安藤和津さんは人生の新たなステージに立っています。徐々に自分の時間を増やそうとする今。その等身大の想いを語っていただきました。

PROFILE
安藤和津さん
あんどう・かづ●1948年東京都生まれ。エッセイスト、コメンテーター。上智大学卒業後、イギリス留学を経てCNNのメインキャスターに。79年に俳優の奥田瑛二さんと結婚。長女は映画監督の安藤桃子さん、次女は俳優の安藤サクラさん。現在はエッセイストやコメンテーターとして活動している。著書に『“介護後うつ”~「透明な箱」脱出までの13年間~』(光文社)など。

このままじゃいけないと思う70代後半

安藤さんが今感じているのは、「このまんまじゃいけない」という危機感だった。自身の仕事をしながら、介護、子育て、夫のサポートと、献身的に家族を支えてきた安藤さんが、ついに声を上げたのだ。

「今ちょうど自分の中で、このままじゃいけないって思っているところなんですよね」

きっかけは昨年起きた夫との喧嘩だった。「私はあなたのお母さんじゃない」と手が真っ赤になるほどテーブルを叩いて怒った結果、3日後に人生で初めて不整脈を起こしてしまった。

「怒りすぎて。ワナワナと体が震えるぐらい腹が立って」

この出来事が、安藤さんの考えを変える転換点となった。

昭和気質の夫との静かな攻防

安藤さんいわく、奥田さんは孫の面倒をよく見てくれる理想的なじいじだが、夫としては「典型的な昭和気質」という。食事の支度をしていると自分はビールを飲んで次のつまみが出てくるのを待つのが日常。唯一の進歩は、孫に「じいじはどうしてお皿を片づけないの?」と言われて以来、皿を下げるようになったことだ。

「お皿洗いもしてくれることが増えたのですが、夫の洗い方って職人肌というか、そこまで丁寧にしなくてもいいのになっていう洗い方で。アートのように仕上げるからとっても時間がかかるのよね(笑)」

安藤さんは今、自立した老夫婦でいたいという想いから「握られていた10本の指を小指から少しずつ離して、生活力を上げてもらおう」と目論んでいるところだ。

洗濯物を運んでいる時に夫の靴下が落ちても、今までのように自分で拾わず「あなたの靴下だからあなたが持ってきて」と言うようにしている。

健康維持が最優先の課題

70代後半を迎えた安藤さんにとって、何より大切なのは健康だ。特に体重管理には気を配っている。

「母の介護を通して、絶対体重増やしてはいけないと実感しました。自分も辛いし、介護する人もすごく体重で大変になる」

コロナ禍で増えてしまった体重を、昨年12月から6キロ減量した。久々に袖を通した喪服がきつかったことがきっかけだった。

毎朝の入浴時間は健康チェックの時間でもある。15分間の風呂で足首回し、足指のグーパー、関節の動きの確認、正座での膝の状態チェックなど、細かな体操を欠かさない。

「お風呂の中で正座をすると膝の曲がり方で健康状態が分かるようになりました」

1日1個の楽しいことを見つける

安藤さんは1日1個楽しいことをすることを心がけている。

「1日1日がラストデー。ひとつでも個楽しいこと積み上げようと思って」

それは普段食べないヒレカツ丼を食べることだったり、隙間時間に映画を見に行くことだったり、とても些細なことだ。しかし、そんな小さなご褒美が毎日を豊かにしている。

陶芸教室、シャンソンレッスンに続いてヒップホップダンスも習い始めたいとか。「筋肉は70過ぎてもつく」という信念のもと、体を動かすことを大切にしている。

新しい友人関係と社会参加

若い友達との交流も大切にしている安藤さん。50代の麻雀仲間もいる。

「私の母は仲のよかった友だちに先立たれて、一緒に遊びに行く人がいなくなってしまって」

それも母の老化を早めた原因のひとつだったかもしれないと振り返る。

好奇心を失わず、外に出て新しい人とのつながりを作ることの大切さ。それは母の経験から学んだ教訓だった。

男性の家庭内自立もカギに

安藤さんは、女性の自立には男性の家庭内自立も不可欠だと考えている。

「男性が家庭内自立をしていないから女性がなかなか人としての自立がしにくいっていうことが根底にあるんじゃないかなと思うんです」

学校教育でも、掃除機のかけ方や洗い物の仕方、服の畳み方など、生活力を身につける教育の必要性を強く感じている。さらには「女性の扱い方まで教えてほしい」とユーモアを交えて語ってくれた。

「自立」は家族と距離をおくことではない。家族を大切にしながらも、自分の人生を取り戻す静かで着実な挑戦なのだ。

撮影/中村彰男
スタイリング/松田綾子(オフィス・ドゥーエ)
ヘア&メイク/高瀬央子
取材・文/志賀佳織

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