「私、男を見る目あるんです」と豪語した同僚が結婚するも、1ヶ月で離婚、実は旦那の正体は…【短編小説】

「私、男を見る目あるんです」それが、私の職場の同僚の口癖でした。

ランチの時も、給湯室での雑談中も、彼女はいつも自信満々に恋愛論を語っていました。

「あそこの部署の新人、ダメね。男運なさそう」「あなたは堅実だけど、もう少し攻めないといい男は逃げちゃうわよ」

正直、余計なお世話だな、と思いながらも、私はいつも適当に聞き流していました。

そんな同僚が、ある日、社内中に響き渡るような大きな声で報告してきたんです。

「私、結婚します！お相手はIT企業の役員。やっぱり私、見る目あるでしょ？妥協しなくて本当によかった！」

見せてもらった写真は、確かに爽やかで、いかにも「デキる男」といった雰囲気の男性。誰もが羨むような、まさに「完璧な旦那様」でした。

結婚式も、それはもう盛大なものでした。都内でも有名な高級ホテルで、キラキラしたドレスに身を包んだ同僚。

「夫と出会えたのは、私の『見る目』が正しかったから。皆さんもしっかり目利きしないとダメですよ！」

スピーチでまでそう豪語する姿に、私は（少し呆れつつも）祝福の拍手を送りました。

ただ、私はその旦那様に、ほんの少しだけ違和感を覚えていたんです。笑顔が完璧すぎて、まるで貼り付けた仮面のように見えたから。

でも、幸せの絶頂にいる彼女に水を差すこともできず、その違和感は心の奥にしまい込みました。

ところが、あんなに幸せそうだった結婚式から、わずか1ヶ月後のことです。月曜日の朝、同僚が会社に来ませんでした。無断欠勤なんて一度もなかった彼女が、です。

「どうしたんだろう」と皆で心配していると、翌日、同僚は青白い顔で出社してきました。

目の下にはくっきりとしたクマ。あんなに自信に満ち溢れていたオーラは、見る影もありません。

「大丈夫…？」私が恐る恐る声をかけると、同僚は消え入りそうな声でこう言ったんです。

「……騙されたの……」

「え！？」

オフィスが一瞬で静まり返りました。休憩室で聞いた話は、私たちの想像を遥かに超えるものでした。

同僚は、ボロボロと泣きながら告白したのです。

「彼…いなくなっちゃったの。私のお金も、ほとんど全部持って…気づいたら離婚届も出されてて」

そう。あの完璧に見えた旦那様の正体は…。なんと、結婚詐欺師だったんです。

IT企業の役員という華麗な経歴も、住んでいると言っていた高級マンションも、すべてが真っ赤な嘘。同僚の「男を見る目」は、プロの詐欺師が仕掛けた巧妙な罠には、全く通用しませんでした。

「あんなに、あんなに優しくて、完璧な人だったのに…！」

泣き崩れる同僚。「見る目がある」と豪語し、将来のためにと貯めていた貯金は、その「完璧な男」によって、ほぼ全て持ち去られてしまったそうです。

あれだけ自信満々だった同僚の変わり果てた姿に、私たちはかける言葉も見つかりませんでした。

「男を見る目がある」という過剰な自信が、まさか詐欺師にとって一番のカモだとは…。皮肉なものですね。

本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。

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