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30年前、サントリーCMから流れた大人のユーモア “ジン ジン”フレーズが流行したワケ

  • 2025.11.27

「30年前の冬、あなたはどんな“メリークリスマス”を口ずさんでいた?」

1995年の冬。かつての派手な年末から、徐々に街の灯りにも落ち着いたムードが漂い始めていた。それでも、ショーウィンドウにはきらめくツリー、ラジオからは陽気なウインターソング。日本中が少しだけ浮かれていた、そんな季節だった。その年、ひときわ印象的に響いたのがこの一曲だ。

森高千里『ジン ジン ジングルベル』(作詞・作曲:森高千里)――1995年12月1日発売

森高本人が出演したサントリー『アイス・ジン』のCMソングとして誕生したこの曲は、放送されるやいなや話題に。CMで見せた空から舞い降りてくる無数の森高の顔のように、街のあちこちでこのフレーズが流れた。

ジャジーでおしゃれ、それでいてクセになる“冬の口ずさみ”

CMのコミカルな映像の印象とは少し違い、楽曲そのものは実にジャジーで洒脱。軽やかなスウィングビートに乗せて、都会の冬をおしゃれに演出する。冒頭から繰り返される「ジン ジン ジングルベル メリークリスマス」のフレーズは、キャッチーで中毒性抜群。当時はまるで“流行語”のように、誰もが口ずさんでいた。

シングルはクォーターミリオン(25万枚)達成するヒットを記録。カフェでも、商店街でも、テレビ番組でも。気づけばどこからともなく「ジン ジン ジングルベル」が聴こえてきた

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1996年、森高千里コンサートより(C)SANKEI

大人の遊び心を感じさせた冬のスタイル

森高が作詞・作曲を手がけたこの曲には、広告と音楽の垣根を軽やかに越えるセンスがあった。CMでは“ジン”というお酒を象徴するように、透明感と少しの大人のユーモアを漂わせていたが、

曲そのものは浮かれすぎず、むしろスタイリッシュ。きらびやかなだけでなく、“おしゃれな余白”を感じさせるアレンジが光っていた。カップリングには、CMの「GIN」をそのまま歌い込んだ『GIN GIN ジングルベル』も収録された。

ここにも森高らしい遊び心が溢れている。プロモーションでありながら、きちんと“音楽として成立している”――それが彼女の強さだった。

“森高ポップ”が映した、90年代の自由な気分

流行のダンスチューンでもなく、かといって静かなバラードでもない。彼女が描いたのは、「聴いて楽しく、眺めても美しい」音楽。冬の夜を明るく照らすような、軽やかなリズムと透明感のある声。そのサウンドは、聴くたびに胸の奥をふわりと温めてくれる。

発売から30年が経った今、街でふとこのメロディを耳にすると、イルミネーションがきらめく冬の風景が蘇る。氷のグラスの中でカランと鳴る音、笑い声の響くパーティの夜、

そして――ジン ジン ジングルベル メリークリスマス

派手ではないけれど、誰もが少しだけ幸せになれた。そんな時代の空気を、そのまま閉じ込めたような一曲。おしゃれで、自由で、ちょっと浮かれた冬。それこそが、森高千里が音楽で描いた1995年のクリスマスの魔法だったのだ。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。