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25年前、アコギと声だけで始まる“強烈イントロ” 沈黙すら“音”に変えた5人組

  • 2025.11.27
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※Google Geminiにて作成(イメージ)

「25年前の冬、アコギのストロークが夜明けの光のように響いていた。」

2000年。新しい世紀を前に、日本の街にはまだ少しだけ不安と希望が入り混じっていた。そんな時代の空気をまっすぐに切り取った一曲がある。

WINO『太陽は夜も輝く』(作詞:久永直行・作曲:吉村潤、外川慎一郎)――2000年12月27日発売

フジテレビ系アニメ『HUNTER×HUNTER』のオープニングテーマとして流れ、静かな導入から一気に駆け抜けるその高揚感が、当時のリスナーの胸に深く刻まれた。

アコギと声だけで始まる、静かな“出発”

イントロで響くのは、アコースティックギターのストロークとボーカル。音数は少ないのに、どこか切なくて温かい。その“静かな始まり”が、曲全体の物語を予感させていた。

やがてドラムとエレキギターが加わり、リズムが走り出す。WINO特有の透明なスピード感が、聴く者の心を掴んで離さない。この曲は、ただ勢いのあるロックではなく、“夜を越えて進む力”を感じさせるサウンドだった。

“ロックなのに透明”というWINOの個性

WINOは、1995年代に結成された5人組ロックバンド。彼らの音楽は、UKロックやブリットポップの影響を受けつつも、日本的な叙情と繊細な響きを併せ持つ独自の世界を築いていた。

ボーカル・吉村潤の声は、どこか冷たく、それでいて温かい。芯の通ったハイトーンと淡い息づかいが、アコースティックギターの響きに溶け込み、曲全体を光の粒のように包み込む。

そこに久永と外川、二人のギターが織りなすコードワークが加わると、音は立体的に広がり、まるで空間そのものが鳴っているかのようだった。

彼らは決して派手ではない。だが、沈黙すらも音楽に変えるバンドだった。余白を恐れず、鳴らす音すべてに“意味”を持たせる。

そのストイックさがWINOを、同時代のロックバンドとは一線を画す存在にした。アコギのストロークとエレキのアルペジオが混ざり合うサウンドスケープ。それはまるで、冷たい風の中に灯る炎のように、静かで温かいロックだった。

彼らの音には、爆発よりも共鳴があった。激情ではなく、共感。聴く人の中に静かに届き、心の奥で鳴り続ける音――それがWINOのロックだった。

2000年の街に灯った“静かな光”

この曲が生まれた2000年は、J-POPが加速的に多様化していた時期。デジタルサウンドが主流になる中で、WINOのサウンドはどこか“人の温度”を感じさせた。

派手さよりも誠実さ。押し出すよりも寄り添う。そんな“静かな強さ”が、新世紀を迎える日本の空気にぴったり重なっていた。

25年経った今も、『太陽は夜も輝く』を聴くと、心の奥が少しだけ温かくなる。それは懐かしさではなく、あの頃の“前を向く力”が蘇るからだ。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。